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難解さと青春 アニメ『Sonny Boy』 感想

今日はアニメ『Sonny boys』について語りたい。このアニメのジャンルとしては、「青春SFアニメ」なるのだろうか…
正直、一言で表現するのは難しい。というか、ぶっちゃけると、よくわからん難解なアニメだ。でも、「青春」というワードはつくかなと思う。

あらすじとしては、下記のようになる。

長い長い夏休みも半ばを過ぎた8月16日。学校に集まっていた中学3年生・長良〈ながら〉たちは突然、思いも寄らない事態に巻き込まれていた。
長良自身はもちろんのこと、36人のクラスメイトとともに、学校が異次元に漂流してしまったのだ。しかも彼らは、漂流と同時にさまざまな《能力》を入手。

果たして長良たちはこの世界を攻略し、無事に元の世界に帰ることができるのだろうか……?

公式サイトより一部抜粋

設定としてはSFだ。異次元、異能力。アニメらしい設定といえる。
ただ、悲惨な殺し合いがはじまったり、謎を解き明かすべく探求する、といったドシリアスな展開にはならない。それがこの作品の難しいところだ。

一言で表現するなら、常に「青春感」というのがつきまとう。本格SFと青春物語の狭間を常にウロウロしているような感じだ。というか、この作品の雰囲気を感じてもらうには、PVを見てもらうのが一番かもしれない。


難解ではある

正直、話の本筋を自分は理解しきったとは思えない。1周しただけで設定の全部を理解するのはかなり難しいと思う。多次元世界とか、ただでさえややこしいのに、説明が極端に少ない。

おまけに、すごく何かのメタファーっぽい話もある。突然見えない透明の猿たちが野球する(とあるキャラが語っている)話が挿入されたり。何らかの比喩なんだろうけども、ついぞピンと来ないまま話が終わることも多々ある。

でも、自分にはピンと来ていないだけで、誰かには刺さっているかもしれないなと思う。そんな話が多い。基本的には、1話完結で、色んな異次元へ旅していくので、ピンと来ない話とか、難しい話だなと思っても、つぎの話は全然違うストーリーになる。だから、ずっとつまらないということはない。


難しいのに、不思議と見続けてしまう魅力がこの作品にはある。アニメとしての映像が美しいとか、音楽がいいとか、単純に脱出できるかどうかの結末が気になるとか、そうした諸要素も魅力ではある。でも、この作品の根幹の魅力ではないとも思う。

「難解さ」がこの作品の魅力なのかもしれないなと思った。

常識が通じない異次元の中で、彼らはさまざまな行動を取る。その中には合理的なものもあれば、非合理的なものもある。共感できるエピソードもあれば、「?」で終わる話もある。

登場キャラクターが、異次元に迷い込んだ状況のなかで、自分なりに考えて導き出した回答。それに対して、この作品はなにも示してくれない。これは悪い行動だ、良い行動だ。主人公は正義だ、あいつは悪だ。そうしたわかりやすさはこの作品にはない。

ただ、そこにあるのは、キャラたちが一生懸命その世界で生きようとした過程と結果だけ。そこにどう感じるかは自分次第という、この突き放した感じと、だからこその先が読めないブラックボックス感に、ワクワクしてしまう。


これが本格SF作品なら、これは大きなマイナスポイントになる。なぜなら、設定やそれを基にした一見すると奇想天外なれども実は合理的な展開こそ、SFの魅力であるからだ。そして、そこには納得感というのは必ず必要になってくる。

でも、この作品にとって異次元などの描写は、あくまで舞台装置にしかすぎない。中学3年生という、多感な時期の少年少女たちによるドラマが主軸だ。だから、細かいことに納得が以下なくても物語を進めることができる。


結局、青春ってそんなものかも

この作品の登場人物たちの年齢である、15歳。中学3年生。青春だとか、思春期とか、日本語としてはこの時期を表現することばは存在する。でも、それって結局なんなのだろうか。このアニメを見て思った。すごく「難解」な時期だなって。

いろんな選択があり、いろんなことを考える。けども、時間は容赦なく進んでいく。このアニメみたいに、説明不足で容赦なく。わけがわからないながらも、前に進んでいかなければならない。

理路整然とした、合理的な大人の世界じゃない彼ら、彼女らの描写として、こういうのもアリかなと思った。

冒頭に書いた通り、自分はこの作品を100%理解したとは思っていない。普段、こういう分かりづらいアニメは好きじゃない。だけど、この作品はふしぎと嫌いになれない。それは、この作品が1種のエンタメじゃない「青春」を描いているからで、それに納得しているからなのかもしれない。


どこかの誰かに刺さる作品

難しい作品だとハードルをあげてしまったが、安心して見てほしい。製作はあのマッドハウスだ。

分かりづらく、ポップじゃないこの作風を、しっかりと見れるレベルになっているのは、アニメとしてのクオリティが高いからだと思う。作画がよいとか、そういう表層的な話ではなく。アニメ全体としてのクオリティが非常に高い。

そして、それを支える音楽と声優。すごく難しい世界観を、壊さずに完ぺきに演出しきった。とくに、悠木碧は、今作品でかなり好きになった。

瑞穂〈みずほ〉 CV:悠木碧

だから、気負わずに見てみるとよい。もしかしたら何周もしたくなるくらいハマるかもしれない。

かくいう自分も最終話はたまに見返している。最後の長い長いアコスティックギターのイントロと主題歌を聞きに何度も再生した。すごくいい最終話だ。


万人受けをする作品ではないかもしれない。でも、誰かに刺さるだけのパワーを持った作品だ。こんなチャレンジングで魅力的なアニメ作品はなかなかない。一見の価値はある作品なのでぜひ。

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