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最高の映画のOP

人生で一番の映画を決めてくれ、と言われると難しい。即答はできない。ただ、今まで一番OPがかっこよかった映画は何か、と聞かれれば、即答できる。『夕陽のガンマン』だ。

始めて見たとき、衝撃を受けた。始まってすぐにこれである。なにもない荒野に銃声が響き渡る。倒れる人。そして流れるテーマ曲と銃声。情報量は限りなくゼロに近い。大胆で、でもだからこそカッコいい。

見返した後ならわかる。これほどまでにこの映画、いや西部劇を表したOPはないと。


OPの定義をもう少し広く見て、物語が動き始めるイントロとして捉えてもう少し後のシーンまで見てみよう。それでも、やっぱりこの映画が一番だ。

この映画は、クリント・イーストウッド演じる早打ちガンマンと、リー・ヴァン・クリーフが演じるスナイパー、この2人の賞金稼ぎの物語である。まず、この映画は2人の紹介として、どのように賞金稼ぎを行っているのか、紹介するシーンに入る。


まずは、凄腕のスナイパーの紹介だ。

改めて感嘆する。この5分あまりのシーンで、彼はほとんどセリフを喋っていない。やったことも、手配書をもらい、酒場を訪ね、賞金首を一人討ち取っている。それだけ。しかし、このキャラがどういうキャラかわかる。その「スゴみ」を感じ取れる。

まず、彼が酒場に入るシーン。一瞬静まり返る。軽やかな音楽が流れていた酒場が一瞬静まり返る。

もうここで、グッと視聴者はこの映画に惹きつけられる。ここから、最後まで、緊張感は続く。この後、賞金首の元へ彼は行くのだが、その追い込み方も素晴らしい。どういう「キャラ」なのかが一目瞭然だ。

彼は、急いで逃げる賞金首を、決して走って追いかけたりしない。ゆっくりと、落ち着いて歩いて行動する。そして、冷静にライフルを取り出し、馬で逃げ去ろうとする相手を一撃で撃ち抜く。

落馬した相手は拳銃を抜き、撃ちながら近づいてくる。最初は明らかに拳銃の射程外だった。

弾は彼のはるか前方で着弾している

相手は近づきながら何度も打ってくる。徐々に着弾する位置が彼の元に近づく。しかし、この黒服の男は、全く焦りはしない。落ち着いた様子でライフルをしまい、拳銃を取り出し、弾を込める。そこには恐怖もなく、淡々と仕事をこなす職人のような落ち着きがある。

ついに男の足元に弾が着弾し、いよいよ射程圏内に入ったとき。

足元で砂埃が舞う

弾を込め終わった拳銃をサッと構え、相手の額を一撃で撃ち抜く。

淡々と仕事をこなし終えた後は、何事もなかったかのように身支度をする。本当に何も語らない。でも、このキャラがどういうやつか。どんな魅力がある男なのか。十分視聴者に伝わる。


一方、そのライバルとなる、クリント・イーストウッド演じるもう一人の賞金稼ぎ。彼の紹介シーンが始まる。酒場に入るイーストウッド。もう雨に濡れるその立ち姿からカッコいい。

こんなカッコいいタバコの吸い方があるだろうか

そして、保安官に賞金首の居場所を尋ねる。指示された男の元に行くと、彼らはポーカーを興じている。そこに黙って横に立ち、スッとカードを取る。そして黙ってポーカーを始める。この間、イーストウッドも、敵も、誰も何も喋らない。

喋らないからこその、緊張感が凄まじい。何がきっかけで打ち合いが始まるかわからないこの西部の時代。迂闊に言葉は出せない。そんなヒリツキを感じるシーンだ。

ポーカーを興じた後、イーストウッドは問われる。
「何を賭けたんだ?」と。
「お前の命さ」と彼は答える。

その後、銃を抜こうとした相手を抑え込み、パンチの数発で相手をノックアウト。大人しくさせたところに、外から仲間がやってくる。

このイーストウッドの表情…

3人に銃を突きつけられたこの大ピンチを、彼は一瞬の早打ちで即座に終わらせる。これも堪らんシーンだ。

その後の保安官とのやり取りのシーンも含めて、彼のスタイル、キャラがよく分かるシーンだ。冷酷に仕事をこなしていた狙撃手と、ジョークを交わす早打ちのガンマン。


2人の主役を、わずか10分と少しのシーンで、見事に描写している。銃撃シーンと共に。なんて素晴らしい導入だろうか。

多くの映画を見てきたが、この映画を超える導入は見たことがない。自信を持って言える。この映画こそが最高のオープンニングだと。
『夕陽のガンマン』、途中何個も極上のシーンがある、傑作西部劇だ。ぜひ、もっと多くの人に見てほしい。


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