オリグチ

積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多…

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積ん読常習者。つまみ食いだけして読み散らかした、人文社会科学、一般向け自然科学の本が多数。 新刊の読前感想、購入書の読後感想を投稿中。

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ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

ロシアがウクライナに侵攻して、はや2年以上が経過した。 ロシアとウクライナとの因縁は、別に今日昨日のプーチン時代に端を発するものではない。 根深い紆余曲折を数百年単位で積み上げて来た歴史が地下に横たわっている。 プーチン大統領がウクライナ侵攻の半年前、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表したというのも、(その論文の内容の妥当性はともかく)ロシアとウクライナとの歴史的な因縁を無視できないことを示していると言えるだろう。 1 ロシア−ウクライナ問題

    • ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

      17世紀初頭から300年間ロシアに君臨し、革命の最中に一族が惨殺されたロマノフ朝。 その皇室の歴史を描いた、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリの『ロマノフ朝史1613-1918』上下巻(白水社 2021年:原著2016年刊)を読んだ。 1 『ロマノフ朝史1613-1918』の全体的な印象宮廷の群像劇 『ロマノフ朝史』は、ロシア皇帝とその一族(愛人を含む)、そして寵臣たちの言動や人間関係を中心に宮廷を描いた群像劇となっている。 そのため、国家や社会といったロシア全体に関わ

      • 『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

        これぞ美学の入門書の決定版! これ以上やさしく書くことはむずかしいのではないでしょうか。 井奥陽子『近代美学入門』(ちくま新書2023)は、誇張なくそう思えるような良書でした。 新書大賞にランクインしているのは伊達ではないようです。 「芸術に興味はあるけど、美術について理論的だったり抽象的だったりする話となるとちょっと…」 そんな方にこそ、あきらめる前に手に取ってほしいと思える入門書。 また、近代美学についてある程度知っている方にもおすすめできると思います。 とても整理さ

        • マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

          マキァヴェッリといえば『君主論』、『君主論』といえばマキァヴェッリ。 どちらか一方しか知らない人など想像できないほどの、マキァヴェッリの代表作です。 邦訳について各種邦訳の特徴 〈1〉角川ソフィア文庫版は、多賀善彦の名義で戦時中に出版された『マキアヴェルリ選集』収録の邦訳を改訂したもの。 筑摩書房『マキァヴェッリ全集』月報によれば、フランス語訳からの重訳とのこと。 訳文および参照した原典の校訂本も古いのが難点。 ただし、マキァヴェッリの『ディスコルシ』以外の著述にも触れた

        ロシア−ウクライナ問題の起源〜【読書感想】『「ロシア」は、いかにして生まれたか』/『ロシアの源流』

        • ロシア=専制政治の歴史〜【読書感想】『ロマノフ朝史1613-1918』 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ[著]

        • 『近代美学入門』 井奥陽子[著] ちくま新書【読書感想】

        • マキァヴェッリ『君主論』〜【マキァヴェッリを読む】Part 10

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          『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

          『神曲』の作者、西洋文学最高峰の詩人ダンテ。 しかしその生涯は、詩人というより政治指導者としての波乱に富む人生でした。 そんなダンテについて、中世史研究者が著したダンテの評伝が翻訳出版されました。 『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著](亜紀書房 2024年)です。 ダンテの評伝というと、 「まずダンテが生きた13世紀後半から14世紀初頭にかけてのイタリアやフィレンツェの政治情勢を記述、そこに『神曲』での著名人物評やダンテの個人的エピソードを散りばめていく」

          『ダンテ その生涯』アレッサンドロ・バルベーロ[著] 【読書感想】

          マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

          歴史上の人物を題材にした、マキァヴェッリのマイナー作品を今回は取り上げます。 難しいことを考えずに読めて、物語としても面白い作品です。 惜しむらくは、全集にしか邦訳がないことです。 『カストルッチョ・カストラカーニ伝』作品について マキァヴェッリが『フィレンツェ史』を執筆する機縁となったのが、『カストルッチョ・カストラカーニ伝』です。 ルッカの豪族ミケーレ・グイニージが破産したため、フィレンツェの債権者達は彼への債権を取り立てようとしました。 その債権取り立ての依頼を受け

          マキァヴェッリ『カストルッチョ・カストラカーニ伝』〜【マキァヴェッリを読む】Part9

          『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

          『文明の衝突』著者の主著、新訳で登場! 100分de名著で取り上げられた『独裁体制から民主主義へ』に興味を持った方には特におすすめ! 民主主義が揺らいでいる今だからこそ読みたい、20世紀比較政治学の金字塔的著作『第三の波』です。 1970年代半ばから1990年の間に、南欧、南米、アジア、共産主義圏で民主主義体制への移行が起きました。 ジーン・シャープの『独裁体制から民主主義へ』は、これらの成功例から民主化への実践的なノウハウを引き出しています。 一方、サミュエル・ハンチント

          『第三の波 20世紀後半の民主化』 サミュエル・P・ハンティントン[著] 【読書ノート】

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その3・『フィレンツェ史』におけるマキァヴェッリの政治思想)〜【マキァヴェッリを読む】Part8

          今回は、『フィレンツェ史』のなかの理論的記述、マキァヴェッリの政治思想が表現されたものを、自分なりに分類して抜粋したものになります。 『フィレンツェ史』読書ノート(注目ポイントの引用)「政治思想」篇 支配領域の拡大と従属都市への対応についてマキァヴェッリの時代のイタリアの国家とは、まだら状の国家でした。 都市が中心となって周辺領域をまとめ、その都市たちを全領域の中核となる都市が束ねる。 各都市が独自の法や慣例にしたがっており、中核都市が自分の勢力圏を一元的に支配できるわけで

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その3・『フィレンツェ史』におけるマキァヴェッリの政治思想)〜【マキァヴェッリを読む】Part8

          『ニッポン政界語読本』単語編/会話編 【おすすめ本】

          『ニッポン政界語読本 会話編 無責任三人称から永遠の未来形まで』/『ニッポン政界語読本 単語編 ぼかし言葉から理念の骨抜き法まで』 イアン・アーシー[著]「政治家になりたい人、必修! どこで学んでいるのかわからない政治家の表現テクニックを一般公開! 与野党問わず、昨今の政治家が提供に協力してくれた豊富な例文集! パターンごとに分類して徹底解説! 各章の最後には、理解度を確認するための練習問題つき!」 こんな感じで受験参考書風に内容を紹介しても、あながち間違いではないような本

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          『筋肉坊主のアフリカ仏教化計画 そして、まともな職歴もない高卒ほぼ無職の僕が一流商社の支社長代行として危険な軍事独裁政権末期のナイジェリアに赴任した2年間の話』【おすすめ本】

          『筋肉坊主のアフリカ仏教化計画 そして、まともな職歴もない高卒ほぼ無職の僕が一流商社の支社長代行として危険な軍事独裁政権末期のナイジェリアに赴任した2年間の話』 石川コフィ[著]勘違いしないでください。 こんなタイトルですが、これはライトノベルでもなろう系小説でもありません。 現実味のない筋肉坊主なるパワーワードがあっても、これは紛れもなくノンフィクションです。 本書は、クライマックスのシーンから始まります。 顔を赤らめた仏教僧が、ナイジェリア大統領の胸ぐらを掴んで詰め寄っ

          『筋肉坊主のアフリカ仏教化計画 そして、まともな職歴もない高卒ほぼ無職の僕が一流商社の支社長代行として危険な軍事独裁政権末期のナイジェリアに赴任した2年間の話』【おすすめ本】

          『家を失う人々』/『小山さんノート』【読書感想】

          年始の能登半島地震。 避難生活を送る人々の話に感化されて、積ん読状態になっていた本を引き出してきて読む。 どちらも、家を失うことに関係する内容。 『家を失う人々 最貧困地区で生活した社会学者、1年余の記録』 マシュー・デズモンド[著] 栗木さつき[訳]ピューリッツァー賞など数々の受賞歴を誇るノンフィクション作品。 2008年から2009年の間に取材した実話をもとに構成されている。 リーマン・ショックによる世界金融危機で景気が悪化していた時期、家賃滞納により住む家から強制退去

          『家を失う人々』/『小山さんノート』【読書感想】

          『30年でこんなに変わった!47都道府県の平成と令和』【おすすめ本】

          「お茶の産出額で静岡を抜いて日本一になった鹿児島」 そんな商品説明に「ほへぇ〜」と思って手に取ったのがこの本。 『30年でこんなに変わった!47都道府県の平成と令和』内田宗治[著]実業之日本社(じっぴコンパクト新書) 1990年代、平成初期の日本各地の状況が、30年後の令和の現在どう変化しているのか。 農水産業、地元企業、交通事情などなど、さまざまなトピックを都道府県ごとに取り上げています。 知らない間に現状とズレてしまった過去のイメージがあったり、 昔からそうだと思って

          『30年でこんなに変わった!47都道府県の平成と令和』【おすすめ本】

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その2・マキァヴェッリの描くフィレンツェ像)〜【マキァヴェッリを読む】Part7

          イタリア半島の中央、トスカーナ地方の都市の一つでしかなかった都市、フィレンツェ。 わずか300年足らずの間に、かつては同格であった他のトスカーナ北部の諸都市を勢力下に置いていき、遂には、イタリアの五大勢力の一角をしめるまでに成長します。 そんな自身の祖国の歴史について、マキァヴェッリはどのように見ていたのでしょうか。 ローマ教皇庁や当時の戦争についての言及を見た前回(【マキァヴェッリを読む】Part6)に引き続いて、今回はマキァヴェッリが描いたフィレンツェの姿を見ていきたい

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その2・マキァヴェッリの描くフィレンツェ像)〜【マキァヴェッリを読む】Part7

          年末年始に読んだおすすめ本

          『ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実』にゃんこそば[著]自然環境、交通ネットワーク、出店店舗など、さまざまな要素に注目したデータを地図上に可視化して見せてくれる本。 ひとつひとつのデータを細かく分析紹介するより、多くのデータを紹介している。 そこまで専門的ではないけれど、かといってトリビアすぎるわけでもないので、気軽に読み進めることができた。 『経済学レシピ 食いしん坊経済学者がオクラを食べながら資本主義と自由を考えた』ハジュン・チャン[著]食材や料理を切り口に

          年末年始に読んだおすすめ本

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その1・イントロダクション)〜【マキァヴェッリを読む】Part6

          『フィレンツェ史』の面白さ『君主論』の次にマキァヴェッリを読むのなら… マキァヴェッリの『君主論』を読んだ人が、もし彼の書いた他のものをもう1冊読んでみたいと思ったのなら、私は『フィレンツェ史』をおすすめします。 『フィレンツェ史』は、題名のとおり、マキァヴェッリが自身の祖国フィレンツェの歴史を描いた本です。 歴史上の出来事をただ書き連ねたわけではなく、マキァヴェッリが過去の出来事を評価する理論的なコメントを入れたり、登場人物の演説を創作して挿入していたりします。 いわば

          マキァヴェッリ『フィレンツェ史』(その1・イントロダクション)〜【マキァヴェッリを読む】Part6

          マキァヴェッリの傭兵制批判を吟味する〜【マキァヴェッリを読む】Part5

          マキァヴェッリの軍事論って実際のところどうなの?徴兵市民軍って有効なの? 「傭兵に代えて、自国の者を武装させて軍を編成すべし」という民兵論は、マキァヴェッリの政治思想や政治生活を貫いている主張です。 では、マキァヴェッリの推奨する古代ローマに倣った徴兵市民軍が、もし実際に実現していたとしたら、強い軍隊ができたのか? これについては、評価はほぼ固まっているようです。 役に立たない。話にならない夢物語だと。 おまけに、実際に存在した古代ローマの軍事制度に近いかどうかすら疑問

          マキァヴェッリの傭兵制批判を吟味する〜【マキァヴェッリを読む】Part5