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夢の中で #03

気付くとグラスは空になっていた。

一気に飲んでしまったのか、ゆっくりちびちびと飲んでいたのか、記憶がすっかり抜けてしまっている。

ただ、幸福感が身体中を満たし、世界が少しだけ溶けているように見えた。

『次来たときはまた違うお酒を紹介してあげましょう。』

ニヤリと笑う店主。



ここは飲み過ぎるのも良くないと思い、チェックをお願いした。

『お代は結構です。オープン後の一組目のお客さんからはお代を頂かない方針でやってまして。』

そうか、ではお言葉に甘えて。

『ありがとうございます。またお待ちしております。』


店を出ると外はすっかり暗くなっていた。

いつもの癖でポケットに手を入れ歩いていると、右手に違和感が。

取り出してみるとそれは先程まで飲んでいたバーのショップカードだった。

表面には店名と連絡先。裏面にはこう記されていた。


人生を変える出会いと一杯を。


少々言い過ぎじゃないか、そう思ったが自然と顔は綻んでいた。

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