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文化庁メディア芸術祭_230213

天王洲アイルの深い地下から地上へ出るとき、だいたいは大雨で、ビル群の細い隙間からの突風に晒されることになる。今回も例によって傘を強く握りしめ、会期ぎりぎりの寺田倉庫B&C HALLへやってきた。

文化庁メディア芸術祭は文化庁主導のもと平成7年(1997年)から開催され、アート、エンタメ、アニメ、マンガの4部門においての優秀作品顕彰と一般向けの鑑賞の機会として25年にわたり綴られてきた。今回は25周年記念企画というタイトルをとりながら、昨年夏頃に話題にあがった通り、本芸術祭の終了にあたり、これまでの総括・成果展の意味合いが強いのだろう。

私自身アート関連の仕事が本格的にはじまったのが昨年くらいからなので、このメディア芸術祭に足を運ぶのは最初で最後になったのだが、多くのアートイベントとは違って、エンタメ、アニメ、マンガが一堂に会する様子がなんだか新鮮で、その名の通り「メディア芸術祭」という稀有な存在であることを実感した。

会場に入ってみると第1回から25回までの優秀作品たちが会場を縫うように所狭しと肩を並べていて、どれも初めての私は第1回からじっくりと見ていく。すると「ゼルダの伝説時のオカリナ」や「aibo」「クレヨンしんちゃんシリーズ」「Wii Sports」など平成の懐かしたちが次々と登場し、思わず周りの人とほっこり目を合わせてしまう。私たちが生活の中で触れ合っていたエンタメコンテンツが、話題性とか興行収入だけでなく、そのクオリティや社会的な影響がメディア芸術祭という形に公的に評価されていることに嬉しくなる。特に開催当初の97年あたりはインターネットが普及し始めた頃で、あらゆるデジタル技術への衝撃や感動はひとしおだったのでないかと思う。
そんな中に一見風変わりなアート部門の作品たちが堂々と立ち並んでいる様子はなんだか異質ではあるのだけど、こんな風にメディアエンタメの1つとしてアートが受容されてあり続けたらいいなぁと思うのである。

時代が今に近づけば、石黒浩のアンドロイド(の赤ちゃんらしい)がでてきたりと社会やテクノロジーの変化が見えるのも楽しい

2Fのフロアではメディア芸術クリエイター育成支援事業なるものを展開している。なかでもアーティストレジデンスの研究をまとめた東京工業大学の鹿又さんのプログラムが興味深く、改めてアートが社会にいかに実装できるかに自分の関心が向いていることに気づかされた。

東京工業大学 環境・社会理工工学院 融合理工学系 研究員 鹿又亘平さんのプロジェクト

メディア芸術祭や育成支援事業など、行政のナイスな面を久々に目の当たりにした気がする。メディア芸術祭自体は終了してしまうものの、これからも日本の文化芸術を育成する枠組みが官民であると良いよなぁ・・・なんてぐるぐると思いを巡らせながら会場を後にし、私はまた雨風吹き荒れる嵐の中へ出ていくのである。

▼展示作品 Exhibition
文化庁メディア芸術祭25周年記念記念展

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