_シーボン_金子写真

愛のある仕事ができないと成長できない“株式会社シーボン 代表取締役兼執行役員社長 金子靖代さん”

会社の株式上場を目指すタイミングの2000年に取締役になり、5年後には代表取締役社長に就任。2009年に株式公開を果たし、一部上場企業としては数少ない女性社長として現在活躍している金子さんに、仕事や生き方に対する思いと心構えをお聞きしました。

【金子さんプロフィール】
北海道生まれ。1984年株式会社シーボン札幌支社に美容社員として入社。その後六本木本社で美容社員の教育、ネイリスト、製品開発を経て、2000年管理本部長、同年取締役に就任。2005年12月に社長に就任。2009年にはジャスダック証券取引所(現東証JASDAQ市場)上場、2012年に東京証券取引所市場第二部、2013年に第一部に上場を果たす。

◆勉強したり新しいことにチャレンジするのが好き

記者:金子さんが今の仕事に就くようになったきっかけをお聞かせいただけますか?

金子:メイクとか人を綺麗にする仕事をしてみたいと思って、美容部員として今の会社に33年ほど前に入社しました。札幌店で勤務して1年くらいたったときに、「東京に1年くらい来ないか」と言われて、1年ならと東京に来てから、結局ずっといますね(笑)。
当時24才で「いつお嫁にいくの?」と、今だったらセクハラになってしまうようなこともよく聞かれていた時代で、東京の方が年齢的なプレッシャーも少なくて、純粋に仕事が頑張れる環境だったから、長く仕事をすることになりましたね。

記者:1年ということで東京に来て、今のように活躍されるようになったのはどうしてですか?

金子:東京に来てから、美容部員の教育などいろいろな仕事に携わり、一番長かったのが製品開発で、何の不満もなく毎日楽しく仕事していました。そして、2000年のある日、上場に携わっていた管理本部長が辞めることになって、急に明日から管理本部長をやってくれと言われたんです。

記者:18年前に急にですか?

金子:はい。管理部門って、人事、総務、経理、システム等を統括する仕事で、その時は管理本部長と言われても何をするのかまったくわからなかったです。初めの1年はいろいろ勉強して本当に大変でした。上場を目指して営業部門の改革にも携わり、2005年に社長に就任し、2009年に無事JASDAQに上場を果たしました。

記者:すごいですね!もちろん仕事ができたからだとは思いますが、抜擢されたのはどうしてですか?

金子:普通は経験のない人を抜擢しないでしょう?経理的な知識もまったくないし、管理部門なんて専門的な知識が必要なところで。抜擢した人が勇気あったと思いますね。

記者:製品開発での仕事ぶりを見て、この人に任せたらと白羽の矢を立てたんでしょうか?

金子:どうでしょう。私は4代目で初めての女性社長です。化粧品会社だからこそ社長は女性の方がいいと思って覚悟を決めて育ててくれたんだと思います。女性社員の経営的な感覚を育てようという会社の意思があった中での自分だと思います。

記者:今は女性の役員が多いですよね?

金子:女性管理職の割合は85%以上を超えていて、女性役員比率も50%と、他社と比較して多いので評価していただいていますね。

◆支える側の不公平感をなくす

記者:今の社会は男性に有利にできている感じですが。

金子:女性はライフイベントが多い分、効率よく仕事をすることに長けていると思います。短時間勤務の女性店長もすごく頑張ってくれています。当社では子どもや家族に職場を体験してもらうシーボン.ファミリー・デイという交流イベントを企画して、社員同士の理解を深めるようにしています。短時間勤務の社員の子どもが急に熱を出しても、その子の顔が浮かぶから「早く帰ってあげて」と、快く送り出すことができる。社員同士がお互いのことを理解できるようになると、店舗の雰囲気も良くなります。

記者:それはいいですね。

金子:いくら仕組みや制度をつくっても、何かあった時に帰りづらかったり、だれも活用できない仕組みでは意味がないから。他にも社内報で、仕事と介護や子育てを両立している社員の日常を紹介して、理解を促進しています。一番大切なのは、支えている側の不公平感をなくすことなんです。

記者:そんな雰囲気だと会社の離職率も低そうですが。

金子:出産しても戻ってくる人が多いですね。お客様から喜びの言葉をいただくことで達成感につながって仕事を継続できるという話も聞きます。ただ、女性の場合、昇進を断る人もいます。解決策としては、入社2~3年でリーダーを任せて小さな達成感を積み重ねていくことで、人をまとめて仕事をすることの楽しさを感じてもらうようにしています。女性をこれから日本の労働力として活躍できる環境を整備していくことはとても大切なことだと思います。

◆迷うのは余裕があるから

記者:金子さんが、これまでで一番大変だったことは何ですか?

金子:自分のことで言えば、30代の頃に感じた、漠然とした将来に対する不安ですかね。この先どう生きていくかで悩み、精神的には大変でした。立ち位置がしっかりしていないと30代、40代はキツイと思います。一つの部署だけでなくいろいろチャレンジできたのはいい経験でした。
あとは覚悟の問題なので、覚悟ができると楽しくなってくる。自分の裁量権も増えていくとすごく楽しくなってきます。

記者:決めてしまったらやるしかない、ということですよね。

金子:そう、迷うのは余裕があるから。AにしようかBにしようか選択肢があるから迷うわけで、行きたい方向に早く覚悟を決めること。覚悟を決めて必死にやれば大抵のことはできるんですよ。たとえ失敗しても、その経験をプラスに生かしていけば周りの人も応援してくれるようになります。

記者:覚悟を決めて必死にやると面白くなってくるということですが、仕事をする上で他に必要なことはなんですか?

金子:これは仕事にもプライベートにも言えることですが、自分をプロデュースしてプレゼン能力を磨くことですね。化粧品を販売するのもプレゼンなんです。人間の個性は経験と共につくられるから、知識だけを教育してもうまくいかない。いかに信頼してもらえる自分になるか。成功体験が自信になってさらに信頼感につながっていくと思います。

◆愛のある仕事ができないと成長できない

記者:いろいろお聞きしてきましたが、これからどんな仕事をしていきたいのか計画はありますか?

金子:商品の品質だけでなく、接客やサービスの質を高めて今以上に認められるブランドになることです。日本は、世界一サービスレベルが高く、そこに日本的な価値や美しさがあると思います。長く選んでもらえるブランドになるためにも、商品を提供するだけなく、おもてなしの心をこめてサービスを提供してお客様とつながっていくことが大事だと思っています。

記者:そのために具体的には何を実践されていますか。

金子:教育体制の強化もありますが、従業員の満足度が高くなることが接客の質に大きく関係しますから、CS(顧客満足度)だけでなく、ES(従業員満足度)を高くして常にやりがいを感じられる会社にすること。そのためにも、社員全員が成長し続けるような会社にしていくことが、永遠のテーマであると思っています。

記者:お互いに成長し合える会社って素敵ですね。そのためにはどうしたらいいでしょうか。

金子:一番いいのは「お客様の喜びを自分の喜びにする」ということですね。これがなかなか難しいところがあって、大きな愛がないとできないです。
昔は気恥ずかしくて言えませんでしたが、愛のない仕事は意味がないです。愛があれば多少厳しいことを言っても伝わりますが、愛がないと思いもまったく伝わらないし、その人に対して尊敬の気持ちも湧かない、愛があるかないかは瞬時にわかるものですね。

記者:厳しさも愛ですよね。瞬時に伝わる・・愛ってなんでしょうか?

金子:難しいですね。好き嫌いを超越したところにある、存在自体がいとおしいっていう気持ちだったり、自分よりも相手のことを思いやるのも愛だと思います。若いころって自分のことしか考えてなかったですけど、人生経験を積んで周りからの愛を感じるようになりました。
やっぱり、愛のある仕事ができないと成長もしないし、相手に伝わるものだから。ビジネスの世界で言えば、ただお金が儲かればいいとかでなく、愛のある仕事をしてほしい、成長していってほしい、みんながそう思ってくれたらいいと思います。愛って、出しても出しても枯渇しない、なくなってしまうものではないから

◆綺麗とは心や生き方の美しさ

記者:金子さんは、これからどんな美しい時代をつくっていきたいと思いますか?

金子:当社の理念でもある「美を創造し、演出する」というのは、美を創造して=化粧品で美をつくる、演出する=綺麗になることでよりよい人生を送って輝いてもらいたいという思いが込められていますが、一番大事なのは綺麗になりたいと思う気持ちなんですね。綺麗って表面だけでなく、心の美しさや生き方の美しさが全部つながっていくことだから。周りの人たちに愛を注ぐことができる、感謝や愛を感じあえる心豊かな人が増えるといいですね。

記者:「綺麗になりたい」と思う気持ちが一番大切なんですね。

金子:ええ。美しい生き方、佇まいが美しい、存在自体が美しい、もともと日本人ってそういう素養があると思います。日本人としての美しさというものを、改めて世の中にアピールしていけたらいいですね。

記者:存在自体が美しい、日本人としての生き方ですか?

金子:相手の立場に立って考える、相手より一歩先んじて心地いいことをしてあげる日本人特有の美しさ、わびさびや淑やかさを大事にしていきたいし、そこにつながるものが愛だと思います。時には厳しく、でも根柢には愛が溢れている。相手の幸せを願うこともできるし、相手の幸せのために行動してあげることもできる、人生100年時代、そんな愛溢れる生き方を目指していきたいと思います。

記者:最後は愛について語っていただきました。金子さんのような方が社長だと周りも幸せだと思います。今日は本当に素敵なお話をありがとうございました。

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座右の銘: 「玉不琢不成器」
台湾の故宮博物館に行ったときに、大きく書かれていた中国語。
「玉石は彫ったり磨いたりしなければ道具や調度品にならないのと同じように、人は試練の中で鍛えられなければ、有能な人材にならない」
一言でいえば、「磨かなければただの石」

この言葉が衝撃でしたね。自分を我慢して磨いてくれた人がいたから今の自分がある。一人ではなくいろんな人が諦めないで、こんな自分を捨てないで磨き続けた人があると。いつも忘れないようにしようと思いました。

金子さんに関する情報はこちらから↓
会社ホームページ:https://www.cbon.co.jp/company/top/index.aspx

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【編集後記】今回のインタビューを担当した中谷と秋葉です。
キリっとして言葉に淀みのない話し方で、人を惹きつけてしまう金子さんは、人に対する信頼と深い愛を感じさせてくれました。覚悟を決めて、常にチャレンジし続けることで人間は、こんなにも強く・優しく・賢くなれるのだと、可能性そのものであることを伝えてもらった素敵な時間でした。

今後の更なるご活躍を楽しみにしています。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36


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