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吉野家のはなし

サイゼリヤに続いて吉野家かよ、と自分でも思うのですが。

少し前にテレビで外国人が選ぶ日本の飲食チェーンランキングみたいな番組がやっていて、結構牛丼チェーンが上位に入っていたんですよね。で、冷静に考えると牛丼が普通に海外の人に受け入れられているのは、なかなか面白いな、と。(ちなみに、上記のランキングの一位はサイゼリヤ

海外では(といってくくるのはあまりにも雑だとは思いつつ)牛丼に近い料理はあまり無いんじゃないかと思っているのですが、完成度の高い料理は、違う文化圏の人達にもそれなりにちゃんと受け入れられるものなんだな、などと謎の感慨があります。

牛丼について

Wikipediaなんかで見ると牛丼は元々は牛鍋から発展し、明治くらいから大衆的に食べられ始めたとのことなのですが、現在の「国民的外食」みたいな扱いになったのは、1991年の輸入自由化以降だろうなという肌感覚があります。有名な吉野家コピペについても、初出は2001年ということなので、その頃から家族連れや女性が入りづらいという印象が払拭されてきたというイメージですかね。

牛丼自体は、非常に外食に向いた料理だと個人的には感じていて、一つは、牛丼を構成する食材の品目が少なく、比較的扱いが容易ということがあります。牛丼の基本的な構成要素としては牛肉・玉ねぎ・米というシンプルなものですが、牛肉は歩留まりがよく、冷凍することで保管・運搬が他の食材と比較して楽なうえに、豚や鶏と比較して食中毒になるリスクが少ないという利点があり、安価に調達できるのであれば、非常に外食向きの食材だよな、という印象を持っています。

また、調理のオペレーションについても、予め煮炊きしておいた肉と玉ねぎを丼に仕立てるだけなので、簡便かつスピーディー。「うまい、やすい、はやい」というキャッチコピーもありますが、少なくとも「やすい」「はやい」は牛丼を外食商品としてみたときに、圧倒的な提供価値だろうな、なんてことをぼんやり思ったり。

吉野家のオペレーション

サイゼリヤの話に続いてこちらも、という話なのですが、吉野家でもやっぱり二十年前くらいにしばらくバイトしていた時期があり、牛丼提供の一通りのオペレーションはやっていました。吉野家では、当時からすでに非常に洗練されたマニュアルがあって、バイトでも仕込みから盛り付け、提供、レジ打ちなどを全部やることになるのですが、牛丼を盛り付ける「肉盛り」については、大会があるくらい店員のスキルが重視されており、アルバイトは練習を経たのち、一定の水準を超えないと牛丼の提供をさせてもらえなかったと記憶しています。

このあたりは少しうろ覚えなのですが、肉盛りの技術要素としてはいくつかあり、「全体量及び肉・玉ねぎの割合が規定に沿っている」「つゆの量が適量」「スピード」「盛り付けの綺麗さ」みたいな観点で評価が決まっていたような記憶があります。(追記:実技の動画をUPしてくれているブログがありました)

上記で難しいのは「つゆの量」で、吉野家では専用のお玉を使って、肉とつゆを一緒に鍋(フライヤーっぽい見た目の専用の肉鍋)からすくい上げるので、肉を持ち上げる時間や角度を調整して適切な量にするという技術が必要になってきます。また「つゆだく」「つゆ抜き」についても対応できるようにしないといけないということで、このあたりはバイトの最初の段階に叩き込まれる感じでした。

あとは「玉ねぎの量」について、牛と玉ねぎの割合は2:1となっており、これも肉盛りのときに調整をする必要があります。また、玉ねぎについても「ねぎだく」「ねぎ抜き」というオーダーが存在するため、それぞれについてやはり練習が必要だったと記憶しています。
いまはメニューも増えているので、上記の通りではないかもしれないのですが、肉盛りが速く美しい店員は店内でも尊敬される&時給が高かった印象です。

オーダーについて

自分がバイトしていた当時は、ルールとして賄いは牛丼(並)だけ、となっていた(そもそも当時はメニューがほぼ牛丼だけでしたが)ため、シフトに入る度に牛丼を食べるような生活で、佐々木倫子さんの「Heaven?」の店長ではないのですが、”一生分の牛丼を食べた”感じはあります。ただ、やっぱり刷り込まれた味なので、牛丼食べたいなと思う時に想起するのは吉野家の味だったりして、出先で独りだったりすると、ちょくちょく食べに行ったりはしています。

私がよく食べるオーダーは「つゆ抜き」または「牛鮭定食」です。これは、おそらく吉野家バイトあるあるではないかと推測しているのですが、毎日食べていると「つゆ」の味に飽きてくるというか、つゆが少ないほうがいいな、という気持ちになっては来るんですよね。当時の他の店員も、基本的には賄いを「つゆ抜き」にして、七味をたくさんかけて食べるみたいなことをしてたような記憶があります。その習慣というか気持ちがいまも続いているという感じかと。

「牛鮭定食」もご飯と牛皿が別なので、考え方としては「つゆ抜き」と一緒で、つゆが少ない状態で食べられるということがあるんですけど、上で書いていたように賄いは「牛丼並限定」だったので、「牛鮭定食」になんとなくの憧れがあったということもあります。
吉野家の鮭についても、人によって好き嫌いがあるとは思いますが、結構しょっぱいところと柔らかいところが美味しいなと個人的は思っています。

牛丼御三家とか

牛丼といえば、吉野家、松屋、すき家ですが、それぞれで戦略の方向性がだいぶ異なっており、吉野家はどちらかといえば牛丼をメインに据え、味本位・昔気質な印象を持っています。よく言えばこだわりが強いということですが、柔軟性がないと言われればそうだろうな、と思います。

松屋は定食を強みとして、定期的に話題になるメニューを出してきている印象です。カレーとか、シュクメルリとかは結構話題になりました。個人的には松屋の豚汁が好きで良く食べに行きます。
すき家は牛丼自体のバリエーションが豊富という感じですが、あまり生活圏内になかったのであまり行ったことがないんですよね、同じゼンショーグループになったなか卯も老舗ですが、こちらはうどんと親子丼のイメージが強いです。なか卯はカツ丼が好きでたまに行きます。

上でも少し「はやい」について書きましたが、牛丼チェーンのよいところは「さくっと食べてさくっと出られる」ということかなと思っています。ファミレスなどの提供時間の目安は「20分」とよく言われており、それよりかかるとクレームが増えるとされています。
その点、牛丼は20分で食べ終わることができる(早食いな個人の感想です)て、かつ、食事満足度の高いので、自分の中で代替できないな、と感じます。これからもちょくちょく行くことでしょう。


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