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272 葬送のフリーレン

はじめに

今日の教育コラムは、今人気のアニメ「葬送のフリーレン」を取り上げてみたいと思います。すでに視聴されている方も多いかと思いますが、葬送のフリーレンというアニメはアベツカサ先生の大人気作品です。
この作品まず目を引いたのは、物語の始まり方です。勇者一行の魔法使いとして同行していたフリーレンが主人公なわけですが、お話は魔王を倒した後の物語がメインです。

相手の立場に立つことの難しさ

フリーレンはエルフと呼ばれる種族で人間の寿命をはるかに超えた存在です。そのため、魔王を倒したパーティーが年老いていく様や自分よりも早くこの世を去っていく姿を目の当たりにするわけです。
フリーレンは、そうした経験を通して人間を知りたいと願うわけです。たとえ苦楽を共にした仲間であってもその心の内を理解するのは大変に難しいわけです。そんな他者理解の複雑さや心のすれ違いをこのアニメでは繊細に描いています。

動きの少ないアニメ

今日のアニメーションの生産現場は、人手不足ですしスタジオを確保するのも大変に困難です。ですから、シーズン1で人気でもシーズン2がすぐに始まらないなんてことはよくあります。それは、シーズン1の成功具合をよく見てから次の制作が始まるので、そこからスタジオを予約したりしていくため配信までに時間がかかるのです。
葬送のフリーレンは、動きの少ないアニメーションの代表的な作品と言えます。背景や登場人物の表情なども含め無駄に動かさずに必要な情報を伝えています。ある種の現代的なアニメーションの制作にあった技法だと感じます。生産性と言う思考がアニメづくりの世界にも着実に浸透していることを感じずにはいられません。

基本が大切

葬送のフリーレンには、魔法を使った戦闘シーンがありますが、最も強い効果を発揮している魔法は、多くのシーンで基本的な攻撃魔法と防御魔法です。これは、フリーレンが弟子に与えている教えの一つで、基本こそが重要であり、その精度や質量を高めていくことが戦闘では求められるという内容です。
魔王を討伐した伝説の魔法使いが、今でも基本を大切にすることを自分自身に対しても戒めにしている様子は、学問やスポーツなど様々な事象の基本であるということを指しているようで大変に共感がもてます。

命の大切さ

千年以上生きるエルフのフリーレンが、10年間一緒に旅して魔族を討伐した勇者ヒンメルの死に際し、何故自分が悲しんだのかわからなかった時、人を 知る旅に出るわけですが、この設定そのものが命の重みに思いを巡らせることができるのです。
人は永遠に生きるかのように生きてしまうと「気づく」力が弱まり、限りある生命だと思うと、見えるものすべてに価値があると気づくことができ、当たり前のことに感謝できるようになります。
限りを意識した瞬間に気づくものがあるという哲学的なメッセージを感じることができるのです。日本のアニメは多くの面で世界の注目を集めています。海外からこの文化を目的に日本を訪れる人々が増え続けているのも日本の素晴らしいアニメーションの文化に気が付いているからなのかもしれません。

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