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147 森を見て木を見ず


はじめに

今日の教育コラムでは、集団心理について少しお話ししたいと思います。きっかけは、ニュースで俳優・木村拓哉さんが主演を務める大人気ドラマ、「教場」のスペシャルドラマの撮影が延期となっているという報道を
目にしたことによります。
この作品は、警察学校を舞台にしたもので木村さん演じる教官の立ち振る舞いと、警察官を目指す若者たちの姿の描き方にとても引き込まれる作品で、私も大好きなシリーズです。

現状

みなさんもすでにご存じのように、故ジャニー喜多川さんの性加害問題によって、ジャニーズ事務所は今大変な事態になっています。社名の変更や東山さんの新社長就任など新たな体制づくりに多くの方が奔走していることと思います。
そうした中、ジャニーズ事務所に所属している多くの方々が今、仕事を失いつつあるのです。これは、テレビ業界はスポンサーなしには番組制作できないわけですから、コンプライアンスを重視する現代の社会情勢上、スポンサーが難色を示せば当然、キャスティングが減っていくわけです。
当然と言えば当然なのですが、所属しているタレントの皆さんに罪はないわけです。会社や所属タレントの皆さんを私物化してきた創業者の末路が優秀な、魅力あるタレントの方々の将来を破壊する行為で終わるとは、なんと皮肉なことなのでしょうか。
むしろ残された方々が、創業者の罪を償い、そして、性加害問題の再発防止に努めようとしていること、多くの人々に夢を与えるこの世界を再建しようとする行為を私は、応援のまなざしで見守りたいとさえ考えています。

集団心理

「教場」の撮影延期の背景には、集団の中で多数派に同調して合理的な思考力や判断力が抑制されている企業の姿が見えてくるように思います。
コンプライアンスという言葉を巧みに使っていますが、スポンサーをすることで寄せられる苦情を懸念しているといった方がわかりがいいように思います。今回の故ジャニー喜多川さんの性加害問題に派生して生じている個々の所属タレントの方への過剰なまでの誹謗中傷は、集団全体として極端な行動を引き起こす特殊な集団心理の作用と関係しているのではないでしょうか。

脅威

集団心理にはいくつかの脅威があります。
1つ目が、不特定多数の中に混じると、個人としての責任や社会的なモラルが低下するというものです。
2つ目が、多数で同じような言動をしていると、冷静な判断力を失いその場の雰囲気にのまれ、同じような言動をしやすくなるというものです。
3つ目が、感情が共鳴し合い普段以上に感情的な行動をとるようになるというものです。
悪いことをした会社の人間は、みんなまとめて罪を償うべきであるなどといった感情的な冷静さを失った言動が平然とできるのは、集団心理の作用によっいて生じるものが多いのです。
そして、集団心理は自分1人では言えないようなことも、集団の力を借りることで大きな存在になったかような勘違いを生じさせ、あたかも自分が正義の判断を下しているような言動をとらせます。

木を見て森を見ず

小さい事に心を奪われて、全体を見通さないたとえとして使われる言葉に「木を見て森を見ず」という言葉があります。
私は、今回のドラマの撮影延期は、「森を見て木を見ず」だと感じています。創業者の悪行とそれを知っていて放置してきた者への責任追及は十分にしていく必要があることは事実です。
しかし、同時に一人一人の所属タレントの方々がこれまで積み上げてきたものを、創業者の悪行と引き換えに全て否定するようなことは、あってはならないのではないでしょうか。
物事の見方考え方は、もっと冷静で細やかなものである必要が時にあるように思います。

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