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241 御用納め


はじめに

仕事納めとは、年末に、その年の業務を終えることやその日そのものを指します。一方、御用納めとは各官公庁で、その年の執務を終わりにすることやその日そのものを指します。例年、12月28日が御用納めとなることがほとんどかと思います。
つまり、年内の仕事の最終日のことを企業では仕事納めといい、官公庁では御用納めというのです。
今日の教育コラムでは、御用納め、仕事納めについて少しお話してみたいと思います。

江戸時代から

御用納めの御用という言葉に注目してみましょう。江戸時代の時代劇などをみていると御用という文字が書かれた提灯を片手に、盗賊を取り締まるお役人さんの姿を目にすることがあるかと思います。
この御用納めという言葉、江戸時代の幕府の公務が御用と呼ばれたことにちなんでいるのです。
明治時代に入ると12月29日から1月3日までが休暇と定められ、現代でも行政機関の休日に関する法律で12月29日から1月3日がお休みと定められています。土日の関係で少しずれることはありますが、こうしたことから、毎年12月28日は、御用納めの日となったわけです。
現代では、警察に捕まることを御用になるということもありますし、民間の企業においても仕事納めとも御用納めとも言い、様々なシーンで御用という言葉は使われています。

困ったことに

12月28日に仕事納めをしてという会社や機関も多いかと思いますが、今日的な日本社会の課題が顕著に表れている問題があります。それが、人手不足と人材不足です。人手不足は深刻で、ラーメン店などの倒産が過去最高の件数になっている背景には、物価高だけではなく人手不足があります。
働き手が不足しているため、最も忙しくなるお昼時を外して経営しているお店もあるくらいです。こうした物理的に手が足りない状況を人手不足と言い、うまいラーメンを作れる人がいないことを人材不足と言います。この人材不足と人手不足が重なるとどうなるかというと、仕事の一極集中が生じます。つまり、偏りが生じるわけです。ではどこに偏るかというと、人手が少ない中で働く優秀な人材に集まるわけです。
すると、経営を続けていくことが困難になり、店をたたむことになるのです。こうした、仕事納めどころではないといった現象が今、日本全国で起きています。私たちがよくニュースで耳にするのは、大阪万博の建設現場や飲食店の現場などの実情ですが、実はもっともっと広域でこうした現象は起きているのです。

深刻化する状況

なってもすぐにやめてしまう、なり手がいないと言えば、最近では教師と自衛官でしょうか。1年以内に辞めてしまう人も多く、心と体のバランスを崩している人も多いと聞きます。離職の理由は、労働環境の悪さや人間関係の難しさなど理由は様々です。
最初に辛さだけを体験し、達成感ややりがいを感じる場面に恵まれなかったような場合、なかなか明るい未来を想像するのが難しいのかもしれません。実際に2021年度の調査では、精神疾患を理由に離職した公立小中高校の教員が約1000名となりました。これは、過去最多の数となっています。
文部科学省の学校教員統計調査というものが行われるたびにこのように深刻化されてきていることがわかっています。2018年度の調査が前回ですから、今回の最新の数は、そこから約200人増加していることになります。子どもの不登校が20%増加している一方で、教員の定年退職以外の理由での離職率も急速に高まっていることになります。

臨界点

地球温暖化も日本の人口減少も少子高齢化も止めることが不可能なある一線を越えてしまっているという話があります。
こうした点を臨界点と言います。例えば、地球は緊急事態にあることは皆さんご存じのことと思います。気候科学者の多くがここ十数年にわたり警鐘を鳴らしてきました。しかし、複数の地球システムが連鎖的に「臨界点」を超えることが予想されています。そうなると地球全体が後戻りできなくなる可能性があるのです。
こうした臨界点は、社会や職場にも当てはまります。政治が金にまみれ、経済が不況になり、労働環境の整備が進まず、子どもを安心して育てることが困難にな社会は、臨界点を超えると国力が下がり、経済的な不況が続き、ついにはいかなる政策を講じても元には戻れなくなるのです。
教育の崩壊は、足音を立ててその臨界点に向かっているのかもしれません。特に大学全入時代に突入する来年からは、Fランクと呼ばれるような倍率のつかない大学はより一層、競争力を失いその存在価値を問われることになっていきます。
少子化の時代でありながら世界は人口増加を続けています。そうした複雑な状況を踏まえてグローバル化するこの時代に私たちはどのような社会制度を形成していくべきなのでしょうか。
私は、少なくとも子どもたちが今日よりも明日、来年よりも10年後、笑って楽しく過ごせるような力を確かに身に付けさせてあげたいと考えています。

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