「電気ストーブの悲劇」

私にとって、冬の必需品といえば「電気ストーブ」だ。

実家に住んでいた頃は、冬はこたつでみかんを食べながら録画したバラエティ番組を観るという、どこかの絵本やアニメに出てきそうな冬の過ごし方をしていたものだが、一人暮らしを始めてからはこたつをアパートに導入していない。でもこたつ布団はある。何故こたつを置かないのか。理由は簡単、こたつ布団が嵩張るからだ。


さて、引っ越してから最初の冬を迎えようとしていた頃の話。実家がある町の冬は寒い。でも一人暮らしをする町の冬はそこまで寒くないだろうと思っていた。舐めていた。普通に寒いじゃないか。そもそも私は寒いのが大の苦手だった。平均気温の数値だけでは判断できるわけがなかった。

最悪なのは夜だ。足の先から冷えていくあの感覚が11月の初めあたりから既に襲ってきた。羽毛布団を貫通して猛威を振るう寒気。どうしよう、寒すぎて寝られない。

そこで私は、電気ストーブを布団の側に置いて暖を取りながら寝ることにしたのだ。今までの寒さが嘘のように暖かい。非常に快適な夜。安心感からか睡魔が急に襲ってきて気がつけば深い眠りについた。


どれくらい時間が経っただろう?空が青く澄み渡っている。典型的な冬の朝だ。これから授業も控えている。私は2度寝をしないように大きく伸びをして寝ぼけ眼を擦り、起きあがろうとした。


そこで私は異変に気づいた。


「あれ?俺の体なんでこんなに真っ黒なの?」


普通に寝ていたらあり得ない状況に疑問を抱く。さらに、


「あれ?俺何で布団被って寝てないの?」


寝相は良い自信がある。布団を蹴飛ばしたりなどしない。まして冬だ。こんな寒い中布団も被らず寝るなんて正気の沙汰ではない。そして、


「あれ?なんか部屋焦げ臭くない?」


そこで急に目が覚めた。というか、覚めざるを得なかった。


被っていたはずの布団が半分真っ黒。

その通り、電気ストーブを近づけすぎたせいで布団が炭と化していたのだ。


僕は飛び起きてアパートに被害がないかを確認した。こういう時の脳の回転は異常なまでにフルスロットルだ。どうやら燃えていたのは布団だけだったようだ。自分の身にも不思議なほど何一つ起きていない。私は安堵し、その場に崩れ落ちた。


そのまま布団は粗大ゴミ行き。早急に新たな布団を買わなければならなかった。幸いにも寝袋を持っていた友人がいたため、新しい布団が届くまでの間それを借りることにした。一部始終を伝えた後の友達の顔はびっくりするくらいドン引きしていたけど、そんなの気にしていられない。大事なのはその間の寒さをどう凌ぐかである。


それ以来、私は電気ストーブを使うのをやめ、寒さに耐えながらなんとか寝るというなんとも原始的な、いや、それ以前の手段をとっている。こたつ布団買えよ、と思う方もいるかもしれない。私にとって布団が燃えることよりこたつ布団が嵩張る方が嫌なのだ。エアコン?乾燥肌なのにそんなもの使ってたまるか!


皆さん、冬の家電の事故には気をつけましょう。

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