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『哀れなるものたち』からサーチライトのパンフレットを集めてみませんか

ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の5年ぶりの新作『哀れなるものたち』が公開。主演エマ・ストーンは『女王陛下のお気に入り』に続いて監督と再タッグを組み、今作ではプロデューサーも兼任、世界観の構築に貢献している。

さて、今回注目したいのはそのパンフレットである。『哀れなるものたち』の劇場パンフレットは、製作・配給のサーチライト・ピクチャーズの名を冠して「SERCHLIGHT PICTURES issue」というタイトルがついている。

『哀れなるものたち』パンフレット

写真から分かるように、パンフレットには「vol.26」とナンバリングされている。映画パンフレットの愛好家には有名な話だが、サーチライト映画のパンフレットは全て同じ規格で作られていて、統一感があり、かつ内容も充実していて完成度が高い。

ご参考に目次を紹介

こんなクオリティのパンフレットが、このほかに25冊もあるのだ。ついつい集めたくなってしまうし「パンフレットが欲しいから映画を観に行こう」という逆の現象も起きる(と言いつつ、筆者が所有しているのは『哀れなるものたち』を最新とした全26冊中14冊のみ)。

それも、サーチライト映画のクオリティの高さに信頼があるからこそだが。

そもそも、映画のパンフレットというのは日本独自の文化である。特に規定もないので、映画ごとにサイズやデザインなどが全く違うということも魅力の一つだ。2023年のお気に入りは、心臓を切り開くようなギミックで中から冊子が出てくる『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』と、「PERFECT DAY」が複数並んで『PERFECT DAYS』を表しているというデザイン。

(左,中央)『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
(右)『PERFECT DAYS』

映画が10本あればパンフも10種になるところ、サーチライト作品には統一感があることが個性となって、パンフレット界で存在感を放っている。

もちろん「統一感がある」だけではない。先述した『哀れなるものたち』パンフと同様に、いずれも50ページ近くあるボリュームで、監督や主要キャストへのインタビュー、評論家・ライターのコラムなど一般的なものから、撮影や美術など色んな角度から掘り下げるプロダクションノートや、コンセプトアート、サーチライトの他作品への言及など、内容は超充実している。

少なくとも、場面写真にやたらとページが割かれていて「買って損した」と思うことはまずない。

しかも、だ。これが一番大事であろう、お値段がなんと1,000円を切っている。

全巻を持っているわけではないが、割と創刊当初から集めていると気が付くことがある。それはパンフレットの名前が変わっていく問題だ。

背表紙から名前が2回変わっているのが分かる

この現象は「20世紀フォックス」が「ウォルト・ディズニー」に買収されたことが大きく関係している。

サーチライト・ピクチャーズは、もともと20世紀フォックスがアート映画市場への参入のために設立した「フォックス・サーチライト・ピクチャーズ」という社名だった。2019年に親会社がディズニーに買収された関係で「フォックス」なくなり、現在は「サーチライト・ピクチャーズ」となっている。

社名変更に伴い、パンフレットも名前が変わった。「FOX SERCHLIGHT MAGAZINE」から「FOX」の文字が消え、「SERCHLIGHT PICTURES MAGAZINE」になったのだ。切り替えのタイミングはパンフで言うと、vol.18『ノマドランド』からである。

映画館に『ノマドランド』を観に行った際にも、オープニングのロゴのファンファーレで「FOX」の文字がなくなったことに気付き、衝撃を受けた。

お馴染みの「FOX」が
なくなってしまった

そんな「SERCHLIGHT PICTURES MAGAZINE」から、また名前が変ることになる。それが冒頭で紹介した現在の「SERCHLIGHT PICTURES issue」である。

そのタイトルの前に、映画メディア「ムービーウォーカー」の名も冠して「MOVIE WALKER PRESS」と書いてある。切り替わったのはvol.19『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』からだ。

つまり「SERCHLIGHT PICTURES MAGAZINE」という名は『ノマドランド』だけなのだ。かつ『ノマドランド』は2021年公開だったので、覚えておられる方もいるかもしれないが、公開当初、『ノマドランド』はパンフレットがなく、また発売予定もないとアナウンスされていた。アカデミー作品賞、フランシス・マクドーマンドの主演女優賞の有力候補と言われていたにもかかわらずだ。

『ノマドランド』パンフレット

結局、公開後しばらくしてからパンフレットが出たので、公開時になかったことであまり出回っていない。また「SERCHLIGHT PICTURES MAGAZINE」という名で出た唯一のサーチライト系パンフレットであるために、レア度がかなり高いのである。

買収のタイミングと被ったが故に、色々と調整に遅れが出たのかもしれない。サーチライトのパンフレットは「MOVIE WALKER PRESS」の名がつくずっと前から、発行・編集を株式会社ムービーウォーカー(社名がエイガウォーカーだった時代含む)が継続して担当してきた。

パンフレットに記載の”発行権者”は、買収までは「20世紀フォックス映画」で、『ノマドランド』のタイミングで「ウォルト・ディズニー・ジャパン」となり、それ以降のパンフレットには記載されていない。

vol.19には名前が変わったことが書いてあり、
これ以降は発行権者の記載がない

権利関係の大人の事情だと思われるので、詳細は不明である。

あくまで想像だが、買収に伴い発行権が「20世紀フォックス」から「ディズニー」に移ったものの、ディズニー側がその権利を放棄したのか何なのか、とにかくムービーウォーカーに委譲したために、それ以降の発行権者は記載されずパンフレット名に「MOVIE WALKER PRESS」がついたのではないだろうか。

サーチライトの新作公開で、パンフレットを購入するチャンスは年に数回しかない。去年は『イニシェリン島の精霊』『エンパイア・オブ・ライト』『シアター・キャンプ』の3回だった。

今年の1本目が『哀れなるものたち』というわけだが、もう来月に2本目が控えている。タイカ・ワイティティ監督の『ネクスト・ゴール・ウィンズ』だ。パンフの有無は発表されていないが、十中八九あるだろう。話題の監督でもあるし、同監督の前作『ジョジョ・ラビット』もサーチライト式のパンフレットが発行されているからだ。

以上、ご紹介したようにサーチライトのパンフレットは質も非常に高く、そして値段も安いので、ぜひ集めてみてはいかがだろうか。

その値段も、創刊当初から比較すると820円→840円→940円(税込)と少しずつだが上がっている。1,000円を切っている現状で、なんとかムービーウォーカーさんには踏みとどまってほしい。

みなさんに買っていただけたら、価格高騰の抑止になるかもしれない。そういった意味でも、ぜひご協力いただきたいのである。


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