さらさら流る:柚木麻子:色々な気持ちになることが大切

「さらさら流る」(119/2020年)

やられた、打たれた、痺れました。

通常のマイ読書ルールに従って、解説は一切読まずに読み始めました。暗渠を辿って家まで帰るカップルが登場してきて、ホンワカ気分の切ない恋愛ものなのかな~、暗渠デート楽しいだろうな~、主人公の家族はちょっと厳しいな~、とか思っていたら、一気に時が進んでの急展開。

彼氏が取った自分の裸の写真がネットに流出、事件です。このことを自分で見つけた主人公、菫の感情の表現には納得したというか、自分は男性なので、多分生涯感じることのない心の動きを読むことが出来て、良かったです。

読書の醍醐味の一つに、自分が体験できないことを体験している気持ちになれるということがあります。今回は自分のヌード写真が流出した人の気持ちを知ることが出来ました。ちょっと自分の想像とは違っていたので、より深く感じられたのかもしれません。もちろん、この作品で描かれている感情が全てだとは思いませんが、one of themを知ることが出来たこと、良かったと思います。これ痺れますよね。これを克服できる人はいるのでしょうか、心配になりました。

この残酷な犯罪をこのテンションで書ききる柚木、好きです。本当はもっと凄惨なのかもしれませんが、これがギリギリのラインなのかもしれません。

この作品の感想書くの、難しいです。面白い作品なのですが、これを面白いと言ってよいのか、悩みます。今はあくまでも「外野」から読んでる立場です。もし、自分が女性だったら。もし娘がいたならば、この作品を冷静に読めるのでしょうか。正直、分かりません。

でも、こうやって読んで、色々な気持ちになることが大切なのでしょう。想像する努力を捨てた段階で、人は終わると思います。想像するから、夢も見れるし、想像するから、困難にも立ち向かえるのです。想像して、色々な気持ちになって、強く優しくなりたいと思いました。


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