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【感想】いちごの唄 - 人生をかけてかっこ悪いコウタの姿が羨ましくて。(小説)

かっこ悪い生き方をしている人を見ると胸の奥がむずむずする。

かっこ悪い生き方をしている人が、僕はずっとうらやましかったんだ。

僕はかっこ悪いことから逃げてきた。できるだけかっこ悪いことを言わないように、できるだけ失敗しないように、特に恋については、恋なんてなかったことにして、嫌われたり、キモがられたり、目をそらされたりしないように、逃げてきた。

人のいいところを探すのが好き。だけど、気になる人ができたら、できるだけその人のダメな所とかダサいところを探そうとした。多分怖かったんだと思う。自分の恋が叶わなくても、叶わなかった相手は大したことないやつだったって思えたら、あんまり傷つかなくて済むから。あんまり後悔しないで済むから。

ダサい人がいたらその人をいじりたくなる。ダサい人がいたらバカにしたくなる。ダサい人が羨ましいから、僕は嫉妬しているんだ。ダサい人をバカにしてマウントすることで、ダサいことから逃げてる自分を肯定しようとしているのかもしれない。

だからね、「知的だね。」とか「頭が良さそう」って言われると、言葉にできない気持ちがうずまいてくる。だって僕の落ち着いた振る舞いは、ダサくなれない自分から逃げてできたものだから、それを褒められととっても情けない気持ちになるから。

「いちごの唄」を読んでいて、ずっと胸の奥のほうがむずむずした。

主人公のコウタはずーっとかっこ悪い。ださい。人生かけてかっこ悪いんだ。正直同じ人生なんて恥ずかしくておくりたくない。どう見ても負け組の人生で、情けないださい人生だ。だけど僕はコウタが羨ましくて仕方がない。そんな生き方ができない自分がもどかしい。

コウタはださいけど、だけど幸せそうだ。人生をまっすぐ生きている。みんなのことが好きで、感謝して、幸せそうだ。いっつもにこにこ笑顔な田舎の少年なんだ。

僕の人生は、クールにかっこよくキマったことなんてなかったし、泥臭くボロボロにださくなることもできなくて、中途半端だったけど、コウタみたいにね、ダサく生きたいなって。素っ裸で丸腰に、小さなできごとたちを一生懸命抱きしめて噛みしめて生きたいなって思ったんだ。

この本の中には、誰もが抱いたことのある恋の歯がゆさと、人によっては歩んだことがないかもしれない、ダサいけど一生懸命で真っ直ぐな人生が描かれています。このエモさと、ダサさと優しさは、まさしく銀杏BOYZ...!

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