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『萩原健一の狂気と、その時代』そして、『前略おふくろ様』へ。その1。

 『萩原健一の狂気と、その時代』そして、『前略おふくろ様』へ。(連載予定)

      前書きとして。
※COVID-19は世間の暮らしを一変させた。これまでみんなが普通に行われていた会議、仕事の事情も変化してリモートワークがかしましく叫ばれる様になった。100年前の先人もスペイン風邪時代にはマスクをして、生き抜いた。我々にも出来ないはずは無いと思いながら臥薪嘗胆な日々を等しく生きている。
 愛する家族に会えない、普通に人と話せない。恋愛も難しい。不景気の煽りに全ての人がもがいて生きている。
 私の本は15万字を突破した。まだ版元は決まらないが、萩原健一、沢田研二について論じているうちに、それくらいの字数を軽く超えたのである。萩原健一が『傷だらけの天使』でペントハウスとして存在していた代々木会館も消えた。『傷だらけの天使』1話で登場した渋谷も様相を変えた。関東大震災の影響で建築された同潤会アパートも全て消えた。久世光彦が借りたがっていた話は有名だが、昭和の名残が消えていく。表参道ヒルズの後ろに付随する表参道ヒルズはレプリカだ。
 我々は変化の中で生きているCOVID-19も克服し、平穏な日々も近いうちに訪れるだろう。
 そこで聞いてみたかったのは亡くなった2人の言葉だ。井上堯之さんと、萩原健一さんである。なんと言っただろう。
 私が予想するに、2人が主に語るのはCOVID-19のことではなくライブや芝居が万来の観客の元で出来ないことでは無いだろうか。
 私の自著は版元もあるが、COVID-19の影響でインタビューパートがままならない。しかしいつか世に出したいと思う。ブログで全文掲載はしないが、そのエッセンスを書いてみたいと思う。
 この現状でも、音楽、演劇、書籍、文章の文化は絶やしてはならない。一冊でも本を出させて頂き、様々な方々の声援を頂戴した私の使命だと思う。
 この文章も工事して、変化する可能性がある。
 改めて天国の2人にこれからの文章を捧げよう。本ができたら改めて。
 皆様本当にありがとうございます。読んでください。

     秋山大輔拝

  本編・『前略おふくろ』〜「前略おふくろ様、股引(ももひき)穿いてます。とってもあったかく感激しています」

 萩原健一さんが亡くなってから2年の月日が経とうとしている。代々木の一頭地に建っていた代々木会館は完全に解体されて、跡地の看板を見ると商業施設になるようである。
 1945年の空襲で代々木は焼け野原となった。そして戦後一帯がバラックが立ち並び、東京オリンピック開催の道路拡張の煽りでバラックの移転先として1964年に代々木会館は建築された。
 考えてみれば『傷だらけの天使』で最終回に森本レオが「ビルを壊すから、出て行ってくれ」と言われるが、建築されてから10年。まだ当時は比較的新しい部類に入っていただろう。
 これはあくまで私見だが、バラック街で戦争による貧困や業を背負ってきた人々が寄せ集まり商売をしてきた、ある意味「曰く付き」の物件なのは間違いあるまい。「代々木の九龍城」の異名を得たが、様々な「魂」がまとわり付いた物件であり土地であったのは間違いあるまい。
 そこを舞台に、出生については萩原は著書『ショーケン』でも触れているが、大東亜戦争が無ければ生まれなかった存在であり、そのショーケンが『傷だらけの天使』で代々木会館のペントハウスに居座り、探偵ともいえない破天荒な小暮修を演じ、ヤクザに殴られたり、鼻血を出しながらもがき苦しむ、しかし人情味溢れる主人公を演じたのも大東亜戦争を通じての歴史の流れにあるといえるのではないだろうか。
 私は『太陽にほえろ!』、『傷だらけの天使』てファンを魅了させた泥臭い演技も好きだが、そこにショーケンの狂気を感じない。普段からエキセントリックな歌手、俳優が地で行っている話なのだ。それが萩原健一の魅力ではある。
 しかし私が本格的に心地よい萩原健一の狂気を感じるのは『前略おふくろ様』である。萩原が演じる片島三郎という人物は実像のショーケンと対極の位置にいる。その設定こそが倉本聰さんの狙いといったらそれまでだが、ショーケンの68年の人生を俯瞰して考えてみると彼の中で一番奇異な作品かもしれない。
 片島三郎と萩原の共通点は母親をこよなく愛していたことだろう。ここで倉本と萩原の交流を紐解く。
 倉本聰と萩原健一の交流は古く、萩原が師叔した、斎藤耕一監督、脚本家の市川森一と同時代でグループ・サウンズ終焉期、PYGの時代と重なる。そして倉本が脚本を手掛けたNHK大河ドラマ『勝海舟』で人斬り以蔵こと、岡田以蔵に萩原を抜擢する。主人公は渡哲也。(途中で渡の急病の為、松方弘樹に交代)。恋人役に大原麗子、坂本龍馬に藤岡弘、人斬り新兵衛こと、田中新兵衛役に渡の実弟、渡瀬恒彦と豪華キャストである。全ての映像がNHKに保管されていないのは痛恨時であろう。民間人での保管、発掘を祈るのみである。
 大河の5年前、萩原が演じた人斬り以蔵、岡田以蔵はだが、昭和44年に公開された五社英雄監督の『人斬り』で勝新太郎が見事な殺陣を観せながら観客を魅了した。そして田中新兵衛を演じたのは作家、三島由紀夫。
 勝新太郎と萩原健一が共通しているのは、不気味で予測不可能な危うさと取り扱い注意な空気感であろう。
 倉本聰はその、ショーケンの壊れやすい狂気を的確に見抜き、岡田以蔵の世界観に託したのである。しかし、倉本はNHKと激突し脚本家として途中降板する。しかし、この後に萩原と倉本には大きく、ヒューマンチックな舞台が待っていたのである。(続く)

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