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台湾ECは売場と共に攻めるべき

2024年4月の台湾訪問

 2024年4月中旬に4,5年ぶりに台湾を訪問した。
その2週間前に花蓮にて大地震があり、被害にあわれた方々にお見舞いを申し上げます。少しでもご支援にもなればという気持ちをもって、予定通り台北へ降り立つこととなった。初日にお会いした台北の現地ご友人たちに聞くと花蓮地震の影響は台北では少なく、かと言って台北も揺れたので、気をつけるように言われた。
 花蓮と台北の位置関係は、台湾自体の面積が九州とほぼ同じことから、弊社グループのコールセンターが多い大分と福岡の距離感に似ている。
今回のビジネスツアーの主催者である一般社団法人「日本通販CRM協会」の同じくビジネスツアーで以前にお伺いした熊本での地震前の夕方に、たまたま博多へみんなでバス移動した事も思い出してしまった。

現地の政府系のEC団体とのご縁

 この日本通販CRM協会(以下、J-CRM)と提携している台湾の政府系EC団体である中華民国無店舗小売業協会(CNRA)とシンクタンクの「CDRI」のお招きもあり、台北への3泊4日のビジネスツアーで主に現地の方々とEC通販業界のトップ企業の複数とご交流が出来る機会を今回は得たのだ。それが良かった!

百貨店の進化は台北の方が進んでいる?

 先ずは現地のナンバー1百貨店の「新光三越」さんと「そごう」さんの2社とご交流。2社とも幹部とEC事業責任者さんから現況のご説明をお受けした。
新光三越さんは本社店舗のほか、中山(台北での一番の繁華街)もそうであったように本館(悪い言い方をすれば旧館)と新館が道を隔てて立つ立地。旧館は日本の百貨店と同じく1Fはブランド化粧品で地下は食品売り場。1Fは見るべきものが無いというか日本と同じなので興味がなく、地下が面白い。日本製の多くの食品が並んでいて、日本ではGMSで展開していないようなカフェブランドのコーヒーなども多く並んでいた。
 ちなみに新光三越は1989年中山で創業、現在では15店20館で営業。総売り上げは945台湾ドル(ツアー中は5円をかけて日本円換算していたので、5,000億円弱)で、会員354万人で全売上の約80%。自社PAY(SKY PAY)利用率は37%。ポイント保有が27億台湾ドル。ちなみに「そごう」は528億元。台湾訪問の直前までは×4円で良かったらしいが、円安で×5円となっていた(泣)。※「台湾ドル」と「元」表記を使うが同じ単位。

新光三越の地下食品(グロッサリー売り場の一角)

 特に面白いのは新館の1F。ECで大人気の新興ブランド店舗を多く集めていて、ECとのポイント連動やお聞きすると在庫連動なども出来ていてオムニチャネルが進行している。若い方々に人気のコスメ、アパレル、雑貨、スマホグッズなど。ルミネかマルイの乗り。こちらは特に賑わっていた。店頭でのクーポン(QRコードなどで)はそのままECサイトでも使用できるスマートな仕組みが出来上がっていた。
 また、そごう(日本のそごうとは資本関係は既になく、ブランド権の使用は続いているとお聞きした)のECは「GREEN」を一つのコンセプトに農家などを支援しつつ商品開発や商品調達を行っているとお聞きした。
そごうの方はECの店頭受取(BOPIS)の割合が約30%とのことで、ここでもECと店頭の連携が進んでいるという印象。

台湾ECは2.5~3兆円弱/年の市場規模

 台湾EC市場は5,000億台湾ドルとの事で、日本円なら2.5兆円で、別データでも2.7兆円というのを目にした。日本の物販ECが13兆円~14兆円で、台湾の人口は約2,000万人とのことで、人口比なら日本とほぼ同じ。なおEC化率は12%とのことだった。
 コンビニが町の至るところにあり(16,000店でファミマが30%、セブンも多い)東京の都心部よりずっと多い印象で、ECの商品受け取りもコンビニがダントツで、そのままコンビニ払いが多く活用されていて、物流もヤマト運輸と提携している統一グループと佐川急便と提携している新竹のトラックを町中でもよく見かけた。またMOMOの商品受取拠点(フルフィルセンターかも?)は50か所、PC HOMEは6か所あり、共働きが当たり前の台湾らしい進化とも言える。
 ちなみに台湾の方々の50%以上が海外旅行に行き(1,100万人)、その内の420万人が日本を訪れてくれている。かたや日本からは82万人ぐらいしか台湾に行っていないとの事であった。

ナンバー1企業を次々とご訪問

 台湾EC市場のナンバー1はShopeeとの事であったが、現地でお聞きすると90%がC2C。要はメルカリスタイルなので、B2Cのナンバー1企業であるMOMOさんを訪問。社長の歓迎も受けて、放送中のライブコマースのスタジオも3か所あるうちの2か所で静かに見学させていただいた。

ちょうど放映中のMOMOライブコマース

 そのMOMOの売上は1,034億台湾ドル。日本円なら5,000億円オーバーで日本の巨大TVショッピング会社の何と約5倍!客層は45歳~69歳の女性が中心。500万世帯が受信して客単価2,550台湾ドル。会員数1,180万人。
アジアでは№1のTVショッピング会社で現在はライブコマースにチカラを入れているとの事。今回は「J-CRM」のおかげで次々と現地のキーマンや著名企業の幹部達とお会いできた。

 MOMOは2004年創業で2014年に上場、2017年までは現在ナンバー3の「PC HOME」が第一位であったのを2018年からはこの「MOMO」が実質的な第1位。インドネシアや中国大陸からの注文も一定数あるとこと。10~20%とも仰っていて、力を入れているライブコマースもそろそろ10%ぐらいになってきている様子。ちなみにセブンイレブンが7,000店舗で3,000億元、コストコ15店舗で1,500億元らしいので、MOMOは一大リテール企業である。

その他、現地「台湾」情報

 この後、国民の95%が使用しているLINE本社※トップ写真は世界最大のLINEベア(LINEタクシーが好調との事)や近年、日本に上陸されたアジアナンバー1ECカートの「SHOP LINE」。その他、現地の店頭市場とECの両方をサポート(卸を含む)されている新興企業や新竹物流さんとも積極的に交流が出来た。
また現地でのSNSナンバー1はFacebookとのことで、広告スタイルは日本とほぼ同じであるが買い物習慣が日本の定期コースではなく、まとめ買い。3buy1などで、前回はギャザリング専門のEC企業にも訪問したことがある。
 何より良く売れるのは記念日イベント。ダブルイレブンのほか、母の日と父の日(台湾では父の日は8月8日)、6月18日、9月(~11月)の周年慶や旧正月など。

 こう考えていくと、インフラが整っていてEC化率も日本並みの台湾に続々と日本のEC企業がチャレンジした過去はあるが、やはり店頭と交流(ショップイベントなどの催事参加)が出来て、現地事務所を持ちモールに出店(コンビニ決済に必要)したり、大手EC企業とタイアップ(卸販売)する戦略を描けないと、もう一つの九州(面積がほぼ同じと前述した)でのEC成功はままならないのではないか?と思えた4日間であった。

欄外にその他の情報もメモにしておく。
※台湾ではお酒と薬のネット販売は禁止されている。
※急拡大中はペット用品で、日本にはまだまだスイーツが上陸するだろうとは現地の事情通のお話でもあった。
※公式LINE数は280万で、ギフトナンバー1はスタバ。
※食品の販売単価は1,000円~1,500円でコスメは4,000~5,000円。
※台湾の領収書は宝くじにもなっていて、もらって当たり前(クジだけに、笑)。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!

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