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平成版アニメ「どろろ」に再燃してます

何がきっかけなのかは失念してしまいましたが(笑)、
令和も6年になった今になって、2019年にアニメ化されたリメイク版「どろろ」に再燃しております。


よくよく考えてみたらこの作品、ちょうど平成から令和の移り変わりの時期に放送されてたんですね。
二クール目の終盤の展開が展開なせいで当時Twitter上の一部でまさか「どろろ」で令和初のヤンデレキャラを見られるとは、なんて言われてたのを覚えています。笑笑

今回はそんな「どろろ」について、語りたいことを語りたいだけこの記事で書かせていただきたいと思います。
思いが溢れすぎて文章がとっ散らかってしまったら申し訳ありません。苦笑


「どろろ」とは

「どろろ」なる作品を知らない方のためにざっと説明させていただきますと、
時代は室町時代の後期、醍醐という国の領主が天下統一の野望を果たすため、実の息子を鬼神の生贄に捧げ、その結果息子は身体中のあちこち(具体的には48箇所)を欠いて生まれてきてしまった。
どうせ長くは生きられないからと捨てられた赤子はとある医師に拾われ、「百鬼丸」と名付けられ、身体の欠損箇所を補いながら成長していく。
ひょんなことから自分があやかしを引き寄せる体質だと知った彼は、あやかしを退治し生身の肉体を取り戻すために鬼神退治の旅に出る。
そこでひょんなことから出会った孤児の泥棒、どろろと奇妙な縁があり共にあやかし退治の旅を続けてゆく
…といった物語です。

ここまでの説明で分かるように、タイトルは「どろろ」ではありますがどちらかというと「百鬼丸」の方が主人公として重点的に描かれています。
そして原作は言わずとしれた漫画の神様、手塚治虫先生。
確か当時、水木しげる先生の「鬼太郎」(確か当時はまだ「ゲゲゲの〜」ではなく「墓場鬼太郎」だったかと思います)を読んでその才能に嫉妬し、自分だって妖怪漫画ぐらい書ける!…といった動機から執筆に至ったそうです。

個人的な感想になりますが、妖怪漫画を書いてやる!と言いつつも中身を読んでみると妖怪とのアクション要素よりも人間の「生」に焦点を当てたストーリー、というのがやはり手塚作品らしいな、というか。

ただ、残念なことに主人公の設定が重すぎるというのが当時の読者層に受けづらかったのか、原作はほぼ打ち切りと言っていい不完全燃焼な終わり方になってしまっているのですが。
今の時代ならむしろ受けそうな設定だと思うんですけどね…。時代を先取りしすぎた作品だった、ということでしょうか。

平成版「どろろ」、原作やこれまでのアニメ作品との変更点

原作漫画から何度かアニメ、ゲーム、実写映画といろんな媒体でメディアミックスサれてきた本作ですが、2019年版の「どろろ」は原作とは大きく異なる点が4つあります。

①百鬼丸が「コミュニケーションが全く取れない人形のようなキャラクター」として描かれている

一つ目の変更点は、百鬼丸が目も耳も不自由で口もきけず、ストーリー序盤は全く他者とコミュニケーションが取れないこと。

原作やこれまでのメディアミックスでは、聴覚や視覚などの器官を失くしていながらも百鬼丸はテレパシーで相手と意思疎通ができるので、一般的な日常生活では特に困ることはないという設定だったんですよね。
キャラの性格、という面で見ると、いろんなメディア媒体で微妙に性格の違いはあるキャラではありますが「そもそもコミュニケーションが取れない」というのはかなり大胆な変更点だと思います。(実際、アニメ放送当時某掲示板を見ていたところ、原作と違いすぎる、これではどろろの「兄貴分」キャラではないだろう…などと結構批判も多かったように思います…)

ただ、原作を読んだことのない夫にアニメを見せて、それから原作を読んでもらったところ、
原作の百鬼丸だと日常生活で不自由している様子が全くなく、苦労しているように見えないしそこまで身体を取り戻さなくても不便に見えないのでアニメの設定変更は良かったと思う、という平成アニメ版から入った視聴者としての貴重な意見がありまして。
まぁ確かに言われてみればそうかもしれないな…と思った次第です(^_^;)
こういう、「原作のファン」というフィルターのない忌憚なき視点の意見って結構大事ですよね。
キャラ設定を大きく変えた点に関しては、シリーズ構成の方曰く「喋れない」というのをはっきり視聴者に分かってもらうため、とのことだそうですが、私が思うに原作漫画であった身体障害者への差別的な表現が現代だと引っ掛けるから、ではないかなぁと思います。
原作だと百鬼丸の作り物の腕を村人たちが気味悪がって追い出す、というシーンがあったり、あと今では放送NGな差別用語もじゃんじゃん出てくるんですよ。
そういった身体障害への差別的表現がNGだから、代わりにコミュニケーション面での不自由さを強調するように変更されたんじゃないかな、と思っています。あくまで私の想像に過ぎませんが。

②百鬼丸の父親、景光の設定変更

ふたつめの変更点は、百鬼丸の父親、醍醐景光の動機が天下統一から「戦や災害から国を守ってほしい」、「息子を生贄に」ではなく「鬼神たちの望むものを何でも与える」に変わっていたこと。

平成版の景光は、単なる野心家としてしか描かれていなかった原作以上に、単なる悪人とは言いきれない複雑なキャラクターとされています。
戦や災害に喘ぐ国を彼なりに守ろうとしていた。
客観的に見てみたら、醍醐の国の民からしてみたら、その辺からランダムに選ばれた無辜の民ではなく領主自身の息子を生贄に、というのはだいぶ良心的ではあると思います。
トロッコ問題とも通じるものがありますが、国が滅ぶかもしれないという最悪の事態を避けるために何を選んで何を捨てるか?
平成版の景光は、人間は簡単に善悪とはっきり分けることができないということを体現しているキャラクターだと思います。

ただ、それでも個人的に景光に対しては一度だけの過ちで済むと思うなよと最後まで言ってやりたかったですね。
ドラマの「白夜行」で武田鉄矢さん演じる笹垣の台詞で、

1つ嘘ついたらどんどん嘘つかなあかんようになんねん。そんな人生に未来なんてあらへん。お天道さんの下歩けんへんようになる

ドラマ版白夜行第一話より

という台詞があるんですが、まさにその通りで一度きりの過ちでは済みません。
たとえ誰かの手で裁かれなくても、本当の罪と罰って本人の身体と心に刻まれるものなんです
最終的に景光は自分の犯した過ちのせいで取り返しのつかないことになってしまい、罪を背負いながら生きていくことになります。
そんな醍醐景光というキャラクターの業の深さもまた、人が人として生きていくことそのものなのだなと感じさせられますね。

③百鬼丸の弟、多宝丸の設定変更

個人的にはこれが一番嬉しかったです。笑
恐らく原作未読の方からしたら信じられないでしょうけど、多宝丸ってぽっと出てきたかと思えばばんもんで死んじゃうキャラだったんですよ。
ついでに言うと性格も小悪党丸出しだし、ぶっちゃけて言うとキャラデザもかなり適当丸出しだったんですよ。

原作を読んでいた頃から、個人的に多宝丸の扱いは非常にもったいないなと思っていました。
主人公とは正反対の境遇を歩んできた生き別れの兄弟、って、いかにも少年漫画における主人公のライバルキャラに相応しいじゃないですか。
金色のガッシュのガッシュとゼオン然り。
烈火の炎の烈火と紅麗然り。
(生き別れではありませんが)犬夜叉の犬夜叉と殺生丸然り。
漫画やアニメの中の世界だけでなく、歴史上を見てみても源義経と源頼朝だったり、兄弟の因縁の対決というのは古今東西、物語において非常に盛り上がる要素の一つです。

なので、新アニメ版で弟の多宝丸が「ぽっと出で死んだ嫌な奴」ではなく主要キャラの一人としてしっかり掘り下げられられ、物語のラストまで百鬼丸の因縁の相手として立ちはだかってくれたのは非常に良い改変だったと思いますね。

④「鬼神との約定により、百鬼丸が身体を取り戻すごとに鬼神の力が弱まり醍醐の国が傾いていく」という設定の追加

原作では百鬼丸が身体を取り戻すことに関して特に国がどうこうなる、という設定はありません。
これは、恐らく先に述べた「身体障害者差別表現が現代ではNG」ということに関連して、「欠損描写を村人たちから気味悪がられる」という描写を削る代わりに「百鬼丸が生きていると国が傾く=醍醐の民たちからすれば百鬼丸は邪魔者」という展開に変更したのではないかな…と思います。
要するに実の家族から国のために死んでくれと責められているという状況で、赤の他人の村人から気味悪がられる以上に相当メンタルにくる改変ですよね… 。
(また、この事実を知った頃の百鬼丸は耳と声を取り戻しそれなりに情緒が芽生えてきた頃で、自分の家族というものに多少なりとも興味を抱いていた頃だったので、家族全員から「お前が生きているだけで迷惑なんだ」と責められたときのショックは想像を絶するものがあります…)


その他、色々と細かい変更点(欠損箇所が48→16と大幅に減っている、どろろの性格が原作と少し違っており百鬼丸の刀を欲しがらない、「みお」のエピソードが大幅に膨らまされている…などなど)がありますが、
大きな変更点は以上の4つだと思います。
いずれも原作からはかなり思い切った改変ではありますが、表現など今の時代に合わせる必要があったのかもな、と思うとどれもリメイクにあたって必要な改変だったのでは、と個人的には思っています。

女性の構成作家さんならではの視点から描かれる百鬼丸とどろろの関係

リメイク版の百鬼丸がコミュニケーションが全く取れないキャラとして描かれている分、原作では「兄貴分の百鬼丸を振り回す悪ガキキャラ」だったどろろもまた性格面が変更されており、
(百鬼丸の旅に同行する目的こそ最初は「金儲けになりそうだから」という下心からくるものだったものの)百鬼丸のために火を起こして魚を焼いてあげたり、あやかし退治の依頼を引き受けてきたり、その他日常生活面でのあらゆることを介助してくれる世話焼きな少女、として描かれています。

そして今更ネタバレもあったものではないと思うので敢えてネタバレさせていただきますと、どろろは外見や喋り方こそ少年として振る舞ってはいますが、れっきとした女の子です。(リボンの騎士といい三つ目がとおるといい、手塚治虫先生って「男装少女萌え」的な趣味嗜好でもあったんでしょうか… )

さながら百鬼丸の日常生活の世話をあれこれと焼く様子は小さなお母さんのようで。
原作の兄貴分とやんちゃな弟分といったバディとはまた違った良さが平成版の二人にはアるなぁ、と思います。
先にも述べたように百鬼丸の設定変更によりどろろの「兄貴分」キャラでなくなってしまったことに抵抗を覚えるファンの方のお気持ちももちろん理解はできるのですが、原作は原作、リメイク版はリメイク版と別々に分けて見ると「これはこれでアリなんじゃないかな」というのが個人的な感想です。
(そもそも原作自体が未完の作品だからか、昭和アニメ版、実写映画版、ゲーム版…とメディアミックスによってキャラの設定が少しずつ異なっているというのが「どろろ」という作品のメディアミックスの大きな特徴だと思われます。個人的に実写映画版で子供のどろろ役を成人女性が演じているのには正直最初戸惑いました汗)

そもそも百鬼丸のキャラ自体がなんというかこう、母性本能を刺激されるキャラなんですよね。
何も知らないさながら赤ちゃんのようだった初期段階から、少しずつコミュニケーションを覚え、感情を知り、言葉を発するようになり、…と少しずつ「人間」に近づいていく様子が本当に子供の成長を見守る母のような目線で見てしまうんですよ。

また、感情を覚えていくということは嬉しい、楽しいことばかりではありません。
人との関わりを学ぶようになった百鬼丸はやがて、自分にとって大切な人を害する存在や自分の存在を否定する者への怒り、苦しみなどといった負の感情にも苛まれることとなります。

人との関わりができたからこそ、
大切な人ができたからこそ、
それを喪う恐怖や悲しみ、怒りを知ることになる。
そういった負の感情と向き合っていく過程もまた、安心安全な母親の胎内にいた赤ん坊が厳しい外の世界に生まれ出てこようとしてくる過程のようなものを感じさせられるんですよね。
百鬼丸のキャラ造形や百鬼丸とどろろの関係性など、もともとの原作以上に女性視聴者層の視点を意識しているような気がするなぁ、と思っていたところ、シリーズ構成が小林靖子さん(進撃の巨人などのアニメにも携わっている方だそうですね)という女性の方だと知ってあぁなるほどね、と納得でした。
原作になかった、「みお」とどろろがお互いの触れづらい話を核心には触れないようにしつつもお互い歩み寄ろうとするシーンなどは本当に女性作家さんならではの描写だったなと思います。


以上、平成版「どろろ」について語りたいだけ語り尽くすだけの記事でした。笑
現在、アニメの第4話まで最視聴しておりまして、これから最トラウマ回が待ち受けているのか…と思うと少々気が重いです…汗

とりあえず一クール目まで駆け抜けつつ、また改めて語りたいことが思い浮かびましたら何かしら記事を投稿させていただきたいと思います。
また、Twitterでの感想はこちら↓にまとめておりますのでもしよろしければ目を通していただければ幸いです。

**余談**

ただいまオタ部屋を少しずつ作っていっているところです。
グッズは流石に公式のものは在庫なしになっているのが殆どですので、某通販サイトにお世話になっております。

オフィシャルコンプリートワークスは一言で言うと「神」でした…!アニメージュの描き下ろしイラストもどれも素敵ですし公式インタビューや原画も大変充実してますし。
これ一冊でお腹いっぱいになること間違いなしです笑
(特に本を開いてすぐに目に入る、百鬼丸の見開き描き下ろしイラストにははっと目を引かれました)
だいぶ昔のアニメということで今はグッズを探しても在庫なしだったりなかなか手に入りづらいかと思いますが、こちらは公式サイトできちんと定価で購入できますので、全どろろファンの民にぜひとも手にとっていただきたいですね。

こちらはキャラクターデザインの浅田弘幸さんの画集。
ご本人のTwitterに当時投稿されていたイラストも掲載されています。
こちらも比較的今でも手に入りやすいと思いますので、興味のある方は是非ともご購入いただきたいです。

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