手と手の戦い

小学生のころ、自分の手と手が戦うところをよく眺めていた。左手はテクニシャンでスピードがあり、右手は少し不器用だけどパワーがある。戦いは主に朝のトイレで行われた。

私は小学生のころから便秘体質で、週に1,2回しかうんちが出なかった。そのことを憂慮した母親が「トイレで座ってればそのうちしたくなるから15分くらい座っておいで」と言ったのが戦いの起源だ。
トイレで15分間ただ座ることを余儀なくされた私は、手と手を戦わせることを思いついたのである。

左手と右手には、それぞれ人格がある。左手は私の味方で、右手は敵である。

言葉だとなかなか分かりにくいのだけど、中指が頭で、人差し指と薬指が両腕、親指と小指が両脚である。

攻撃パターンとして、それぞれパンチとキックを持っていて、地上150cmくらいまでならば自由に飛ぶことができる。
左手は上下左右のスピードで撹乱しながらパンチの連打で攻める。私と同じで、左手も右手も右利きなので、薬指でジャブ、人差し指でストレートを打つ。右手は少し劣勢になってもパワーファイターなので親指のキック一発で勝負を振り出しに戻すことができる。

私はいつも左手を応援する。彼は味方なので当然である。しかし、右手も強い。なにしろ、右手は私の本来の利き手で、最初は仲間でもあったのだ。

ご飯を食べるときは彼が箸を持ってくれたし、勉強するときは彼が鉛筆や消しゴムを持ってくれた。
だけど彼はいつの日からか傲慢になり、左手のことをいじめるようになった。パワーがあるのをいいことに、親指で執拗に左手をキックした。
最初は怯んでいた左手だったが、特訓の成果で徐々にテクニックがつき対等に戦えるようになった。そして、私は右手と縁を切り(?)、左手を応援するようになったのだ。

いつも左手と右手は拮抗したいい勝負をする。左手が「憎き右手め!えい!」と壁(トイレの壁)に押しつけて、パンチする。しかし、「ふふふ、そんなもんか」と右手は不敵に笑いながら親指パンチで左手を吹っ飛ばす。

"くそ!左手!頑張れ!"
と応援しているうちに15分が経つ。勝敗はなかなか決まらない。


#日記 #エッセイ

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【エッセイ】

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