ウィリー

とろけるような目で君が猫を見つめていたのはもうずいぶん昔のことだ。寒いね、とぼくに言いながら意識はすべて猫に注がれていた。ウィリーという名前のその猫は、人みたいな顔をしていた。外苑前の雑貨屋で買ってきたばかりの繊細で丸いピアノの曲を小さなボリュームで流しながら、君は猫を撫でている。ぼくははがしたCDのフィルムをくずかごに入れて、暖房の温度を一度上げて、加湿器の水を替えた。カーペットの上にぺたんと座った君は、猫みたいな顔をしている。

猫ひとりに人ふたり。
或いは、猫ふたりに人ひとり。


この音楽を聴いて詩を書きました


#詩 #Poet

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