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データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定〜コンセプト編

前回記事のつづきになりますが、「日本版DMO」形成・確立に係る手引き(第3版)にある、”1.日本版DMOとは「日本版DMOが必ず実施する基礎的な役割・機能(観光地域マーケティング・マネジメント)」”の下記について綴っていきます。

② データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略の策定(地方公共団体が策定する観光振興計画が存在する場合は、当該計画と戦略との整合性が留意され、当該計画の策定・見直し等への関与がなされること)

まず、コンセプトとは何かを考えたいと思います。私がコンセプトと聞いて思い浮かぶのは、こんな感じの方針だという考えだったりします。ネット上で検索しても「概念」という言葉が出てくるだけで、コンセプトってなんだろう?と思うわけです。過去にも本を読んで、コンセプトについて考えたことがあります。その本にはこんなことが書かれていました。

① 既成概念を壊す
② 新しい視点で価値観を作る
③ 全体をつらぬく骨格となる考え方とする
④ 活動の全ての指針とする
「引用:コンセプトメイキング 変化の時代の発想法」

既成概念を壊すというのはとても威勢のいい言葉ですよね。なぜ観光地づくりにコンセプトが必要になるのでしょうか?

■ 日本だからこそ、至る所での観光素材は同じ

インバウンドの視点から言えば、東京をはじめとする都市のイメージとその他は自然景観のあるイメージなのではないかと思っています。日本には四季があり、季節によって美しい景色が楽しめる。そのもの自体が武器であることは理解しています。
とはいえ、東京以外の観光地では「自然景観・温泉・田園風景」の観光素材は、至る所で存在しています。日本の中で人気になっている場所は、もちろんインバウンドでも当然行きたいと思う場所になっていると考えられます。DMOが作られる背景として既存の観光素材、つまりは既成概念を壊すようなものを求めているのです。その、考え方の基礎となるのが「コンセプト」を作ること。これは簡単に行えるようなものではないと思います。

■ 発想できないなら、データから発想

コンセプトは発想が重要でもあります。データを見比べながら思い浮かべて欲しいというのが観光庁のマニュアルに記載されていることだと思います。例になりますが、過去にこんな事業がありました。スマホの位置情報を活用して、自分たちでは気付いていないお客様が行っている場所を見つけよう!という内容でした。しかし、ヒートマップを見てもサンプル数が少ないこと、マップを見ても場所がどこなのかが分からずデータとして役に立つことはなかった。ということがありました。

■ データがあるからコンセプトが生まれるという幻想

そもそもデータが作れれば、コンセプトが作れる訳ではありません。また同時にサンプルが多ければ言い訳でもないように思えます。サンプルから生まれた大枠と、ひとつひとつのサンプルの中で既成概念では気付けない”気づき”を得ることができるか?が重要なのです。
この気づきを得る作業は、頭に湯気が出るくらい悩むことの覚悟が必要です。ブレーンストーミングやKJ法、ファシリテーション能力も求められるでしょう。こういったことが出来ないから、結局は外注してしまうのではないでしょうか?コンサルや広告代理店に依頼をして、突拍子もないものを求める上で出てきたアウトプットを継続することができなく一過性の物で終わってしまうなんてことはないでしょうか?

■ コンセプトは短期間でつくれるものではない

コンセプトで好例だと思っているのは、雪国観光圏の「真白き世界に隠された知恵と出会う」です。生活者にとっては雪は、雪掻きをはじめとする非常に"大変"なイメージがありますが、外から来る人たちからは非日常を感じることが出来ることであり、その雪と共に暮らす中で生まれた文化や伝統をコンテンツ化していこうというものです。確かにこういったもの自体が稼ぐものではありませんが、観光圏のそれぞれ地域や観光施設が考え方を理解した雪をテーマに商品造成を行うことでそれぞれが稼ぐことが出来るようになることを目指しているわけです。このコンセプトは雪国観光圏の代表である井口さんが仲間とともに悩みに悩んで何年もかけて作りつづけているものなのです。こちらの資料が参考になるので、気になる方は読んでみてください。

データは素材として必要なことは非常に理解出来ます。しかし、データがあればコンセプトが作れるわけではなく、作ってからコンセプトに沿ったコンテンツや啓蒙活動が必要になるのです。一緒に動いて悩んでくれるメンバーは今どれだけいますか?

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