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圧勝2企業

本の表紙の見出しに惹かれてこの本を買ったことがあります。
初版は2006年11月17日になってるので、買ったのは発売されてすぐでしょう。


月泉博著「ユニクロVSしまむら・専門店2大巨頭圧勝の方程式」
本の表紙を見て、ユニクロとしまむらが何故業績を伸ばすことができたのか、この本を読めばわかるかもしれない、そう思って買いました

本は読んでしばらくして手放しましたが、図書館に所蔵されていて、以前に読んで面白かったのを思い出し、借りてきました。

最初に読んで17年以上経つわけですが、過去より今回の方が面白く読めました。

2006年の時点でファースト・リテイリング(ユニクロ)の売上高が4488億円、しまむらの売上高は3629億円、この時点で両社とも巨大アパレル企業ですが、1970年代初頭は両社とも普通の小売店でした。

月泉氏はデーターと取材で得た関係者の証言と月泉氏の意見とを交互に展開しながら、何故どうやってユニクロとしまむらは30数年でここまで発展できたのか、わかりやすく解説してます。

なんとなく経済娯楽小説を読んでるような感じで、マクロや業界のデーター数字が出てきても、ややこしいという気はしません。

月泉氏はユニクロとしまむらの経営者の情熱と力量について、流通業界で両人より優れた人を知らないと称賛してます。

しかしユニクロとしまむらの経営のやり方は、正反対のやり方を貫いていると述べてます。

やり方が正反対の2社が両方とも大きく発展する、そういうこともあるわけですね。

百貨店、GMSは旧勢力、ユニクロとしまむらは新勢力。
しかしユニクロとしまむらの経営スタイルは違う。

ユニクロは完全SPA小売業。
しまむらは徹底したベンダー。

ユニクロはアイテム数を絞り込んで、クオリティの高い商品を大量に調達する。
しまむらの基本は「多品種、多アイテム、少量品揃え」、品切れしたら補充をしない代わりに、新商品を投入して売場鮮度を高める。

この本が発売された2006年ではユニクロは物流センターは持ってない。
しまむらはきわめて高度な自社物流網を2006年に築いていた。

ユニクロは積極的に新規出店しつつ、数字の上がらない店はどんどん閉鎖していく。
しまむらは出店のためには手間を惜しまず、少々のことではスクラップにしない。

他にも人材育成、品質の追求、商品開発などがわかりやすく解説されていて、ユニクロとしまむらを他のアパレル企業が真似できないのがわかる気がします。

「ユニクロVSしまむら」を17年前より、今回読んだ方が面白いと思った理由は、2006年から2024年になって、両社の業績がどう変わったかを比較できるからです。

本書で2003年10月16日にファーストリテイリングは、2010年にグループ売上高を1兆円にする構想を発表したと記述されてます。

そのころにユニクロが将来の売上高1兆円を発表したのは覚えてますが、日本の衣料品販売会社が1兆円の売上高なんて達成できる可能性は低いと思ってました。

ところが違いました、2013年に1兆円を超え、2018年に2兆円を超え、2024年8月期の予想は3兆5百億円となってます。

2023年8月期決算は売上高2兆7665億円、そのうち海外ユニクロ事業が1兆4371億円、他にグローバルブランド事業が1416億円となっていて海外で商品を1兆5千億円以上販売しているわけですね。

本書によるとユニクロの2006年の海外売上高は87億円、損失が15億円となってます。

海外の売上高87億円が17年経つと1兆5千億円以上になる、連結業績4484億円が17年経つと2兆7665億円になる、よく達成できたものだと思います。

「ユニクロVSしまむら」ではユニクロのクオリティに対する追求心が伝わっってきますが、追求して得られたクオリティが大勢の海外の人にも認められたということでしょう。

今後の業績でどんな数字を出すのか、成長をなお続けるなら、それに合わせて世界からの注目も高まりますね。

しまむらの17年はじっくり進んでると感じます

しまむらの2023年2月期の売上高は6161億円、2024年2月期の予想は6350億円となってます。

2006年の売上高が3629億円だったので、17年で約1.7倍になりました。

しまむらの2006年の経常利益は308億円、2023年2月期は543億円、24年2月期の予想は555億円です。

経常利益も17年で1.7倍以上とユニクロの急上昇した数字よりは低くなってしまいますが、1970年代初めは普通の小売店だったのですから、すごい成長です。

数字以外にも変化を感じる部分があります。

ユニクロは2006年では物流センターを持ってないと本書にありましたが、今では国内に10か所の物流センターを持ってます。

売上高3兆円に迫る企業としては、物流センターは必要というわけでしょう。

しまむらは2006年時点で過去10年で閉鎖した店はわずか7店舗と記述されてます。

最近の決算短信を見ると2023.2〜11では21店舗の閉鎖、2022.2〜2023.1では12店舗の閉鎖とコロナ禍の影響か、本書が出版された頃より閉店が増えてます。

コロナ禍では、しまむらでも極力閉店しないという姿勢を続けるのは困難だったように感じます。

2020年には中国の6店舗を閉店し、しまむらの海外店舗は台湾だけになりました。

ユニクロとしまむらの海外事業において大きな差ができたわけですが、しまむらはアジア市場で有望であるという見方を月泉氏は記述してます。

もししまむらが再びアジアに進出するなら、ユニクロのようにいかなくても、アジアの人々に支持されて売上高を伸ばしてほしいと思います。


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