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その時歴史が動いた(1995年5月31日・青島都知事が世界都市博覧会の中止を宣言)「このだだっ広いゴミの埋めたて地にビルを建てて、どこが...」こちら葛飾区亀有公園前派出所『開催決定!?未来博の巻』(週刊少年ジャンプ・1995年29号)

春秋(日本経済新聞) 2013年9月24日

「まさか」「なんとガンコな」。1995年5月31日青島幸男東京都知事が翌年開催予定の世界都市博覧会を中止すると宣言したとき、世の中はたいへんな驚きに包まれた。たしかに中止は知事選の公約だったが準備は着々と進み、もう撤退は無理とされていたのだ。

▼あれから18年。会場になるはずだった東京臨海部が久々に熱い。2020年五輪の施設が集中するからだ。1万7000人収容の選手村、バレーボールや水泳の競技場などが誕生し、五輪後は新しい街ができるという。マンション開発にも勢いがつきそうだから都市博のかたきを五輪で、とデベロッパーの意気も高かろう。

▼先週発表された基準地価をみると、東京の土地デフレは終息の気配だ。それに加えての湾岸開発熱なのだが、さて、ここはちょっと冷静になってもいい。五輪閉幕後はマンションとして売られる運びの巨大な選手村ひとつとっても、実際にそれだけの需要があるのかどうか危ぶむ声がある。人口減少は東京でも確実に進む。

▼そういう目で五輪計画を見わたせば、新しい施設がほんとうにこの規模で必要なのかどうか気になってくる。都は新設競技場などを五輪のあとも維持していくそうだ。それは将来世代が支えなければならない。あの都市博中止は「まさか」ではあったけれど、背景には、持続可能な未来を考えはじめた社会の流れがあった。

(省に昇格する前の自治庁の時代に)事務次官、内閣官房副長官、東京都副知事を経て1979年から1995年まで(4期16年)東京都知事を務めた(大阪で1970年に開催された万国博覧会では事務総長理事を務めた)鈴木俊一氏が言いだしっぺの一人であったと伝えられていますが、1981年に開催された神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア'81)のようなノリで、(今年の紅白歌合戦で司会を務める有吉弘行氏が相方と(猿岩石として)『進め!電波少年』の企画で香港からロンドンまで半年かけて(途中3回の航空機搭乗を除き)ヒッチハイクの旅を敢行した)1996年の春から秋にかけて、お台場(東京臨海副都心)で世界都市博覧会が開催される予定でした。

ところが、世界都市博覧会の中止を公約の一つに掲げて1995年春の選挙で都知事に就任した(マルチタレントであった)青島幸男氏が紆余曲折を経ながら、公約通り、中止を決定し1995年5月31日に発表しました。既に走り出していた列車のブレーキが土壇場で踏まれた結果、国内外の経済的な補償を含め、事後処理を担当した皆さんはたいへん苦労されたようですが、今日では中止の決定は英断であったと概ね評価されているようです。

青島俊作、都知事と同じ名前の青島です!
踊る大捜査線第1話 サラリーマン刑事と最初の難事件

さて、以前の記事『幹部の子は幹部 - 宗教2世・3世にもキャリアとノンキャリアが』の中でも警察組織の階層構造(ピラミッド)を描写した秀逸なコマを幾つか引用しましたが、こち亀を休むことなく40年も続けられた秋本治先生が紡ぎ出されたストーリーや主人公達が発した台詞にはメモをとって記憶にとどめたいものが沢山あります。また、時事ネタが巧みに織り込まれたエピソードも少なくありません。

このところSNS等でbuzzっている通り(1995年8月4日に発売された)コミック第94巻に収録されている「開催決定!?未来博の巻」(930話、本誌掲載は1995年7月3日に発売された週刊少年ジャンプ1995年29号)では両さんが架空の未来博'96をこき下ろして(最後は、いつものように破壊して)います。詳しくは電子書籍等をご参照ください。(本稿の末尾に該当箇所を部分的に引用しました。)尚、架空の未来博'96と1995年5月31日に中止された世界都市博覧会との関係は不明です。

袋叩きにされている大阪万博の言いだしっぺの一人は橋下徹弁護士だそうですが、お山の大将(関西では政権与党)である維新の会が下野しない限り、暴走し続ける(但しパビリオンの建設スピードは亀の歩みの)列車が止まることはなさそうです。政権与党として大阪へ巨大な公共事業を誘致する必要があったのでしょうが、この点については、自民党、他との違いはなさそうです。

(前略)

そもそも2度目の万博誘致は、地域政党「大阪維新の会」の創設メンバーである松井一郎氏と橋下徹氏が、1970年万博時代の「輝ける大阪」を再興させようと一計を巡らせたことに始まる。維新と蜜月関係にあった首相の安倍晋三氏もこれに共鳴し、万博誘致は国策となった。

もっとも現代における5年という歳月は、テクノロジーや価値観を根本から変えるのに十分な長さだ。新型コロナウイルスのパンデミック、誘致のライバルだったロシアのウクライナ侵略、世界的な物価高を経て、パリの地に満ちていた万博の高揚感は霧消した。安倍氏は銃撃事件で非業の死を遂げ、松井氏は政界を去った。

(後略)


1995年8月4日発売

こちら葛飾区亀有公園前派出所 第94巻

開催決定!?未来博の巻


(前略)

男性「未来が見えるという『未来博』だ!9,000億円かけた大イベントだよ

両津「このだだっ広いゴミの埋めたて地にビルを建ててどこが未来なんだ!

男性「あれがシンボルタワーだ」

両津「げっ 高崎の観音なみの大きさだな」

男性「200メートルある!未来博の主催理事の巨大立像だ 夜になると光を放つ計画らしい」

両津「不気味だ! だいたい『未来博』開催なんて聞いたことがない!」

男性「切符は500万枚売れていると言ってたぞ!

両津「企業同士で券を買い取って内輪でさわいで税金で経費をおとす気だろ! 客が来ても来なくてもいいんだよ! 企業の節税のお祭りみたいなもんだから! いまどき博覧会なんて行きたいか? 何時間も列をつくってまずい食事をしてよ!

男性「作る気をなくす事言うなよ!」

(中略)

新聞の見出し 未来博会場メチャクチャに!
       工事やりなおし!開催不安の声
       地盤沈下

中川「やり過ぎですよ 先輩! 会場がメチャクチャですよ」

秋本「それでも理事は懲りてないみたいよ」

両津・中川「えーーーっ なんだと!」

テレビの画面 未来博'96

理事「パビリオン自ら『人』という字を形成しています これこそ自然が織り成す未来のパビリオン!! ぜひ来年会場に来て見て下さい」

両津「さすがだ…転んでもただでは起きない…」

中川「先輩に似てますよ!」

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