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【鉄分不足】朝ドラで盛り上げた後、新幹線を四国に . . . 岡山-宇多津間はフル規格で、宇多津から先はミニ新幹線か在来線特急(乗換)で

※ 冒頭に付記していた新居浜市と西条市が推進する朝ドラ誘致運動新幹線の父 十河信二と妻キクの物語を朝ドラに!別の記事へ移動しました。

やればできる!四国新幹線 松前でイベント、ティモンディら機運盛り上げ(愛媛)

11/4(土)愛媛新聞ONLINE

四国新幹線の実現に向けた機運醸成を図るイベントが4日、愛媛県松前町筒井のエミフルMASAKIであった。ステージでは家族連れら約300人を前に、済美高野球部出身のお笑いコンビ「ティモンディ」のトークショーや、「新幹線の生みの親」と呼ばれる十河信二(新居浜市出身、元国鉄総裁)などを題材にしたミュージカルがあった。

ティモンディの前田裕太さんは、愛媛に多くの人が来てほしいと願い「新幹線があると魅力をたくさん伝えられる」と言及。高岸宏行さん(西条市出身)は「新幹線ができたら夢が広がる。皆さんの声を県庁や国に届けましょう。四国新幹線開通、皆さんなら『やればできる』」と持ちネタを交え、力強く呼びかけた。

オリジナルのミュージカルは松山アクターズスクールのメンバーが出演。十河の半生や四国新幹線が実現した未来を表現した。

西日本旅客鉄道株式会社に対する要望活動(2023年10月4日)
ミニ新幹線(山形新幹線と秋田新幹線)を含む新幹線路線図


JR西日本が北陸新幹線(福井-敦賀間)の開業日(2024年3月16日)を発表したのに合わせて、四国新幹線に関するニュース(北陸新幹線の大部分が開通した今こそ、4県が一致団結して四国新幹線の実現を目指す、等々)が流れています。

四国新幹線整備促進期成会 第5回東京大会
つなぐん【公式】四国の新幹線応援キャラクター

本州四国連絡橋の歴史を振り返れば、3ルートのうち、尾道・今治ルートは早い段階で自動車専用となりましたが、(JR西日本とJR四国の在来線が開通以来運行している)児島・坂出ルートに加えて、神戸・鳴門ルートについても地元の政財界が鉄道(新幹線)の併設を希望し粘り続けたそうです。

明治22年:⼤久保諶之丞(おおくぼ じんのじょう、⾹川県会議員)(尽誠学園の創始者である大久保彦三郎の実兄)が本州と四国の間に橋を建設する構想を提唱

昭和30年:宇⾼連絡船「紫雲丸」事故、死者168人

昭和34年:建設省が調査を開始

昭和45年:本州四国連絡橋公団設⽴

昭和63年4月:E30 瀬⼾中央⾃動⾞道(瀬⼾⼤橋)開通

平成10年4月:E28 神⼾淡路鳴⾨⾃動⾞道全線開通(明⽯海峡⼤橋供⽤)

平成11年5月:E76 ⻄瀬⼾⾃動⾞道(瀬⼾内しまなみ海道)開通

然しながら、1970年代に二度のオイルショックに見舞われ、国の財政が逼迫し、日本国有鉄道の財務状況も悪化する中、着工・開通当時(中央径間が)世界最長であった明石海峡大橋の建設が当時は技術的に困難であったこと等を理由として、神戸・鳴門ルートも自動車専用となりました。

新幹線については、本州四国連絡橋の全ルートが開通してから長い間、香川県・愛媛県・高知県と(高速バスに乗れば徳島駅から神戸(三宮駅)まで2時間~2時間半しかかからない)徳島県の意向は一致しませんでした。ところが、本年4月に後藤田正純前衆議院議員が徳島県知事に当選した後、岡山ルート支持を表明した結果、構想の実現に向けて弾みがつきました。

四国新幹線のルート案が岡山ルートで一本化
JR四国社長「実現へのハードルは下がる」

(瀬戸内海放送・2023/5/30)
紀淡海峡ルート

位置 和歌山市~兵庫県洲本市
海峡幅 約11km
最大水深 約120~150m
鉄道軸 S58鉄道建設・運輸施設整備支援機構が「地形・地質等に関する調査」を実施中
道路軸 H3から国土交通省が経済調査を実施
H5から国土交通省、和歌山県、兵庫県が気象・地質等の調査実施中
H6から国土交通省が紀淡連絡道路調査委員会(H8~同技術委員会)を設置
H9から国土交通省が社会経済効果検討委員会を設置
推進体制 H4紀淡海峡交流会議設立

整備新幹線(フル規格の新幹線)の建設(高松市を経由して松山市と徳島市を標準軌の線路で結び(四国新幹線の一部)、宇多津から高知市まで標準軌の線路を敷設し(四国横断新幹線の南側半分)、宇多津から瀬戸大橋を経由して岡山市に至る標準軌の線路を設置する(四国横断新幹線の北側半分))には、約10年前の甘い見積りでは、宇多津で松山方向、高知方向、高松・徳島方向へ分岐させる場合は(車両製造コストを除き)1兆7700億円2兆2800億円かかると推定されています。松山方向を(高知へ向かう途中の)阿波池田で分岐させる場合は(車両製造コストを除き)1兆6700億円2兆1500億円かかると推定されています。高知方向を(松山へ向かう途中の)伊予三島で分岐させる場合は(車両製造コストを除き)1兆5300億円1兆9600億円かかると推定されています。

以上の数字の中で最安値の1兆5300億円に車両製造コスト400億円を加えた1兆5700億円が様々な資料やパンフレットに引用されています。

新幹線基本計画の四国新幹線(大阪市~大分市)と四国横断新幹線(岡山市~高知市)

※ 地図を眺めていると、四国新幹線を『四国横断新幹線』、四国横断新幹線を『四国縦断新幹線』と呼びたくなりますが、新幹線基本計画では、北海道から九州まで細長い日本列島を横切る方向に建設される路線の名称に『横断』が使用される一方、日本列島に沿って建設される路線の名称に『縦断』は使用されません。

過去の事例や、円安と世界的なインフレの進行を考慮すれば、実際に建設にかかる費用は3~4兆円に膨らむかもしれません。(尚、確かにインフレは費用も便益も増大させると思いますが、政府が費用対効果を検討する際に、費用が増えると、辻褄があうよう、便益も増える仕組みになっています。)

費用対効果低下、JRの経営圧迫懸念 北海道新幹線の事業費増、便益向上が鍵
北海道新幹線札幌延伸、費用対効果0.9に低下 国交省が計画変更認可 事業費総額2兆3159億円に

また、瀬戸内海沿岸から高知県に至る経路や、海岸線に沿って走る在来線のように遠回りすることなく愛媛県の東部(東予地方)から県庁所在地(松山市)に至る(短絡)経路は、高速道路(高知道や松山道)と同様に、多数のトンネルと橋梁を山間部に建設する必要があるため、費用が嵩み時間もかかりそうです。

整備新幹線建設の考え方

・営業主体となるJRの判断を尊重(JRの同意)

・JR負担は、受益を限度とした貸付料のみであり、建設費の負担はない(第二の国鉄は作らない)(※ 受益とは、新幹線を整備する場合の収益と新幹線を整備しない場合の収益の差)

・並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意等、基本条件を確認のうえ着工

・費用対効果等を算定し着工を決定

・財源については、貸付料等収入の一部を充てた後、国が3分の2、地方公共団体が3分の1を負担

四国新幹線整備促進期成会の活動とこれからの課題

巨大な公共事業である整備新幹線の事業費の大半は国および沿線の自治体が負担します。(JR各社は新幹線を整備する場合の収益と新幹線を整備しない場合の収益の差を限度として負担します。)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が建設し保有する施設を使用する対価としてJR各社が貸付料(借受料)を開業から30年間に渡り支払い、残りの3分の2を国が、3分の1を沿線の自治体が負担します。分割民営化以来ずっと赤字続きのJR四国には全く余裕がないので、国と県と市町村の負担が大きくなりそうです。(JR四国の負担は札幌延伸後の北海道新幹線の貸付料と同じ程度に抑えられるかもしれませんが、現時点では、新函館北斗-札幌間の貸付料は未定です。)

実際、例えば、愛媛県と香川県(および瀬戸大橋線を経由して岡山県)を結ぶ予讃線(電化区間のうち、松山-高松・松山-岡山)では(TBSの報道情報番組「情熱ワイド!ブロードキャスター」(土曜・午後10時~)の名物コーナー「お父さんのためのワイドショー講座」で旧統一教会をめぐる話題が年間ベストテン第1位に輝いた)1992年にデビューした8000系電車が未だに主力です。製造から30年が経過した車両を約20年ぶりにリニューアルして使い続けざるを得ないほど、JR四国には金銭的な余裕がありません。

JR四国(電車)配置表
所属形式      編成      両数
8000系 編成表 L編成・S編成 45両
8600系 編成表 E編成     17両

木の風合いふんだん JR四国「しおかぜ」「いしづち」 今秋にも室内改装へ

2004年6月29日 愛媛新聞 朝刊

癒やしの国四国をイメージ-JR四国は二十八日、松山-岡山・高松の特急「しおかぜ」「いしづち」で使用している8000系車両の室内リニューアル概要を発表した。従来の機能性重視から方針転換、座席やデッキに木材や木目地を使い、四国らしさを前面に押し出したのが特徴。早ければ今秋にも予讃線にお目見えする。

8000系車両は、一九九三年三月に導入。一編成八両(しおかぜ五両、いしづち三両)で運転しており、現在六編成・四十八両ある。このうち本年度は二編成をリニューアルする。

リニューアルは、八両中、指定席車両となる四両を中心に実施。指定席座席を従来よりも横幅を広く、軟らかくすることで乗り心地を向上させるほか、各車両の最前部と最後部の計八座席にパソコン用の電源とテーブルを新設。座席や床、デッキに木材や木目地を使用する。

また、分煙を徹底するため、いしづちの自由席車両一両に喫煙ルームを新設し、指定席車両はすべて禁煙に。しおかぜは自由席車両一両を喫煙車両とする。このほか、五カ所あるトイレのうち、二カ所を洋式にする。

二〇〇六年度に全編成のリニューアルが完了する予定で、総投資額は約七億円を見込んでいる。

車両新調の特急しおかぜ・いしづち「8000系」、快適性上げ内装充実 JR四国が発表 12月にも運行開始

2023年5月22日 愛媛新聞

JR四国は22日、新調を予定している松山-岡山・高松間の特急しおかぜ・いしづち8000系車両の概要を発表した。座席を交換して快適性を上げ、新たに車椅子のためのフリースペースを設けるなどして内装を充実させる。外観はオレンジを基調とした8600系特急と同じ配色に衣替えする。早ければ今年12月ごろから新調車両の運行を始める。

座席数は現状のままで、車内照明を発光ダイオード(LED)に変更。車内でパソコンなどが使えるよう、自由席では壁側に、指定席とグリーン席では各席にコンセントを設ける。グリーン席は電動リクライニングの仕様で、足置きを備える。車椅子スペースは5号車に設け、最大8台まで対応できるようにする。全てのトイレを洋式化する。

計画では、いしづちが12月ごろ、しおかぜが2024年8月ごろ、1編成ずつ運行を始める。今後は車両の定期検査ごとに改修を進め、27年度までにいしづち5編成、しおかぜ6編成を改修し、全ての車両の新調を終える予定。(高橋宏幸)

このように莫大な費用をかけても、四国各県の県庁所在地から新大阪駅まで1時間半前後(岡山駅から新大阪駅までは平均50分、最短44分)かかるそうです。(但し、四国アイランドの島民(四国4県の県民)を説得するために、リニア中央新幹線で新大阪駅と品川駅が(最短)67分で結ばれた暁には、四国各県の県庁所在地から東京までの所要時間が3時間を切る(航空路線に対抗できる)と喧伝されています。)

リニア中央新幹線の品川-名古屋間の工事が遅れ、名古屋-新大阪間の工事は始まってもいない現状では、四国各県の県庁所在地から新大阪駅まで1時間半前後で到達できるようになっても、東京へ向かう旅客の大半は空路を選択すると考えられます。

(地元負担を含め)四国で2兆円~3兆円~4兆円も費やすのであれば、毎年、国防予算が数兆円上積みされる中、若年層の大都市圏への流出と永続的な人口減少に対処するためにやるべきことは新幹線の建設以外にも沢山ありそうです。数兆円の一部を、例えば、結婚・子育て支援に回せば、四国4県の子供達が大学を卒業するまでにかかる授業料や医療費を無料化するくらいは朝飯前です。

フル規格の新幹線に固執するのであれば、岡山-宇多津間(約10年前の甘い見積りでは(車両製造コストを除き)2300億円2800億円かかると推定されています。)のみ建設し、そこから先は山形新幹線(福島-山形の所要時間は1時間余り)や秋田新幹線(盛岡-秋田の所要時間は約1時間半)のようにミニ新幹線を(三線軌条化、あるいは、旧い狭小なトンネルを通過する際に線路中心が変わらないよう四線軌条化した既存路線や、急カーブが続く既存路線の線形改良や複線化のために新たに建設する標準軌の路線を経由して)高松駅、徳島駅(高徳線を電化する必要あり)、高知駅(土讃線(琴平駅以南)を電化する必要あり)、松山駅へ乗り入れれば、建設費用を大幅に(山形新幹線や秋田新幹線の事例によれば、おそらく一桁)圧縮することができそうです。

その際、四国新幹線の建設を早期に実現するためには、岡山駅以南に新幹線を延伸しても大きなメリットはない沿線の自治体(岡山県および岡山市、倉敷市、玉野市、他)に費用の負担を求めるべきではないかもしれません。また、並行在来線の取り扱いも極めてデリケートな問題です。

尚、この記事の主題から逸れますが、約660億円と見積もられている地元自治体の負担がなければ、西九州新幹線の未合意区間(未開通区間・未着工区間)に対する佐賀県の反対も少しは沈静化するかもしれません。(建設費用の地元負担とは別に、並行在来線の問題があります。)

武雄温泉駅から東側(手前)が途切れている西九州新幹線の高架橋
9月23日、佐賀県武雄市(西日本新聞 2023/9/25
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(前略)

実は新幹線の計画当初から佐賀県の腰は重かった。福岡市から遠い長崎県にとっては悲願だったが、佐賀県には多額の費用を払うほどのメリットが見いだせなかったためだ。むしろ、在来線の利便性低下を危惧し、妥協案として在来線の軌道がそのまま使えるFGT(フリーゲージトレイン)導入を前提に新鳥栖-武雄温泉間の新幹線整備を認めた経緯がある。

(後略)

(前略)

国交省は協議のなかで「高速ネットワークを結ぶことは国益の観点からも、佐賀県の皆さんの観点からも非常に重要だと信じている」とするなど、新幹線網の完成にこだわっている。

これに対し山下氏は「国の視点で見れば、つながることは極めて合理的で一番いいと思うかもしれない。だが、佐賀県から見るとそこは違う。効果は小さいのに、財政負担があり、県内の鉄道網も壊れるかもしれない。立場と主張が違うなかで歩み寄りがあるのか。いま国が言っているような計画での実現性はもうおよそないと思う」と、折り合わない。

(後略)


四国地域における鉄道等の活性化について
四国地域における鉄道等の活性化について

但し、高松以東、多度津以西、多度津以南は単線なので、三線軌条化・四線軌条化(および電化)してミニ新幹線を走らせても、最高速度、平均速度、表定速度、所要時間、他はおそらく現状と大差ありません。



北海道新聞(2023年5月3日)
E3系(秋田新幹線では引退、山形新幹線では現役)とN700系 - 車体断面の比較
北海道新幹線・共用走行に伴う設備

さて、(愛称)瀬戸大橋線を構成する本四備讃線(茶屋町駅-宇多津駅)の児島駅以南はJR四国の管轄です。(JR西日本が管轄する児島駅はJR西日本とJR四国の会社境界駅です。上り旅客列車も下り旅客列車も児島駅で乗務員が交代しますが、児島駅を通過する(JR貨物が運行する)上り貨物列車と下り貨物列車は児島駅で乗務員が交代することはありません。)

新幹線が児島駅に停車するにしても、児島駅を通過するにしても、JR西日本の乗務員が宇多津まで越境乗務すれば、(宇多津〜坂出周辺や多度津に車両基地や司令センターを建設する必要はあるかもしれませんが)四国新幹線のフル規格の区間の運行に携わる乗務員をJR四国が養成する手間は省けそうです。(JR西日本の乗務員が宇多津まで越境乗務する場合にもJR四国が(車両の取得・維持・運行を含む)費用を負担すれば、児島-宇多津間の運賃収入をJR四国に帰属させることはできると思います。)

三線軌条
四線軌条

構造がやや複雑な三線軌条や四線軌条は、保線に手間も時間もかかります。また、夜間工事だけで、運用中の狭軌の線路を三線軌条や四線軌条に変更したり、既に電化されている区間において電圧を変更(直流1500ボルト→交流20000ボルト)することは不可能です。(フリーゲージトレイン(1次・2次・3次試験車両)と同様に車両が直流1500ボルトに対応すれば、電圧を変更する必要はなくなります。)工事中は在来線を運休する必要があり、路線バスや高速バスによる代替輸送を提供しても、旅客離れが加速するリスクは高く、JR四国の経営状況を悪化させるかもしれません。(山形新幹線の工事期間中は仙山線を利用して東京-山形間の代替輸送が、秋田新幹線の工事期間中は北上線を利用して東京-秋田間の代替輸送が行なわれました。)

(前略)

国鉄時代から進めていた電化計画だが、それを阻んでいたのはトンネル工事だったという。

電車は、パンタグラフから架線に流れる電気を受け取り、モーターを回転させて走行する。ところが当時のトンネルの高さは蒸気機関車と気動車が通過することを想定されていた。

極小のトンネルが並ぶ予讃線において架線工事は難航したという。

(中略)

さらに架線を取り付けるためのスペースが確保できないほど小さいトンネルもあった。だからといって、新たなトンネルを建設するほどJR四国に潤沢な資金があるわけではない。

大正時代の規格で作られた香川と愛媛の県境にある長さ150メートルほどの「鳥越トンネル」もそのひとつだ。国鉄OBで当時西条保線区で現場監督をしていた近藤清幸さん(74歳)はこう振り返る。

「盤下げっていうてね、トンネルの下を掘りさげるのよ。狭い枕木の間をコツコツとちょっとずつ人の手で掘りさげていく。枕木の高さが14センチで、その倍にあたる30センチほどを掘りさげる。列車が通過する合間しか作業できないからね、通信指令とこまめに連絡を取ってやっていくしかない。一晩に長くて5メートルほどしかすすまなかった。もうだいぶ忘れてしもうたけどな、夜通し作業したという記憶がある。」

平成2年1月から平成4年7月までの2年6か月間。施工距離にして2635メートル。7つのトンネルで地盤を掘りさげる作業を行ったという。

作業中に通過する列車は、時速15キロまで減速し、それでもダイヤに遅れが出ないように運転区とも綿密に連絡を取り合った。そんな困難な作業をしながら、電化工事の期間中に事故も遅延も一度もなかったことが誇らしいと近藤さんは話してくれた。

電化工事にあたって、地域への細やかな配慮をしていたこともわかった。

新居浜や西条には、高さ5メートルほどの太鼓台やだんじりが踏切を渡る。年に一度の地域の祭りが滞りなくこれまでと同じように楽しめるよう、架線が邪魔にならない高さまで上げて設置したそうだ。今でも祭りの季節には、特急列車の中から太鼓台やだんじりを見ることができる。

何とも心温まるエピソードではないか。

(後略)


ミニ新幹線誕生物語(交通ブックス 113)成山堂書店(2003年)

(山形新幹線や秋田新幹線と同様に電圧を変更した場合、交流20000ボルトに対応する普通列車等の新規製造も含めて)ミニ新幹線の導入にも多額の費用がかかるので、財務省が首を縦に振らなければ、宇多津(あるいは坂出)に新幹線のターミナル駅を建設して、在来線特急から新幹線へ、新幹線から在来線特急へ乗り換える方がミニ新幹線よりコストパフォーマンスが高そうです。(宇多津-坂出間の営業キロは4.6kmしかなく、宇多津は松山・高知に、坂出は高松・徳島に近くなりますが、宇多津駅周辺には新幹線駅舎等の用地が数十年前に確保されています。)

通過しない駅に「レ」 瀬戸大橋近くの「三角線」に込めた夢

通過しない駅に「レ」 瀬戸大橋近くの「三角線」に込めた夢

福家司

2022年9月25日

JR坂出駅(香川県坂出市)を出発した岡山行きの快速マリンライナーは、右に大きくカーブして瀬戸大橋に向かって進んでいく。

次の停車駅は児島(岡山県倉敷市)。宇多津駅(香川県宇多津町)を経由することはないように見える。それなのに、時刻表をめくると通過を示す記号「レ」が付いている。

なぜなのか。JR四国輸送課の光藤実さんに解説してもらった。

「このルートは本四備讃線の短絡線で、(線路域が)宇多津駅の構内とみなされているからです」

短絡、つまり高松から岡山への「近道」にするために作られたルートだ。通称「東ルート」と呼ばれるこの短絡線と、岡山から四国に入る本四備讃線の「西ルート」、そして予讃線の3本の高架線があり、瀬戸大橋の手前の四国側で三角形を作っている。

JR四国によると、すべて宇多津駅構内というこの三角線には、快速マリンライナーの他、特急「しおかぜ」(愛媛方面)や特急「南風」(高知方面)など1日に284本の列車が行き交う。全列車の約3割を占めるという。

時刻表の「レ」の謎は解けた。ホームから遠く離れた線路が駅と言われても、にわかには理解しがたいが……。

宇多津駅の移転と発展

ところで、この宇多津駅、今では本州からの特急の大半が停車する「四国の玄関口」だが、かつては特急も急行も停車しない、駅前のクスノキがシンボルの素朴な木造駅だった。

それが瀬戸大橋の開通前年の1987年、町の土地区画整理事業で南西約1キロ先の塩田跡の土地に移転し、近代的な高架駅として生まれ変わった。2002年からは特急列車の分割・併合も宇多津駅で実施されている。

周辺も栄えた。塩田だった駅の北側には、マンションや大型店舗が立ち並ぶ。

「三角線」が見据える新幹線

三角線の近くにはもう一つ、大きな「夢」が込められている。「西ルート」から西側の線路沿いに宇多津駅前を経て丸亀市まで続く帯状の土地がある。本州四国連絡橋公団(本四公団)が1992年に町から購入した幅約30~50メートル、長さ約2キロにわたる約7万7千平方メートル。これは四国新幹線の実現を見越したもので、新幹線ホームなどの用地として確保しているという。現在は独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が所有する。

JR四国が機構に固定資産税相当額を払って用地管理を担い、自社や関連会社が駐車場やゴルフ練習場、太陽光発電所といった施設を運営する。スーパーやドラッグストアなどを運営する民間企業にも賃貸している。事業開発本部の橋口幸典さんは「新幹線の計画が具体化すれば、活用しやすいよう、定期借地契約となっている」と明かす。

取材を終えた記者は、用地の端にあるJR四国グループの讃岐うどん店「めりけんや かけはし店」に入った。麺をすすりながら三角線を行き交う列車を眺める。

いつの日か、宇多津駅が新幹線駅として、2度目の飛躍を遂げる日が来るかもしれない。」瀬戸大橋のたもとで、思いをめぐらせた。

(福家司)

8600系
8000系
2700系
2600系
2000系
5000系(マリンライナー)

現在、岡山-宇多津間(45.9km)は在来線特急(例えば、しおかぜ)で(児島駅での1分程度の停車時間を含めて)32分(平均時速86km)かかります。(次の通り、区間によって最高速度は異なります。)

  岡山駅  - 茶屋町駅 100km/h
 (宇野線  - 単線区間あり、一部は複線)
  茶屋町駅 - 児島駅  130km/h(複線)
  児島駅  - 宇多津駅 120km/h(複線)

※ 新幹線を建設するより先に、単線区間が残る岡山-茶屋町間の複線化を完了するべきではないかという意見も多いようです。

(児島駅を除いて)中間駅も踏切もない高架を建設して標準軌の線路を敷設すれば、宇多津デルタ線や瀬戸大橋や岡山駅手前のカーブを低速で走行しても、岡山-宇多津間を15分(平均時速184km)以内で駆け抜けることができそうです。

岡山駅 構内図

四国側のターミナル駅で新幹線と在来線との間をスムーズに乗り換えることができるように駅舎を設計すれば、これまでのように岡山駅でバタバタする必要がなくなり、四国4県から(伊丹空港ではなく)新大阪駅へ向かう旅客も、本州方面から四国4県へ向かう旅客も、増えるのではないでしょうか。


但し、下りの山陽新幹線で広島、山口、福岡、他へ向かう旅客は、これまでと同様に、岡山駅で乗り換える必要があります。

宇多津デルタ線(川崎鶴見鉄道録

尚、三線軌条化・四線軌条化によって狭軌の線路を維持しながらミニ新幹線を導入する場合はそれほど問題になりませんが、フル規格の新幹線を建設する場合は、(これまでは、特別な事情で廃線となった信越本線の横川~軽井沢間を除き、並行して走る在来線は第三セクター鉄道会社に引き継がれてきましたが、今後は)並行して走る在来線が様々な(金銭的な)理由で廃線となる可能性にも留意する必要があります。

例えば、しばしば報道されているように、北海道新幹線の函館(新函館北斗駅)-札幌間が開業すると(二酸化炭素排出量の削減に資する)貨物列車が北海道(札幌-本州間)では消滅するかもしれません。

無理と無駄は「あたり前田のクラッカー」の公共事業ですが

4県合わせても人口が400万人に満たない四国に数兆円の投資(全線フル規格の新幹線)を行っても、不動産業者と土木建設業者と建材業者が儲かるだけで、投資を回収することは不可能です。

数千億円の投資(岡山-宇多津間のみフル規格の新幹線を建設し、宇野線の完全複線化を大幅に上回る速達化をはかる)で数兆円の投資(全線フル規格の新幹線を建設する)と同様の経済波及効果を狙う方が賢明ではないでしょうか。

四国4県の経済界は安易に譲歩するつもりはなさそうですが、標準軌の線路が瀬戸内海を越えて宇多津まで続いていれば、日本が高齢化と少子化を脱する頃には、欧米各国(特に米国)のように、一握りの巨大都市に集中しない国土の発展を描き、需要に応じて、宇多津から先へ延伸する機会は訪れると思います。政治家の先生方と地方公務員の皆さんの英断に期待します。

尚、フル規格の新幹線の建設費用を削減するために大成建設、他、が「単線新幹線」(岡山ー宇多津間は複線新幹線)を提案していますが、建設費用は半分では済まないようです。また、単線新幹線は(特急列車も普通列車も同じ線路を走行する)在来線のように過密な状況にはならないので心配する必要はないかもしれませんが、単線の下では、山陽新幹線で発生したダイヤの乱れを四国内で短時間に吸収し解消することがやや難しくなる一方、四国内で発生したダイヤの乱れが山陽新幹線へ伝播し易くなるかもしれません。何れにしても、前例がないので、提案の内容を精査する必要がありそうです。




駆動装置が車軸の中央に位置していれば、振動が抑えられ、摩耗も減るのでは...

Gauge Change Train (the first generation)

Constructed 1998
Number built 3 vehicles
Number preserved 1 vehicle
Number scrapped 2 vehicles
Formation 3-car set

Specifications

Car length 23,075 mm (end cars)
20,500 mm (intermediate car)
Width 2,945 mm
Maximum speed 300 km/h (shinkansen lines)
130 km/h (narrow gauge lines)
Traction system RMT17 traction motors (x2 per axle)
Power output 190 kW per axle (25000 V AC)
Electric system(s) 25000 V AC (50/60), 20000 V AC (50/60), 1500 V DC, Overhead wire
Current collector(s) Pantograph
Track gauge 1,067 mm (3 ft 6 in) – 1,435 mm (4 ft 8+1⁄2 in)

Gauge Change Train (the second generation)

Constructed 2006
Scrapped 2014
Number built 3 vehicles
Number preserved 1 vehicle
Number scrapped 2 vehicles
Formation 3-car set
Capacity 36

Specifications

Car length 23,075 mm (end cars)
20,500 mm (intermediate car)
Width 2,945 mm
Height 4,030 mm
Maximum speed 270 km/h (shinkansen lines)
130 km/h (narrow gauge lines)
Axle load max 12.5 t
Electric system(s) 25000 V AC (60 Hz), 20000 V AC (60 Hz), 1500 V DC, Overhead wire
Current collector(s) Pantograph
Track gauge 1,067 mm (3 ft 6 in) – 1,435 mm (4 ft 8+1⁄2 in)

Gauge Change Train (the third generation)

Constructed 2014
Number built 4 vehicles
Formation 4-car set

Specifications

Car length 23,075 mm (end cars)
20,500 mm (intermediate cars)
Width 2,945 mm
Height 3,650 mm
Maximum speed 270 km/h (shinkansen lines)
130 km/h (narrow gauge lines)
Electric system(s) 25000 V AC (60 Hz), 20000 V AC (60 Hz), 1500 V DC, Overhead wire
Current collector(s) Pantograph
Track gauge 1,067 mm (3 ft 6 in) – 1,435 mm (4 ft 8+1⁄2 in)


モーターは台車に搭載されているようです。
モーターは台車に搭載されているようです。
モーターは台車に搭載されているようです。

N700Sの台車(モーターは台車に搭載)
新幹線N700S、試験車と量産車の「超」微妙な違い(東洋経済オンライン、2020年3月4日)

TALGO および CAF(BRAVA)で使用可能な軌間変換装置


電気機関車はモーターが台車に搭載されているようです。

電気機関車の台車

客車の台車(連接台車)


CAF社のBRAVA(モーターを車体に装架)
CAF社のBRAVA(モーターを車体に装架)
想像図(検証が必要)
想像図(検証が必要)

客車のみ、動力車に比べ構造が簡単
(Montreux Oberland Bernois Railway - MOB)
(Bern Lötschberg Simplon Bahn - BLS)



(前略)

一次試験車よりも台車を軽量化したものの、それでも在来線の曲線区間で80km/hしか出せないなど、性能不足は明らかでした。最高速度270km/hを達成し、さらに台車換装も行ったのですが、車軸のぶれが発生する問題もあり、レール側をロングレールにするなどの対策も進めました。

その結果、在来線でも85~130km/hで曲線走行できるようになり、フリーゲージトレインの技術的な目途は立ったと思われました。

2014(平成26)年、営業運転を見据えた三次試験車両が登場します。この車両では、1両辺り2tの軽量化が図られ、通常の新幹線並みの重量となりました。しかし当初の試験結果は良好でしたが、一部の車軸に問題が発生。改良され車軸の摩耗は1/100まで軽減されたものの、2016(平成28)年になっても問題が完全には解消されなかったため、国土交通省は「西九州新幹線にフリーゲージトレインは間に合わない」との見解を示しました。

また、運行側のJR九州も「車両関連費が通常車両の2倍かかり、年間50億円の負担増では採算性に問題がある」として、フリーゲージトレインの受け入れを拒否しました。ここに、長崎-博多間の新在直通列車の計画は潰えたのでした。

もし実用化されたなら、北陸新幹線の敦賀開業時に、大阪方面から金沢方面への直通電車としての活用も検討されていましたが、2018(平成30)年にそれも断念されました。フリーゲージトレインには、「軌間変更に5分かかる(5分あれば乗り換えられる)」「新幹線区間で270km/hしか出せず山陽新幹線に乗り入れられない」「台車の摩耗が激しく、メンテナンスコストが通常の2倍」といった大きな問題が残っていたのです。

(後略)



整備新幹線、資材・人件費高に直面 延伸へ国民負担増も

2022年12月22日

政府が進める整備新幹線の延伸計画が資材価格の高騰や人件費の上昇に直面している。北海道新幹線は事業費が当初想定の4割増に膨らみ、2030年度末の開業は不透明になってきた。北陸新幹線も工事の着工遅れやコスト増が避けられない。財源の確保や採算の見通しは厳しく、国民負担の増加も懸念される。

国土交通省は12月上旬、北海道新幹線の新函館北斗-札幌間の延伸工事で事業費が想定を約6450億円上回り、約2.3兆円になるとの試算を公表した。トンネルの一部で岩盤を掘り進めず、工事が4年ほど遅れていることも判明。30年度末の開業を見越して大型再開発に沸く地元に不安が広がる。

経費は鋼材などの資材価格と人件費の上昇で約2050億円膨らむ。トンネル工事で生じる残土の対策費などが約2700億円。試算では資材と人件費が年2%上昇すると想定したが、事業費がさらに増える可能性もある。

23年度当初の着工をめざしてきた北陸新幹線の敦賀-新大阪間の延伸にも不安材料が目立つ。国交省は14日、与党の委員会で国の認可に必要な環境影響評価(アセスメント)の遅れを理由に、着工時期がずれ込むと説明した。

24年春に先行して開業する金沢-敦賀間は追加工事などが原因で、事業費が約2600億円上振れした経緯がある。敦賀-新大阪間の事業費は約2.1兆円と見込まれる。資材高が続けば、一段の増額を迫られそうだ。

整備新幹線は鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設主体となる。財源はJR各社が同機構に払う線路使用料(貸付料)を充て、残りを国が3分の2、地方自治体が3分の1の割合で分担する。

費用が増えれば、税金に加え、新幹線の利用者が負担する運賃の引き上げにつながる恐れもある。

沿線自治体は一枚岩ではない。9月に武雄温泉-長崎間が開業した西九州新幹線は、新鳥栖-武雄温泉間の着工のメドが立たない。高速運行に必要なフル規格での整備に佐賀県が反対し、長崎県との協議も膠着状態にある。

新型コロナウイルス禍で交通のあり方も変化した。16年に先行開業した北海道新幹線の新青森-新函館北斗間の営業赤字は21年度に148億円に上った。九州の武雄温泉-長崎間の開業1カ月間の平均乗車率は33%にとどまる。事業環境が厳しさを増すなか、整備の必要性についてより丁寧な説明が欠かせない。

整備新幹線とは

「全国新幹線鉄道整備法」に基づき整備を進める5つの新幹線をいう。北海道新幹線(青森-札幌間)、東北新幹線(盛岡-青森間)、北陸新幹線(東京-大阪間)、九州新幹線(福岡-鹿児島間、福岡-長崎間)がある。鉄道建設・運輸施設整備支援機構がインフラを建設・保有し、営業主体のJR各社に貸しつける「上下分離方式」で運用している。 整備に当たっては

① 安定的な財源見通しの確保
② 収支採算性
③ 投資効果
④ 営業主体であるJRの同意
⑤ 並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意

が「5大条件」となる

事業費1940億円で新幹線整備 令和5年度政府予算案決まる

2022.12.27

2022年12月23日に閣議決定された国の令和5年度政府予算案では、国土交通省鉄道局が扱う整備新幹線関係で令和4年度(2400億円)より額で460億円、率で19.2%少ない1940億円の事業費が認められた。このうち国の予算に当たる国費は、令和4年度と同額の803億7200万円。

建設中の3線区のうち、北海道新幹線新函館北斗-札幌間は2022年12月、資材価格高騰などを受けて6445億円の事業費増加が明らかになった。令和5年度の事業費は1700億円で、前年度の1350億円に比べ350億円増額された。

このほかの線区の事業費は北陸新幹線金沢-敦賀間が140億円(令和4年度930億円)、西九州新幹線(国の事業名は九州新幹線)武雄温泉-長崎間が100億円(同120億円)。建設工事がヤマ場を越えた北陸新幹線と、2022年9月に開業した西九州新幹線が減額。予算額に見るかぎり、整備新幹線の柱は完全に北海道新幹線に移った。

このほかの新幹線関係では、未着工の北陸新幹線敦賀-新大阪間で、施工上の課題解決のための調査費を、新しく「北陸新幹線事業推進調査」の名目で12億円計上。国交省は、本来は着工後に予定していた京都駅や新大阪駅の構造検討などを、前倒しして実施する方針だ。

費用対効果低下、JRの経営圧迫懸念 北海道新幹線の事業費増、便益向上が鍵

2023年3月31日

国土交通省が31日公表した北海道新幹線新函館北斗-札幌間の費用対効果は、事業費の大幅増を受けて「0・9」と、投資に見合う目安の「1」を下回った。国交省は事業「継続」と判断したものの、現状のままでは国民の理解を得にくいだけでなく、運営主体のJR北海道の経営をさらに圧迫しかねない。利用者増など効果を押し上げる取り組みが求められる。

国交省によると、費用対効果は新幹線が50年間走ると想定し、完成後の利用者増や移動時間の短縮効果、二酸化炭素の削減効果などを金額に換算した便益を費用で割って算出する。

2012年、18年に続いて3回目の算出となる今回、整備新幹線着工の条件としている「1」を初めて下回った。ただ、国交省鉄道局は「積雪時でも安定的に輸送できる点や観光の活性化など、金額に換えられない効果もある」として、事業の継続を決めた。

背景には近年、新幹線着工後の再評価で費用対効果が「1」を下回るケースが、全国で相次いでいることもある。19年公表の西九州新幹線武雄温泉(佐賀県)-長崎間は「0・5」、21年公表の北陸新幹線金沢-敦賀(福井県)間は「0・8」だった。

16年に開業した新青森-新函館北斗間については、利用者が着工前の予測を大幅に下回り、21年時点の費用対効果は「0・5」にとどまる。金額に換えられない効果が期待できるとしても、新幹線で年間100億円超の赤字が発生しているJR北海道にとっては重荷となっている。

札幌延伸が予定されている30年度末に向けて費用対効果を改善させていくには、便益の増加が欠かせない。しかし、31日に公表された新函館北斗-札幌間の輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)の予測は1万6900人と、18年の1万7800人より減少するなど見通しは厳しいのが現状だ。今回の費用対効果の公表を受け、財務省内で浮上している工期延長論が強まる可能性もある。

北大公共政策大学院の石井吉春客員教授(地域政策論)は「資材価格の高騰など急激な環境の変化で、費用対効果が『1』を下回るのはやむを得ない面もある」と理解を示しつつ「今後は沿線地域の魅力を高めて利用促進に向け、便益の部分を上げていくしかない」と指摘する。(本庄彩芳)

北海道新幹線札幌延伸、費用対効果0・9に低下 国交省が計画変更認可 事業費総額2兆3159億円に

2023年3月31日

国土交通省は31日、北海道新幹線新函館北斗-札幌間の工事実施計画の変更を認可した。これまでの事業費の認可額1兆2386億円に、資材価格の高騰などに伴う増額分6445億円などを追加して2兆3159億円に変更。併せて公表した同区間の費用対効果は事業費増の影響で「0・9」と、2018年時点の「1・1」から低下した。投資に見合う目安とする「1」を下回ったが、交流人口拡大など金額に換算できない効果もあるとして、事業は「継続」とした。

整備新幹線の事業費の変更は国の認可が必要。昨年12月、トンネル工事の難航や資材価格、人件費の高騰で当初計画より4割増加することが明らかになり、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が変更を申請していた。増額分のほか、まだ申請していなかったレールなどの設備工事費4328億円も追加。札幌駅と新八雲駅(仮称)の構造変更も認められた。

一方、新幹線が50年間走ると想定して試算する費用対効果は、事業再評価の指標として5年に1回、もしくは事業費が増加したときに公表しており、着工前の12年と前回の18年はいずれも効果が費用を上回る「1・1」だった。

今回、新幹線による移動時間の短縮効果や利用者増などを金額に換算した効果の「便益」についても再計算の結果、18年より増えたが、建設費の大幅増に伴い、初めて費用が効果を上回った。国交省鉄道局は「総合的に判断し、事業の継続を決めた」としている。(本庄彩芳)


(前略)

貨物調整金とは、国の外郭団体「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)からJR貨物を通して並行在来線の運営会社に支払われる助成金だ。

国鉄分割民営化の際、経営基盤が脆弱なJR貨物は、JR旅客各社の線路を走る際、アボイダブルコスト(回避可能経費)ルールという制度によって、格安の線路使用料で走行することが認められた。

しかし、これが並行在来線にも適用され、線路使用料が格安のままだと、過疎地域で並行在来線を営む運営会社の経営が立ちゆかない。だからといって、正規の線路使用料をJR貨物に求めると、今度はJR貨物の経営が立ちゆかなくなる。

そこで2002年の政府・与党の申し合わせで、正規の線路使用料との差額を鉄道・運輸機構からの助成金で埋めることになった。この助成金が貨物調整金だ。

並行在来線を運営する第三セクターは現在、全国で8社ある(「ハピライン」は2024年春開業)。

8社に支払われている線路使用料は年間130億円前後で、一部観光列車をのぞき、ほぼすべてJR貨物から支払われている。その線路使用料のうち、貨物調整金が占める割合は9割以上に上る。

貨物調整金の財源は、整備新幹線のJRへの貸付料や、鉄道・運輸機構の特例業務勘定(JR株の売却益、分割払いされる新幹線の譲渡代金など)からの繰入金で賄われる(特例業務勘定からの繰り入れは2011~2030年度まで)。

ところが、北陸新幹線や九州新幹線の建設費がかさむにつれ、新幹線の貸付料から貨物調整金に回せる財源が確保できるか、怪しくなっている。政府・与党の申し合わせでも、2031年度以降は貸付料からの拠出は行わないことが決められている。

特例業務勘定を財源として使えるかは、政治に左右され、安定した財源とは言いがたい。つまり、貨物鉄道を支える貨物調整金の2031年度以降の財源が、宙に浮いた状態なのだ。

(後略)

アボイダブルコストルール(Avoidable Cost Rule)とは「回避可能経費」のことで、JR貨物がJR旅客会社に支払う線路使用料のうち、貨物列車が走行しなければ回避できる経費(例えば摩耗によるレール交換費用など)のみJR貨物が負担するというルールです。

国鉄民営化に伴い、線路は旅客会社の財産となり、JR貨物会社は旅客会社に線路使用料を払うことになりましたが、経営が脆弱なJR貨物への支援策として導入されました。これにより、JR貨物は一般的に適用される線路使用料の10%程度の負担で済んでいましたが、整備新幹線の開業により在来線がJR旅客会社から分離された際、このルールが維持できなくなると危惧されたため、JR旅客会社が支払う新幹線貸付料をこれに充てることとし、アボイダブルコストルールは現在まで維持されています。





東京駅の東海道新幹線18・19番線プラットホーム新大阪寄り端に1973年に建てられた、「新幹線の生みの親」といわれている 十河信二第4代国鉄総裁を顕彰する「一花開天下春」の碑。左上が十河氏の顔のレリーフで、右下の文字は右から読む。
鉄道旅のガイド 2019年5月17日
裏にはプレートが埋め込まれていて、上から「新幹線 開業」「東京-新大阪 1964・10 552.6km」「新大阪-岡山 1972・3 180.3km」「岡山-博多 1975・3 443.6km」「鉄道百年 1972・10・14 日本国有鉄道」と記されている。まだスペースが空いているが、そこには何かが入るのだろうか。
鉄道旅のガイド 2019年5月17日
東海道新幹線中央のりかえ口から入った通路突き当たり、18・19番線プラットホームへ至る階段の上り口近くの壁面に掲げられている「東海道新幹線 この鉄道は日本国民の叡智と努力によって完成された」のプレート。1964年10月1日の東海道新幹線開業日にここに設置されたもの。
鉄道旅のガイド 2019年5月17日



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