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組織と個人とアピールとPRと

リクルートキャリアが内定を辞退する新卒学生の予測値を企業に販売していたとして炎上していますが、内定辞退って事象についてはどちらが悪いという話ではなくて仕方のないことだと僕は理解しています。

ただ、企業側も毎年それなりのコストを支払って採用活動を行なっている以上は支払ったコストに対して成果に結びつかない悲しい発生コストを抑えていきたいと思うのは当然のこと。

あらゆるコストは抑えたいものですから、その可能性が高い情報を企業側としても得たいと思うのは仕方がないでしょう。これは企業って組織体の性(さが)です。そして、企業側にとって企業側が得たいと思いながらも得る方法を有していない、有益(だと思えるよう)な情報を提供してビジネス化しようとする動きをリクルートが取っていたのも、これまた必然と言えます。

同意を得ていると主張していたのに実際には了承を得ていなかった点と、おそらく企業側に対して具体的な個人を特定した情報を提供していたのではないかと僕は勘ぐっていて、それによって問題が大きくなっているように感じます。(あくまで個人の雑感です)

ただ、ただですね。

これって、学生個人が対象となっていたからこそ、批判の対象となっているようにも感じていて、逆に40社も50社も一人で内定を獲得したものの内定辞退をする学生が多数出てきた場合、それを企業が呈する社会問題として捉えれば、毎年それなりの金額を採用するために支払っている企業側にとっての大きな問題であるのに変わりはないですから、あながち間違った言い分ではないでしょう。

企業の採用コストが大体どのぐらいなのかと言えば、マイナビが発表している資料にある数字を参考にすると、上場企業の平均で1,783.9万円、非上場企業の平均が375.1万円とのこと。平均値なので、大体の金額的な把握するための数値としてご覧ください。

ご存知ない方のために出した数字なのですが、言いたいのは人を雇うのもタダではできない時代になっているのだって事実を把握してもらいたいってだけです。

優秀な学生や人間を雇いたいと思うのであれば、他社よりも魅力的な発信なり、フォローなりをしてくれる組織なのだとアピールしなければなりません。僕はあえてここでアピールとしていますが、最近見かける企業の採用における発信の仕方を見ていると、PRではなくアピールだと思えてなりません。

「なんだ、そりゃ」と思うかもしれませんが、アピールは自己主張で、「君のことが好きだああああああああああ!」な訳です。逆にPRは「君の好きなものってさ...これじゃない?じゃ、こんなのはどう?...え?そしたら、こんな風に考えてるんだけど、君はどう思う?ちなみに僕はこんなことができて、君が考えてる〇〇に△△できると思うんだ。どうかな!」な訳です。

もっと意味がわからないですかね。

えぇと、PRってPublic Relationsの略な訳ですが、主体となる存在(個人でも組織でも)が大衆や社会といった多くの人たちとの関係を築くためのマネジメント方法です。

ちなみに、日本パブリックリレーションズ協会(大変失礼ながら初めて知りました)が定める定義は以下です。

パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。

アピールは自分の主義主張を通すためだけにするもので、言い換えれば自分の強い部分や魅力だと感じている部分を前面に押し出しながら発信していくもの。

PRは相手との関係性を自分のできることやできないことも含めて構築しようとする態度ですから、自分の良さは出しつつも、相手の良さやできることを踏まえた上で行う対話な訳で、二つは似て非なるものだと理解できたかと思います。

それが、企業側が一方的に「自分の良さ」を押し付けがましく読み聞かせようとして、それに乗って応募してみたら、ちょっとだけお互いに良さそうだなぁって思ってはみたものの、もっと魅力的な相手がいたから...といった理由で袂を別つ、なんてのはよくある話です。

お祈りメールだなんて揶揄される企業側の対応も、複数社から内定をもらい安心感を抱きつつ選べる中で取捨選択し辞退って対応も、どっちもどっちって言えばどっちもどっちじゃないですか。

だから、リクルートがやばいんじゃないんですよ、この件。

そもそも新卒一括採用ってイベント自体が、割と企業側にとっても、学生側にとっても苦しい状況になってきているんだって証左な事案だっただけで、これまでの企業価値とは就職に対する倫理観みたいなもののせめぎ合いの中で起こった一つの出過ぎた杭だったんです。

個の情報が芝麻信用(ジーマ信用・セサミクレジット)といった個人の信用スコアを元に採用の要否を決められた、という話も中国では十分にありそうな話も日本ではまだ数年はかかりそうなわけで。

今後は個人情報や個人の信用スコアと、就業や仕事といったキーワードとの間にせめぎ合いやつばぜり合いが起こっていきそうなものですが、そうなった時に、批判しやすい組織を否定するだけでは取り残されてしまいかねませんねぇ、と思った次第でした。

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