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東北旅 お土産話 その2

珍しく父が
淹れてくれたお茶を飲みながら、
東北であったことを話す。

番屋のおばあちゃんの
お茶の味と似てる。

それより何より
おじいちゃんのこと。

「ごめんね、急に
メールしちゃって。」

「いいけどさ
びっくりしたよ。」

「うん、でね、
くりこま高原で
沼、行ったのよ。
なんか覚えある?」

「沼、、かあ
そういえば、
昔、じいちゃんの本家に行った時に
沼で採ってきたって
なんかヌルヌルで包まれたの
食べたなぁ、、」

「じゅんさい?」

「そう、多分それだ。」

「へえ、おじいちゃん
沼に行きたかったのかな。
行ったらね、
なんか落ち着いたのよ。」

「変なこと言うなよ。
でも、なんか不思議だな。」

「うん、ほんと、不思議。
私、じゅんさいのことも
沼のことも
おじいちゃんの故郷の
場所も知らなかった。
ただ、なんとなく
そっちに行っただけ
なんだよ。」

「そうか、、」

父は、私が頭おかしくなったかと
思ったのかもしれない。

でも、どこか嬉しそうだった。

「なんかさ、行った方が
いいんじゃないの。
おじいちゃんの本家。
よくわからないけどさ。」

透析中の父には
難しいことだ。
よくわかってる。

だけど、敢えて言ってみた。

「そうだな、、
まあ、透析する病院さえ
決めておけば
無理じゃないんだ。」

「なんだ、ちゃんと方法は
頭の中にあるんじゃないの。
せっかくスマホ持ってるんだから、
麻雀ばかりしてないで、
行き方を検索してみたら?

スマホは調べるためにあるんだよ?」

ああ、そう、
お父さんにはいつも
キツイ言い方しちゃう。

けど、病気になってから
年齢の割に年老いてしまった父を
どこか私は許せないでいた。

私の中の父は、
少し小太りのビール会社の営業マン。
少し汗臭かったけど、生き生きと
働く姿が好きだった。

ビール会社に勤めてるんだから
少し小太りなくらいがいいんだなんて、
不摂生して、結果的に
糖尿病なんて
笑えないじゃないの。

でも、そんなお小言も
父は嬉しそうに聞いている。
娘に怒られるのって
嬉しいのかしら?

よくわからないわ。

ワインのせいで
私も饒舌だわ。

でも、いい時間。

おじいちゃんも
近くで聞いていたのかも。

おじいちゃんの話は
また今度。








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