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定家、夢になせとぞ

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非色の色の見ゆるまで_富澤大輔写真作品集『字』より

藤原定家。  駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野の渡りの雪の夕暮 馬を止めて袖に降りかかった雪を払う物かげもない、佐野の渡りの雪の夕暮。だからなに?としか反応しようもないような一首に見える。しかしその設計プロセスを先人の研究によって追ってみると、夕闇に沈みゆく雪景から歌神の姿が現れる。定家は万葉集、長忌寸奥麻呂(ながのいみきおきまろ)の以下の歌を「改修」した。  苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに 佐野/狭野は同じ地名の異表記と思われる。やれやれ、