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7.ロコモ予防

ロコモティブシンドローム

みなさんは「ロコモティブシンドローム」という言葉を聞かれたことはありますか?

「立つ」「歩く」といったカラダを動かす機能(移動機能)が低下している状態のことをいいます。加齢によるヒトのロコモティブシンドロームには、筋力の衰えで力が入らない「サルコペニア」や関節に痛みを感じる「変形性関節症」などいろいろな原因がありますが、犬も同じで、同じ症状により、動くこと自体が億劫になってきます。その結果、カラダ全体の運動機能が衰えた上に気分まで滅入る、負のスパイラルに陥ってしまうのです。

ただ加齢が原因で歩くのがおぼつかなくなった高齢犬を、「かわいそうだから……」と寝てばかりにしてしまうと、動けなくなってしまうことにもなりかねないのです。

散歩で健康を維持する

健康で生きられる時間=健康寿命を延ばす為には、この移動するための機能を維持することが大切になってきます。骨は骨として、筋肉は筋肉として、関節機能は関節機能として、心肺機能は心肺機能として、それぞれの機能を保つには、高齢になっても適切な運動が欠かせないのです。

犬の健康維持のための運動は、日々の散歩が基本です。日々の散歩が、カラダ全体の機能を守ってくれるんです。若いうちは、急な坂を上らせたり、重いタイヤを引かせたり、といった少々ハードな運動で筋力や体力をアップさせることができますが、哀しいかな、ヒトと同じで高齢になると、そのハードさがあだになるリスクが高くなるんですね。ですから、日々の普通の散歩が一番適切だと思うんです。

その子に合った散歩を

運動の原理に「過負荷の原理」というものがあります。少々きつい運動でないとカラダは作られないという原理です。それは高齢犬でも同じ。ただ、きつさは若い犬と高齢の犬では大きく異なります。無理はせずにゆっくりと時間をかけて歩くことが大事です。速度は遅くてもきついコースでなくても、ある程度の時間休まずに歩かせるのです。運動そのものの負荷を高くするのではなく、運動の時間を長めにするわけですね。着肢を確認しながら犬の速度でゆっくりと歩いてあげましょう。

バリエーションの効果

もし、高齢でも肢がしっかりしているのなら、道路だけでなく色々な場所を歩いてみるのもよいです。草むらや砂浜、落ち葉の上などを歩くとバランス感覚が落ちず、緩やかな坂を上がったり下りたりすることで関節の柔軟性の維持や骨密度の維持向上にも期待ができます。

ことほどさように、散歩のやり方をその子に合わせて変えてやることで、健康寿命を伸ばす手助けをすることができるはず。無理をせずにゆっくりと、でも運動の効果は得られるように、特別な散歩メニューで高齢犬のカラダをいたわってやって欲しいと思います。

WIZ-DOGドッグトレーナー 大谷 奈津子


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー