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クジラと波

 クジラは打ち寄せる波たちにいちいち名前を付けているらしい。我々が山や森から地名を作るのと同じように、その特徴を汲み取って、寄り添って泳ぎながら何度も、静かで大きな脳みその中で反芻するらしい。人間たちはすぐ消えてしまう波しか見ないので気付かないがちだが、実は海は広いので、クジラにとって波は長い間の友となってくれるらしい。大抵特徴のない波がほとんどだそうだが、たまにとても特徴的な波があり、そういうときは大好きになって、どこまでも追いかけてしまうらしい。どこまでも追いかけた結果、浜辺などに打ちあがって体が爆発するらしい。座礁した瞬間は結構後悔するが、気付くとまた海の中にいるから別に大丈夫らしい。


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