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90年代 各年一番好きな洋ロックアルバム紹介


という訳で今回は90年代です。

90年代の洋楽、日本では70年代に匹敵する多くのファンを抱えるイメージ。僕も大好きです。

ではやっていきましょう。
今回も年代を通して同じアーティストは禁止です。



1990年 「Goo」-Sonic Youth

他候補
「Bossanova」-Pixies
「Pills 'n' Thrills and Bellyaches」-Happy Mondays

ピクシーズと並びカートにインスピレーションを与えたバンド、ソニック・ユース。ノイズを駆使し歪ながらノレるロックを追求する唯一無二の存在です。
雑なようで丁寧に配置されたノイズ。特に「Mote」の最後のノイズは素晴らしい。長いですが絶対蛇足と言わない飽きさせない工夫を随所で楽しめます。
何より代表曲「Kool Thing」が最高。「Teenage Riot」と双璧をなす彼らの極上のポップソングです。
今でこそ名盤という扱いを受けてる本作ですがチャートは最高96位。それでも彼ら一番のヒット。ニルヴァーナ以前のオルタナティブロックが如何にメインストリームから乖離していたか伺えますね…。



1991年 「Blood Sugar Sex Magik」-Red Hot Chili Peppers

他候補
「Nevermind」-Nirvana
「Out Of Time」-R.E.M.
「Badmotorfinger」-Soundgarden

世間的にレッチリの最高傑作の一つと評される本作。「レッチリってどういうバンド?」という問いへの最高の回答です。
前作「Mother's Milk」のハードロック路線をそのままに、ファンクとヒップホップ要素を強めた彼らだけのミクスチャーロックをここで確立させ、それがリック・ルービンの手が加わったこともあってかかなり論理的に整理整頓され、名盤として完成しました。
そう、ファンの方はとっくにわかってると思いますがレッチリって本当に音楽理論への理解が高い。本作はそれを本格的に窺い知れる初めての作品と言えるわけです。
その「整理整頓」の一つの根拠としてフリーのベースリフが驚くほどシンプルになっていることが挙げられます。しかしそれでフリーの魅力が薄れた訳では無く、むしろシンプルかつファンキーに力強くうねり、メロディアスに刻まれる本作での彼のベースは本作の最も重要な要素と言っても過言ではないです。もちろん「Naked In the Rain」の中間部など、見せ場を与えられたらしっかり素晴らしいプレイをやってくれます。
お気に入りは代表曲の一つ「Give It Away」。声の切り替えが特徴の表題曲も中々傑作です。



 
1992年 「Automatic For The People」-R.E.M.


他候補
「Rage Against The Machine」-Rage Against The Machine
「Dirt」-Alice In Chains
「Check Your Head」-Beastie Boys

カート・コバーンが自殺する時に聴いていたアルバムとして有名ですが、「アメリカで最も多くの自殺志願者を救った」として伝説に残る「Everybody Hurts」を中心に「分かるよ、辛いよな…でも耐えるしかないんだよな…」と一緒に世の無情さを嘆いてくれているかのような、聴いてて本当に元気が出る最高のアルバムです。
前作で完全に勢いをつけた彼らが送るロックと言うよりはフォークやカントリーに近いアルバムですが、他のフォーク、カントリーアルバムとは一線を画す素晴らしいストリングアレンジが加えられており、一部あのツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが携わっています。凄い。
そしてこれはこのアルバムのレビュー記事で再三言われていますが、「Man Of The Moon」「Nightswiming」「Find The River」の最後の三曲の流れは素晴らしい。
特に優しい曲調で寄り添うようにイェイイェイイェイと歌う彼らの代表曲、「Man Of The Moon」は最高です。



1993年 「In Utero」-Nirvana

他候補
「Ten Summoner’s Tales」-Sting
「Get a Grip」-Aerosmith

「オルタナをチャートに押し上げたい」「でもメジャーになりすぎるのは嫌」というジレンマに死ぬまで悩み続けたカート。そんな彼の葛藤が伺える最高の一枚。
ぐちゃぐちゃなように思えて綿密な計算が施された至極の12曲。捨て曲一切ない完璧な完成度です。
好きなのは「Radio Friendly Unit Shifter」。どシンプルな進行から放たれるラップにも似た歌詞と衝動がそのまま音になったような荒々しいギター。何回聴いてもうわぁ…と惚れ惚れします。
そして最後の「All Apologies」。ニルヴァーナで1番好きな曲かもしれません。
“Sunburn, freezer burn. Choking on the ashes of her enemy”
ここ好き。厨二病の奥深くをグリグリとエグってくるような、天才的な歌詞です。





1994年 「Parklife」-Blur

他候補
「Dookie」-Green Day
「The Downward Spiral」-Nine Inch Nails
「Weezer」-Weezer
「Definitely Maybe」-Oasis

イギリスのシニカルな空気がそろそろ恋しくなってきました。
1994年、惜しくも亡くなったカートと入れ替わるようにイギリス勢が明るいポップな音を携えて「ブリットポップ」として活躍し始めます。そのきっかけとも言えるブラーのサードアルバムです。
一曲目の「Girls And Boys」からアクセル全開のこれでもかってくらいキャッチーで明るいサウンド、皮肉とユーモアに溢れた歌詞が織りなすいかにも「イギリス」な空気感。そしてボーカルのデーモンはクソイケメン。諸々含めて「当時のイギリス人絶対狂喜乱舞したんだろうなあ」と思わされます。
表題曲がとにかく大好き。訛った英語ですれ違う人々を嘲笑いながらロンドンの街を闊歩しているかのような世界観、素晴らしい。
隠れたお気に入りは「London Loves」。ロンドンへの愛を歌う曲ですがそれだけでは終わらない。「人が崩れる、君に勝ち目はない、ロンドンが大好き」「頭が膨張してると言葉が安っぽい」。これでもかと皮肉をぶちまける。東京に入れ替えても同じことが言えるかも・・・。



1995年 「(What's The Story)Mooning Glory?」-Oasis

他候補
「The Bends」-Radiohead
「Mellon Collie and the Infinite Sadness」-The Smashing Pumpkins

僕を「洋ロック」に引き合わせてくれた最高のアルバム。
人生で最も影響を受けたと言って差し支えないです。信じられないくらい名曲しか入ってない。
魔法が掛かっているとしか思えない至高の名曲ラッシュ。リアムの透き通りながらもロックを意識した天声の歌声とノエルの持つ自分が持つカードを最大限有効活用する天声の作曲センス。完全に奇跡が起こっています。
「Wonderwall」「Don't Look Back In Anger」という90年代のロックソングトップ10入り間違いない最強の二曲を携えながら「Morning Glory」というアップテンポな曲もあり、そして「Cast No Shadow」で泣かせ、最後は要するにこのタイトルの意味はなんなんだ?とちょっと突っ込みたくなる大名曲「Champagne Supernova」で幕を閉じます。
ネブワースのライブ映画見に行ったの、もう3年前になるのか・・・。「ストーンローゼズから彼らがバトンを奪った」という台詞が印象に残っています。



1996年 「K」-Kula Shaker

他候補
「Tidal」-Fiona Apple
「Odelay」-Beck

まだまだブリットポップの熱は収まらない。1996年は古典的なサイケにインスピレーションを得て、それをブリットポップサウンドに落とし込めたクーラシェイカーの傑作、「K」です。
一曲目の「Hey Dude」が本当に最高。イントロのギターから引き込まれ、エコーのかかった畳みかけるようなボーカルにメロメロです。
「Tattova」もお気に入り。この東洋音楽とブリットポップの完璧なコラボレーションは絶対彼らにしか作れない世界観です。
なんなら彼らのバンド名の由来もインドのクラシェクハラ王という王様をもじったものだったり、ボーカルが仏教徒でインド旅行に行ってたり、ここまでゴリゴリに東洋思想にのめり込んだ白人のバンドも珍しいです。
全体を通して疾走感が半端ない。ツルっと聴ける名作。



1997年 「OK Computer」-Radiohead

他候補
「Dig Your Own Hole」-Chemical Brothers
「The Fat Of The Land」-The Prodigy
「Blur」-Blur

「だろうな!」と思われるでしょう。この流れで97年がこれじゃないわけがないです。
「The Bends」で示したギターロックの方向性を決して失わず、前衛的なサウンド、未来を予兆するかのような鋭い歌詞を盛り込み、聴くたびに好きになる間違いなく100年後も聴かれているだろう歴史的名盤です。
戻れるなら「Paranoid Android」を初めて聴いたあの日に戻りたい。脳の一番深い部分にある一番濃い脳汁が抽出されたような、まさしく自分の音楽遍歴のターニングポイントでした。ヴァース、コーラスという縛りを取っ払って名曲を作るというビートルズやクイーンといった往年のレジェンドが成し遂げた試練に彼らは挑んだのです。
「Let Down」も素晴らしい。優しいサウンドでも歌詞は残酷で冷酷。本作の空気を最も表してる曲な気がします。
そしてやはり「No Surprise」。浮遊感のある優しさとどこか不穏なダークさを兼ね備えた彼らの傑作の一つ。例えるなら走馬灯のテーマソング。実際葬式で流してほしいかも。
このアルバムに入れたらアルバムが売れすぎてバンドがオワコンになるという凄い理由で収録されなかった「Lift」も名曲なのでぜひ。



1998年 「Americana」-The Offspring

他候補
「Queens Of The Stone Age」-Queens Of The Stone Age
「The Boy With The Arab Strap」-Belle and Sebastian

「パンクってこういうのでいいんだよな」と思わせるキャッチーさと確かなかっこよさが合わさったサウンドを魅せてくれるパンクの古参、オフスプリング最大のヒット作。
「Pretty Fly」こそこのバンドが他のパンクバンドとは一味違う所以を示している曲でしょう。嫌味たっぷりの歌詞とAha♪Aha♪というポップなコーラスは最高にノレます。
代表曲「The Kids Aren't Alright」ももちろん見逃せない。クールな疾走感とかき鳴らされるギターは頭を揺らさずにはいられない。どらえもーん
他のお気に入りは「Walla Walla」。オフスプのライブ映像とか見てたらこの曲でめっちゃ盛り上がってて楽しそう。ぜひ行きたい。



1999年 「Surrender」-The Chemical Brothers

他候補
「…Baby One More Time」-Britney Spears
「Operation: Doomsday」-MF DOOM
「Ágætis byrjun」-Cigar Ros

極太のベースラインとサイケデリックかつロックなエレクトロサウンド。ファンクの影響もあり楽しいダンスミュージックなはずなのに高揚感と浮遊感が止まらない至高の一枚。21世紀に向かうロックの舵取りを任されているかのような、そんな頼もしさを感じます。
「Let Forever Be」ではノエルギャラガーが声高らかに熱唱。オアシスでは見れない一面を垣間見ることが出来ます。
「Out Of Control」の四つ打ちのビートもたまらない。ミニマルな展開でオーバーにも思えるくらい盛り込まれる特盛の電子音が最高です。
そして代表曲「Hey Girls, Hey Boys」。こんなんライブで流されたら叫んじゃうでしょうね。
ケミカルブラザーズの最新作、とてもよかった。来日してたからライブ行けばよかったと後悔が止まらない・・・。



・まとめ
結果はアメリカ5、イギリス5と綺麗に半分に。
ニルヴァーナ、R.E.M.、オアシス、ブラー、レディオヘッドと大好きなバンドが次々と現れ、怒涛の名盤ラッシュに耳が喜んでました。

思ったことは「イギリスとアメリカで音楽的に独立するようになった」です。
80年代まではイギリス勢がディスコやダンスミュージックのアルバムをリリースしてアメリカに染まっている様子が見られましたが、90年代のイギリス勢からはむしろ「イギリスらしさ」を取り戻そうという意識が感じられ、それがブリットポップに繋がったんだと思われます。

次は2000年代。いよいよ僕のリアルタイム世代が近づいてきました。今から楽しみです。

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