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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で「王様のブランチ」を思い出した

「金曜ロードSHOW!」という表記に、いまだに慣れません。これから先も慣れることはないでしょう。私にとっては夕日をバックに波止場に佇む男性のシルエットとトランペットの音色で始まる「金曜ロードショー」こそが、金曜ロードショーなのです。
 そんなことを言ったって、タイトル表記もオープニング映像も変わったという過去は変えられないし、観たい映画が放送されれば観る。

 3週連続『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が放送されていて、ついつい観てしまいました。1も2も3も何度観たってハラハラするし、「もしも〜し」と頭コツコツされるのはいつ見ても腹立たしい。それと、第一作のラストは毎回ゾッとする。
 ビフのあの姿、怖くないですか?
 
 主人公マーティが過去を変えたことで現在が変わり、父親をいじめる成金上司だったビフが車磨きへ陥落するという展開。悪者が成敗される爽快感があるし、主人公から見ればハッピーエンドなのだけど、学生時代のたった一晩の出来事が数十年後に大きな影響を及ぼすというのが、とても恐ろしく思えてなりません。
 喋り方も姿勢も服装もすっかり別人で(あの緑色のジャージ!)、人間が、丸ごと違ってしまったという恐怖。
 こんな風に、数十年後の未来に重大な変更を生じさせるかもしれない今を毎日生きているのかと思うと、足がすくんで何も出来なくなります。(やるけど)

 2012年に、『もう一度君に、プロポーズ』という連続ドラマを書きました。竹野内豊さんと和久井映見さんが夫婦役で、病に倒れた妻が夫と出会ってから現在までの記憶を失ってしまうところから始まる物語。
 TBSの番組だったので、宣伝のために「王様のブランチ」に出演した主演のお二人へ、ドラマのタイトルに絡めてこんな質問がされました。

「もう一度人生をやり直せるなら、いつに戻りたいですか?」

 誰もが考えたことがあるであろうこの質問。竹野内さんの答えは「生まれたとき」、そして和久井さんの答えは「戻らなくていい」でした(ひょっとしたら逆だったかもしれない。うろ覚え)。
 正反対なようでいて、おそらく同じ人生観から出た答えだろうと思います。すなわち、途中からじゃ駄目。

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、お手本のようによくできた構成で、無駄なく全ての要素が繋がっていきます。人生も同じで、無駄なんて一つもない……とは言い切れないけれど、少なくとも生きているうちは、何が無駄で何が無駄じゃないかなんて分からないから、途中で何かを変えてしまうと、色々と狂っておかしなことになって、緑色のジャージを着る羽目になるかもしれません。
 やり直すなら最初からという竹野内さんの答えも、やり直したくはないという和久井さんの答えも、その意味で素晴らしい。そう思ったことを、思い出しました。

 ちなみに私が「いつに戻りたいか?」と問われたら、基本的には和久井さんと同じで「戻らなくていい」なのだけど、原稿の締め切り直前は「締め切りが言い渡された日に戻りたい」と、答えます。

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