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短編小説

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【短編】初めて往復ビンタを食らった人

 27年間も生きていると不思議な感覚がみにつく。
 端的に言ってしまうと第六感のようなもので、なんとなく今日何が起こるかどんな一日になるのかがわかるのだ。
 例えば、先々週の営業で製品の仕様について自分が知らないことを聞かれるであろうことは分かっていたし、それに僕が勘で答えることも分かっていた。さらに言えば先週その営業で購入された製品の仕様が聞いていた内容と違うとクレームが入ることも、それをのらり

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【短編】ほどこし

「死にたい」と思う人間のもとに、首吊り用の縄が落ちてくるようになった。
 原因は分かっていない。
 初めてその現象が起こったのは確か数年前の夏だった。少なくとも今みたいにジャケットが必要になるような季節ではなかったはずだ。無用な混乱を避けるためにその場所は発表されてはいないが、ネットでは、北海道だったり、ロシアだったり、カナダだったりと、とにかく寒い地域が発祥なのではないかと噂されていた。その現象

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【短編】グリフィンが一匹、

「最近寝つきが悪いんだ」
「それは大変」
「おかげで作業に集中できないよ」
「病院は?」
「そこまで大ごとじゃないよ。単に眠るまでに時間がかかるってだけ」
「そう、何か対策とかしてるの? 」
「アイマスクをしたり、耳栓をつけたり、軽く運動をしてみたり。どれも効果はなかったよ。ああ白湯も試したな」
「羊を数えてみたら? 」
「馬鹿にしてる? 」
「案外宛になるかもよ? これだけ有名なんだから」
「は

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