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言葉の余白に込められた本当の思いとは?【告白の余白】

言葉にある余白、その余白を読み取る
そこにある真実、言葉の繊細さが分かる

【本の基本情報】
〇ジャンル:日本文学
〇本の種類:文庫本
〇著者名:下村 敦史
〇出版社:幻冬舎文庫

■告白の余白」を読んで

タイトルや表紙からは想像できないですが、京都を舞台にした小説です。
京都の雰囲気や京都の人などを表現しながら物語が進んでいきます。

物語の始まりは、双子の兄弟の兄が地元に帰ってきて、謎の言葉を残して自殺をしてしまうということから始まります。

残された双子の弟は、兄が残した言葉を基に、兄が生前に過ごした京都へと向かい、その真相を明らかにしようと考えます。

そして京都で過ごす弟は、少しずつ京都の不思議な雰囲気に引き込まれ、そしてそこで出会った兄を知る女性に惹かれていきます。

■京都の不思議な魅力、言葉に秘められた心

京都を舞台として物語は進んでいきます。
私も実際に京都を旅したことがありますが、何日か過ごしただけでは感じることが出来ない京都の不思議な感じがよく描かれています。

京都という地の閉鎖的で本音を話さないというあまりよくないイメージが表現されているのですが、それは反対に他人への気遣いであったり、控えめな慎ましさ、という表現も出来る。
そんな京都の人と街の雰囲気の中で、兄が生活していたことを感じ、そして兄はここで何をしていたのか、どんな生活を送っていたのか、兄が最後に残した言葉の意味を明らかにするために、弟は自らもその京都の魅力に惹かれていきます。

よそ者を寄せ付けない京都の雰囲気、しかしそこには歴史と伝統といった簡単には語れない時が生んだ独特な重さがあり、本来日本人が持っている性質がそこにはあると感じました。

そこにある「言葉」、京都の人たちが話す言葉には、その言葉をそのまま受け取っていいのか、そこには何らかの裏があるのか、優しさがあるのか。
言葉の中にある「余白」に込められた本当の言葉の意味。

言葉の大切さ、繊細さを深く感じる作品です。

■「告白の余白」を読んで!まとめ

まずは本作品の感想は、すごく繊細だと感じました。

京都という土地を舞台に物語は進んでいきます。
京都の土地、そこに住む人、歴史が実にわかりやすく描かれており、京都のそれを知らない人でも、そのイメージが頭に浮かんできます。

京都の閉鎖的な部分が描かれているようですが、やがて物語が進むにつれ、京都の閉鎖的な部分は、実は本来日本人が持っている人を思いやる気持ち、優しさ、慎ましさ、そういったものが歴史とともに重なってきて、京都の独特な雰囲気になっていると感じました。

閉鎖的と言ってしまえば簡単なのかもしれませんが、そこには、京都とという土地に住む人たちのもっともっと繊細で、深い心があるのではないかと感じました。

京都の人の言葉。
その言葉には余白があり、その余白をどう受け取るか、自分自身がどう感じながらその余白を読むかで、その言葉は嫌味にもなるし、優しさにもなる。
言葉というものの深さを改めて感じさせてくれる作品です。

京都という町を舞台にして、京都の人の話す言葉として描かれていますが、本来日本人が持つ言葉。
その言葉の難しさ、繊細さ、深さ、そういったものが実によく描かれています。

言葉の余白を読み取る、その読み取り方で、その言葉は色んな姿に変化する。
複雑であるが、魅力的な言葉を使っている日本人。日本語の深さと日本人の心を感じる作品でした。


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