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不動産鑑定士になるまでの道のり(不動産鑑定士試験と不動産鑑定士への道のり)[2/5]


不動産鑑定士なるまでの流れ

不動産鑑定士になるまでには、単に試験を受けて合格すれば不動産鑑定士を名乗れるというわけではありません。どれだけ素早く試験勉強を突破できるとしても、出願から不動産鑑定士を名乗れるようになるには最短でも約2年間ほどかかる大掛かりな試験です。

不動産鑑定士試験になるための流れは次の通りです。

①出願
②不動産鑑定士試験(短答式試験)
③不動産鑑定士試験(論文式試験)
④実務修習/終了考査

とりあえず、時期についてのみ、2024年受験の「最短のケース」で整理をすると、

①出願:2024年2〜3月
②不動産鑑定士試験(短答式試験):2024年5月
③不動産鑑定士試験(論文式試験):2024年8月
④実務修習:2024年12月〜(修了考査:2026年1月)

となります。そして、修了考査に合格していた場合、不動産鑑定士への登録が2026年4月となります。
つまり、最短であっても2024年3月〜2026年4月の約2年かかるということになります。

何度も書いていますが、これは「最短のケース」です。ここから、内容について細かく見ていきましょう。

①出願

【出願時期】
まず、不動産鑑定士試験の出願時期は、2〜3月頃となります。令和6年(2024年)の試験を例に出すと、令和6年2月8日〜令和6年3月8日までが出願時期となっています。
3月は少ししか時間がないので、2月に出願と覚えておきましょう。

【出願方法】
出願方法には、郵送での申請と電子申請があります。
郵送での申請の場合、願書を国土交通省から取り寄せる必要があります。1月下旬頃に取り寄せ方法が発表されますので、それを見て取り寄せ、記入をし、郵送で申請することになります。
電子申請の場合は、その名の通り、インターネット上で申請することができます。ただし、電子申請は非常に分かりづらく、ミスが発生して、最悪受験できないということが発生する可能性もあるので、あまりおすすめはしません。心配な方は面倒でも郵送での申請を検討しましょう。

【受験料】
不動産鑑定士試験の受験料は12,800円となっています。

【受験資格】
受験資格は特になく、学歴や実務経験も不問です。

不動産鑑定士試験

不動産鑑定士試験は、2段階の試験となっています。1次試験に合格すると、2次試験を受験できるという形式となっています。

1次試験と2次試験は、受験科目、形式、難易度がほぼ異なっておりそれぞれ別の対策をする必要がある試験です。唯一共通しているのは、不動産鑑定士の軸となる「不動産の鑑定評価に関する理論」という科目名くらいです。

②不動産鑑定士試験(短答式試験)

まず、不動産鑑定士試験の短答式試験について解説をします。

【試験日】
試験日は令和6年の場合ですと、令和6年5月19日(日)となっており、5月中旬の日曜日に行われることが一般的です。

【試験科目と時間割、配点】
試験科目は「不動産の鑑定評価に関する理論」と「不動産に関する行政法規」の2科目で、試験時間はそれぞれ2時間の合計4時間の試験です。

短答式試験の試験科目、時間割、配点

【試験形式】
試験形式は短答式試験という名前ですが、マークシートタイプの試験となっており、5つの選択肢から1つを選ぶ形式です。
※5つの選択肢から1つを選ぶといっても、「正しいものをすべて掲げた組み合わせはどれか」というような問題も多くある、かなり複雑なタイプの試験です。

短答式試験の問題の例

【試験科目の内容】
「不動産の鑑定評価に関する理論」とは、不動産鑑定士の軸となる科目で、「不動産鑑定評価基準」やその留意事項をもととした問題が主に出題されます。
「不動産に関する行政法規」は、建築基準法の内容や、都市計画法の内容などが出題されます。
※宅建試験を受験されたことがある人なら分かるかと思いますが、「法令上の制限」と称される分野がイメージとしては近いです。

「不動産に関する行政法規」は覚えることが非常に多いため、難しく、どれだけ行政法規をやり込むかが短答式試験突破の肝となります。

なお、短答式試験の合格発表は6月下旬(令和5年は6月28日)となっています。合格している可能性がわずかにでもある場合は、気を休めず論文式試験の勉強を行う必要があります。

③不動産鑑定士試験(論文式試験)

短答式試験を無事合格できたら、不動産鑑定士になるにあたって最大の壁である論文式試験が待ち受けています。

【試験日】
試験日は令和6年の場合ですと、令和6年8月3日(土)〜令和6年8月5日(月)となっており、8月上旬の土、日、月に行われることが一般的です。
びっくりされた方もいるかと思います。そう、なんと3日間も試験があります。

【試験科目と時間割、配点】
試験科目は「不動産の鑑定評価に関する理論」と、「民法」、「経済学」、「会計学」の4科目です。

短答式試験と論文式試験の異なる点は、
①「不動産に関する行政法規」が論文式試験ではなくなる
②「民法」「経済学」「会計学」といった教養科目が新たに加わる
という3点です。

また、この4科目のうち、「不動産の鑑定評価に関する理論」については、理論と演習に分かれており、理論は2コマ分試験があります。分かり辛いので、時間割を見てみましょう。

論文式試験の試験科目、時間割、配点

※上記は令和6年の時間割

科目ごとに配点を見てみると、次のようにまとめられます。

論文式試験の科目ごとの配点

*うち100点は演習

「不動産の鑑定評価に関する理論」が半分を占めており、どれほど重要な科目であるかがわかります。(不動産鑑定士の鑑定評価と基本となる科目なので当たり前なのですが…)

鑑定評価に関する科目以外にも、不動産の鑑定をするのに必要となる「民法」「経済学」「会計学」といった教養科目も試験科目にあるかなりハードな試験であることがわかるかと思います。

【試験形式】
試験形式は論文式試験という名前からもわかる通り、記述式です。記述といっても、一問一答的な記述ではなく、与えられる問題に対して論述をしていく形式の問題です。
これは、実際の問題と解答用紙を見てみるとわかりやすいです。
次のような問題が2問出題され、2時間で解答します。

論文式試験の問題の例

次のような解答用紙が4枚用意され、1問につき2枚使用して解答していきます。

論文式試験の解答用紙の例

問題と解答用紙を見てもらうとわかるように、永遠と書く試験です。なんとなく覚えている、理解しているだけでは説明することができないので、合格することはできない、かなりハードな試験形式となっています。

【試験科目の内容】

各科目で出題される内容は次の通りです。細かく説明してもわからない人が多いと思うのと、実際に勉強していく中で全体像が掴めていくので、へぇ〜と思っていただければ十分かと思います。

論文式試験の内容(科目ごと)

④実務修習

短答式試験と論文式試験に合格後、そのまま不動産鑑定士になれるわけではなく、実務修習を受ける必要があります。実務修習の最後の修了考査に合格することで、正式に不動産鑑定士となれます。

【実務修習のコース】
実務修習のコースには「①1年コース」と「②2年コース」の2つがあります。その名の通り、何年かけて実務修習を行うかが違います。
1年コースを選択すれば、もちろんその分不動産鑑定士に早く慣れるというメリットがあります。しかし、あまりにもハードすぎて途中でリタイアする人が続出します…。
実務修習のみに専念できる余裕のある人でやる気もある人が1年コースを選択するようなイメージで、ほとんどのケースでは2年コースで実務修習を行います。
不動産鑑定の会社に勤めて実務修習を行う場合は基本2年コースです。

【実務修習の実施時期】
実務修習は12月からスタートします。
最速で合格した年の12月に実務修習をスタートし、その翌々年の4月に不動産鑑定士に登録ができます。
実務修習は、必ずしも合格してすぐ開始する必要はなく、合格の次の年から実務修習を行うということも可能です。

【実務修習の費用】
実務修習にかかる金額は、最大約110万円*です。実務修習を受ける環境によって異なります。
不動産鑑定業者に就職して、働きながら実務修習を受ける場合、会社が実務修習費用を負担してくれる場合もあります。
*110万円の内訳は、日本不動産鑑定士協会連合会に約35万円、実地演習実施鑑定業者または実地演習実施大学に最大約75万円を支払うため。


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