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幸せはここにはなくて、常に”ある”

世の中には、生き急ぐ人もいるけれど、どれだけの仕事をしなきゃいけないって、誰にも決められないでしょう。私はお腹がいっぱいになれて、
自分にとって心躍ることを見つけられれば、何の不満もないんです。

カンヴァスの恋人たち 一色さゆり


80歳の女性画家、ヨシダカヲルの言葉に惹かれるのは、主人公だけじゃない。
この本の読者全員が、ヨシダの真実味のある言葉に惹かれるはずだ。

彼女はある時を境に美術業界から一線を引き、山奥のアトリエでひっそりと一人で絵を描いていた。

80歳

その時に、私はその時どんな哲学を持って生きているんだろう。

彼女は、いわゆる一回捨てた人だった。

人間関係、仕事、世間での自分のポジション。
全部を捨てて、山の中で絵を描くことを決めた人だった。

だからこそ、彼女が捨てきれなかったもの、胸の中にずっと居座って輝きを失わないものの美しさが際立った。

誰かに決定的に自分を損ねられたり、存在意義を否定されたり、屈折した過去がないと、あそこまで優しくなれませんよ。

幸せっていうのは、日々自分で見つけるものでしょ。つねにここにはない。
つまり芸術と同じだ。


幸せは常にここにない、みたいなことを確か宇多田ヒカルさんも
言っていた気がする。

最近、私もそうなんだと思う。

例えば今日一日を振り返ってみて、朝一番に飲んだコーヒー、
おはようと家族で交わす朝の何てことはない時間、
職場で交わすたわいもない雑談、仕事終わりの一杯のビール。

そんなものを日常から引き出して、“しあわせ”のラベルをつけること
その営み自体が“幸せ”なのかなあ、と感じるようになった。


幸せはここにはなくて、常に“ある”

つまり、掘り起こす作業、クリエイティブな作業を通して幸せは存在する、
のかなあと思う。

そして、これとこれとこれがあれば、とりあえず私の生活に不満はない!
決めることは、かなり合理的で生きやすい考え方なんだと思う。

ヨシダさんは、それがお腹いっぱいに食べられて、
心躍ることを見つけられることだった。

この生き方を誰が批判できるんだろう。

彼女の生き方を、是非見てみてください。


Written by あかり

アラサー女

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