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月の下では私たち1000年前とおんなじ

私が初めて短歌に出会ったのはいつだろう。
確か大学に入って、少ししてからだったはず。

この文章を読んでくれている人は、少しでも短歌が好きだったり、興味を持ってくれているんじゃないかなと思います。
私は昔から本が好きで、詩集とかも好きで、言葉が好きで。
そして本と同じくらいに音楽が好きで。
そうなると、リズムを持って言葉を操る短歌を好きになるのは、当然のことだった気がします。

5・7・5・7・7のこのリズムがとても心地よくて、その度にああ私は日本人だなあと感じます。(現在アメリカで英語に囲まれていることもあり、しみじみ感じます)

この歌集は、新宿紀伊國屋で見つけた気がします。
短歌好きには分かると思いますが、短歌コーナーはいつも本屋の端っこに追いやられています笑

あなたとの記憶を消せるスイッチを発明してもたぶん押さない

この句は私が一番好きなものです。
記憶を消せるスイッチを発明してしまう気持ちも、最後の最後で押さない気持ちも、でも”たぶん”な気持ちも、当時のままならない恋愛(と言うのも気が引けてしまうほどのものでしたけど)をしていた時を思い出させてくれます。

短歌といえば、私たちは学生時代に百人一首に出会ってるはずですよね。あの当時はその面白さに気がつけませんでしたけど。

今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな

訳:今すぐに行きますとあなたが言うから、9月の夜長をひたすら眠らずに待っていたのに。もう夜明けに出る有明の月が出てきてしまったのよ。

これは百人一首21番目の、素性法師が詠んだ歌です。もう1000年くらい前に詠まれたものなんです。そう考えると本当にすごいなあと思わずにはいられないんです。

月を題材にした歌は今も変わらず詠まれています。この歌集にも出てきます。

私たちは月を見て、なぜだか大事な人を思い出す。大切な人、愛している人を想わずにはいられない。こんなことをずーっと昔から変わらず繰り返していると思うと、私たち人間の変わらなさ、本質的に不変なものを感じずにはいられません。そしてそんな人間をかわいく思わずにはいられないのです笑
1000年前の人たちと現代に生きる私たちが変わらないように、1000年後の人間も私たちと変わらず同じことをするでしょう。

短歌が好きというと、えー、なんかすごいねで片付けられがちですが、こんな面白いエンターテイメントないなあと思います。
31文字では到底言い表せない想いがリズムに乗って語られるとき。
それはそれは贅沢なものです。

Written by あかり
アラサー女


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