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コーヒーブレイク15回目:国家公務員(キャリア官僚)のお仕事Part2

前回の14回目の続きになります。
今回は、いま現在のキャリア官僚が立たされた位置付けを解説します。

現在の岸田政権と霞が関の距離感

まずは、以下の書籍を参考に、現在の岸田政権の霞が関の距離感を解説します。

安倍政権の時は、経産省出身の今井総理秘書官が、重要政策を自ら主導して権力を独占していました。

さて、現在の経産省出身の嶋田秘書官は、どうなのか見ていきたいと思います。

ちなみに、総理には1人の政務秘書官(霞が関の官僚ではない人で、いまの嶋田秘書官)と6人の事務秘書官がいます。6人の出身省庁は、財務省×2、経産省、防衛省、外務省、警察庁です。

以下に、現在の官邸の雰囲気、霞が関との関係を示している箇所を引用します!

経産省へ直接指示 まるで「嶋田資源エネルギー庁長官」
嶋田は岸田と同じ開成高校の2年後輩。東大卒で通商産業省(経産省)に入り、事務方トップの事務次官も務めた。官房長官や財務省を歴任した故与謝野馨の信頼が厚く、閣僚になるたびに秘書官として起用された。東京電力福島第一原発事故の後は、原子力損害賠償支援機構の理事や、東電取締役に就き、東電の経営再建を主導した。

退官後、富士フィルムホールディングスの社外取締役などを務めていたが、2021年9月の自民党総裁選の結果が出る数日前、岸田から「もし勝ったら、やってほしい」と誘われた。(中略)

嶋田の職場は、岸田や官房長官の執務室が並ぶ首相官邸の最上階、5階にある。秘書官室にはコの字形に机が配置され、左右に居並ぶ秘書官全員が見渡せる中央に嶋田が座る。嶋田の背中の向こうには、扉を挟んで岸田の執務室がある。岸田へのあらゆる報告はすべて嶋田がチェックし、岸田の指示は嶋田が差配した。

嶋田は思い入れの強いエネルギー政策には自ら首を突っ込む面もある。

物価高騰を受けた電力料金の値上げ抑制策や、原発の建て替え(リプレース)を含む政策転換をめぐっては連日、経産省に直接指示を出し、書類も自ら書いた。

その細やかな働きぶりをある事務秘書官はこう表現した。「嶋田資源エネルギー庁長官、いや嶋田課長といってもいいぐらいだ」

だが、政策全般では、嶋田が率いる官邸スタッフによる省庁への「介入」は抑制的と言える。岸田政権が「適度な政治主導と適度な行政の推進」(首脳周辺)を重視しているからだ。

経産省の同期で第2次安倍首脳秘書官を務めた今井尚哉は重要政策を自ら主導していた。対する嶋田は政策の実務を粛々と進めるタイプだ。

第2次安倍政権では、官房長官の菅義偉が「内政は全部、俺に任せてくれている」と周囲に語る一方、あらゆる政策に口を挟み、「反対するなら異動してもらう」とも公言。官邸主導で政策が進む一方、「官邸に箸の上げ下ろしまで指示される」(経済官庁幹部)と官僚の萎縮を招いた。

岸田政権では、岸田の意を受けた官邸が重要な判断や方向性は示すが、官僚の専門性に委ねる。ある承知の幹部は「首相は決められないと言われるが、それだけ意見は上がっているということだ」と話す。

御厨貴•東京大学名誉教授のコメント
-岸田官邸には、どんな特徴がありますか?-
霞が関との関係では、外相の時もそうだったが、岸田氏は適宜官僚を使っていくタイプだ。安倍氏や菅義偉氏のように霞が関の中に手を突っ込むのではなく、それぞれの役所でうまくやってもらう手法だ。

おそらくは特定の官僚との間に強い感情を持たないのだろう。だから官僚も、今はほっとしていると思う。

要するに「安倍官邸以前」に戻った。官邸が相対的に強くなっていることは間違いないが、安倍氏のように、各省で優秀な官僚を個人的に官邸に連れてきて、徹底的に働かせ、各省とは対立をする。そういう発想は岸田氏にはない。やはり、「宏池会」なので、官僚をうまく使い、官僚との関係を政治に生かしていくのが特徴だ。



牧原出•東京大学先端科学技術研究センター教授のコメント
官僚が自ら考えることを忘れてしまっている。
-なぜでしょうか。
旧民主党政権から安倍政権、菅政権に至るまで、官邸主導で官僚の頭を押さえつけるような時代が続いたことで、官僚側が自ら考え、政策の弾を込めていくというやり方を忘れてしまっているように思える。

また、官邸が省庁幹部の人事権を掌握しているから、官僚が官邸を飛び越えた政策を打ち出して、にらまれるのは怖い。なので、様子見をしているのかもしれない。

-政治主導の政策決定がうまく機能していないのは、どこに問題があるのでしょうか。
例えば、小泉純一郎政権時代では、経済財政諮問会議に参加する閣僚は、官僚がつくったペーパーを一切読まず、自分の言葉で話すよう求められた。そうなると、閣僚は自分で勉強し、自ら方向性を考えなければならないし、閣僚が勉強すると、官僚にとの間に議論が生まれる。

各省庁の閣僚が創意工夫して政策を打ち出す中で、内閣としての方向性を示すのが本来の政治主導だが、官僚をしっかりと引っ張って議論を主導できる官僚は多くない。官僚が書いたペーパーをそのまま読み上げるような閣僚が多いのが問題だ。

霞が関の役所の雰囲気は、官邸の方針に左右されます。

現在では、ある程度、役所側に政策立案をできる余地があります。しかし、安倍政権時の忖度文化が残ってる、自由に政策立案する文化に翳りが見られる、という指摘もあります。

一方、小さな現場レベルでの政策立案の余地はまだまだ大きいと言えます。

例えば、最近では、スタートアップの促進、規制撤廃などの政策が粛々と動いていますね。

こういう点では、いま、中途で霞が関で働くことのやりがいは、あると言えます♪

官僚たちの夏

次に、官僚を主人公にした小説を紹介します。

霞ヶ関での1年のスケジュールや、組織のダイナミズム、ツールを押さえるためにお薦めです。

官僚たちの夏は、1980年出版の昔の作品ですが、政策立案、打ち上げのタイミングや、省内での説得方法や、政治家への根回し等、まだまだ学べることは多い作品です。

例えば、以下の記載があります。

予算編成期に入り、霞が関一円では、ひとの動きが、あわただしくなった。代議士たちが走り回り、陳情団体や圧力団体が右往左往する。

通産省は、各省にくらべ、予算規模が桁はずれに小さい省である。かつては許認可、いまは行政指導と、いずれも予算を必要としない仕事が、主流のせいである。

だが、この秋は、少し様子がちがっていた。風越の企業局が、通産省にしては珍しくかなりの予算措置を伴う新規事業を立案することに決めたからである。

この記述は、いまにも当てはまります。

2022年に、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場を筆頭に、キオクシアホールディングスの四日市工場、米マイクロン・テクノロジーの広島工場の3カ所を対象に総額6170億円の補助金が投入されました。

まさに、多額の予算を伴う新規事業です。

これを見ると、官僚たちの夏に描かれている内容は、現在でも当てはまることが多いと言えます。

ちなみに、官僚たちの夏の舞台は、通商産業省ですが、2021年に、官僚たちの夏をコピーし、舞台を厚生労働省にした作品も、同じ新潮社から発売されています。

時間がある人は読んでもいいと思いますが、官僚たちの夏を超える作品を期待したのですが、ストーリー展開もオチもイマイチだと感じました。
(このレベルでよく出版社が出版許可したなー)

それでは、続きは、次回Part3の以下を参照ください!!!


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