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連載小説★M&A春風 第62話 戦略的提携に係るご提案(添付)

第1話はこちら

「次からは具体的な内容を記載しております。ざっと概要を流して説明いたします」

 真奈美は、ポイントに絞って足早に説明をしていった。

 まず、本提携に至る想いについて。
 当社としては、労働力不足の建築現場に貢献したい。
 三島建機のこれまでの取り組みや現在の方向性への賛同。
 日本として重要産業であり、海外企業に負けずに盛り上げるべき。
 三島ブランドと白馬ブランドが組めば新しい価値を生み出せる。
 その第一弾が今回の現場作業ソリューションのJV。

「……これは、君が書いたのですか?」
「IWBC証券のドラフトをベースに、事業本部と一緒に仕上げました」
「そうですか。まあ、日系金融っぽいアプローチ書面ですね」

 外資系投資銀行出身の鈴木としては、このような感情的なアプローチはあまり馴染みがなかったのかもしれないが、とはいえ否定することなく続きを聞く。

 当社による建機市場と現場作業ソリューション事業の見立て。
 三島建機の市場ポジションや事業構造、バリューチェーン。
 当社の事業内容の簡単な説明。当社のパワードスーツの紹介。

 そして……共同事業のアイデア。

 この部分を構築するのが、最も大変だった。
 相手の内容もよくわからない中で組手のアイデアを作らなければいけない。半分創造の領域だが、それでも本気度を見せるためにもネタは必要だ。

 事業本部に相当アイデアを捻り出してもらうことで、なんとかそれを作り上げた。

「あまり具体的なアイデアにはなっていないか……まあ、この段階ではこんなものだろうな」

 鈴木は若干の皮肉は言うものの、特に大きな異論は示さなかった。

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#エムアンドエー
#共同事業

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