見出し画像

子供のための優しい物語 君たちはどう生きるか 

ぽわぽわした不思議の世界の中で、はっきりと感じたものは、未来を生きる子供たちに向けた優しい眼差しだった。
物語の本質も細かい点も理解しきれず、気持ちをうまく言葉にできないというのに、涙がぼろぼろ零れ落ちた。

私が感じた2つの強い気持ち


・世界は不思議で不確かなもの

現実を生きていると、社会を世界を分かった気になってしまう。
でもここで生きてる私たちが本当に知ってることなんて僅かなんだと思った。
産まれる前のこと、その後のこと。平和である理由。誰かや何かが犠牲になったり、支えたりして世界はなんとか成り立っている。
不安定な積み木のように曖昧なもの。
「不思議の国のアリス」のようなナンセンスな意味の無いような、よく分からない下の世界の有り様を見て、そんな風に感じた。
結局、大叔父様が守っていたものは崩壊して、ヒミは涙ながら感謝して、皆バタバタと去っていき、世界はどうなったのかも全く分からない。
(その様は本当に不思議の国のアリスだった)
それでも、マヒトの世界がいつも通り流れているのは、誰かがそっと積み木を積んでくれているからなのかもしれない。
一度あったことは忘れないものさ。 思い出せないだけで。
いつか不思議な世界のことは忘れてしまうかもしれない。それでも、そんな千と千尋の神隠しの名言が頭に浮かんだ。

(とはいえ、岡田斗司夫などのすごい人の解説は見たい笑)

・前向きに生きるというメッセージ

「風立ちぬ」を見終えた後に、勝手ながら宮崎駿は子供のためではなく自分のためにこの作品を作ったと思った。
多くの純文学が作者自身のためであるように、告白文学のような、自己の浄化のためのような。
最後の作品をそんな風に作るなんて、かっこいいなと思った。世界平和とか自然とか、日本の伝統とかとちょっと違う、人間の愚かさみたいなものを描くなんて、と。
でも、本当の最後に作ったこの作品は確実に子供たちのためだと思った。
眞人が元の世界で友達を作りたいと言ったこと。
そして、世界を守るという役割を押し付けずそれを何も言わず受け止めた大叔父様の眼差し。
ヒミの言った「お母さんになりたい」という言葉。
地球儀を回すように私たちは丁寧に生き、そしてそれを大人はあたたかく見守ってくれている。
そう思うと母になったばかりの私の心に訴えるものがあった。

その他細かい素敵なところ


・始まりの火事の場面
階段をドタドタと降りるところ、火の渦となった街並みや人間の異質さ。

・不思議の国のアリスのようなある種王道な異世界に迷い込むストーリーが全然ベタにならないところ。

おばあちゃんたちの役割と夏子さんの女っぽさ
年齢が違うから!?あまりに女の描き方が違うからてうーんと思っちゃったけど、夏子さんはThe女!おばあちゃんたちはお守り。
夏子さんの登場から脚!って感じで良かったです…。
おばあちゃんのもぞもぞも面白かった。マヒトがタメ口だったり悪い態度とりつつ、みんなと同じご飯を綺麗に食べるなどしてたところも甘えてる感じが良かった。
「大嫌い」のセリフも含め夏子さんの存在について考えたい。

・眞人さんの表情の変化

・豪華な声優人
菅田将暉は流石!火野正平もすごかった!自転車漕いてる変なおじちゃんというイメージだったけど、なんか歳を重ねた魅力いっぱいでかっこよかった。
あいみょんなぜ?抜擢!?意識して聞いていなかったから気になる。
キムタク良かった!
キムタク苦手なんだけど、マッチョイズムの権威、鈍感真っ直ぐ悪意はないけど悪の塊みたいな男を快活に演じてて素敵だった。

・米津玄師の歌
素敵ですね。
パプリカ並の感動はなかったかも?!しっかり聞いたら気持ちは変わるかな?「ひこうき雲」的なシンプルだけどスカッとした感じはあったかも。
あえてそういう風にごちゃごちゃしていない曲にしたのかな。

前情報がない映画という宣伝のおかげで、始まる前からとても緊張していた。重いテーマだったら受け入れられないかも…など。
でも、この映画は重いテーマが込められているだろうけど、ちゃんと児童文学だった。
不思議の国のアリス、ナルニア国物語、果てのない物語、霧の向こうの不思議な街…なんかの王道が浮かんだ。
(読んだことないんだけど…「失われたものたちの本」も読みたい。)
子供のために、誰かが作った物語は、いつもとても優しい。

大好きな娘と共に、たくさんの児童文学にもう一度触れたい。
子育ての楽しみが増えた気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?