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【日報】休職しているのである (※9月28日 追記あり)

 休職しているのである。メンタルがメタメタにやられたらしい。
 やられの原因について詳しく書くつもりはないが、要約すると「仕事」「私生活」「社会状況」の3つである。つまり人を取り巻く全て、ということになる。逃げ場……なし!

 一年くらい前から夜に寝つけなかったり、体がハイパーだるかったり、急に胸が苦しくなったりはしていた。
 ただそういうのは以前もあったので「疲れてるなぁ」「老化だなぁ」「ストレスだなぁ。前も不整脈やったし」などと思うだけだった。

 数ヵ月前から、仕事中に単語とか言葉がサラッと出てこなくなったりした。使用頻度が中以上の単語などである。
「ペン」とか「パン」とか「タニシ」とかはスッと言えるけど、「掛売」「ボリシェビキ」「シルバーチャリオッツ」などがパッと出てこない。

 この時も「いやぁ、疲労が蓄積しているな……」程度にしか感じていなかった。あるいは「これが『老い』か……」などと考えて、「やぁ、私も年をとりましたわい」と言いながら笠智衆の顔つきで遠くを見るなどしていた。


(参考画像)


 ところがどっこい2ヶ月くらい前であろうか、今度は「口が回らない」「ろれつが回らない」というのが来た。人と相対すと首や胸や肩のあたりの筋肉がこわばって、二言三言を喋るのにも一苦労という日もあった。

「脳?」と思った。脳梗塞とか血栓とかなんかそういうのがアレするとこういうアレになるというのはよく知られたことである。
 そんなわけで脳を調べてもらった。
 異常なし。
 ちょうど健康診断もあったので結果を心配して待っていたが、おおむねなんともなし。

 こうなってくるとじゃあ「心」ですよね、ということになってくる。

 そういえばここ一年弱、面白いことや心弾むことがガクンと減っていた。以前と比べて本やマンガや映画などをあんまし手に取れないのだ。
 嬉しいニュースでワァ……となることは多少あった。が、休みの日は全日ダルダルで、なんもできねぇということもどんどん増えてきていた。
 最近は週一更新のマンガ1作、怖い話のネットラジオ的なやつ、くらいしかワクワクした心持ちで摂取できていなかった。

 で、ちょっと無理して読んだり観たりしても、よほど超すごい代物でない限りはツーッ……と目が滑るし頭に残らない。こうなると面白くても面白くなくても自分なりに楽しく記していた感想文の筆も乗らない。
 それでもなんとか書こうとしていると、「作業的じゃない?」「無理してない?」「世間の目を気にしてるのでは?」などともう一人の自分が囁いてくる。楽しくない。とても疲れる。

 そういえば以前はポツポツ書いていたオリジナル小説(のようなもの)もパッタリ書けなくなった。アイデアはあるのだけど書く気力がわかない。数行書いてみても終始「なんか……面白くないね……」みたいな気分に囚われてやめちゃう。

 今年「完結編」が公開されてその終わり方に「エーッ!?」となった某特撮の、「30年後の本当の完結編」を僭称した「二次創作」も継続できず、休載みたいなことになっている(ちなみにプロットはガッチリ完成している)

 月1~2本書いている怖い話はこれ、元の素材が美味なので私はチョイと整えて皿に盛り付けているだけである。「元の面白さ」が保証されているのである意味、安心して手をつけられる。なのでやれている。例外である。Twitterで戯れにやってる「血忌禍話(ちいかわ)」も同様。なんだ「血忌禍話(ちいかわ)」って。俺にもわからん。


 前述の身体的な症状が露骨に出てきたことで、こらへんの気力減退にも得心がいった。ストレスの積み重ねは意欲の漸減となって現れていたのである。
 あーなるほど、そういうこと!
 なるほどなるほど!

 ……でもまあ……ほら! コミュニケーションはとれるし、どうにかなるよ! 人手も足らないし!

「すいまへん、このしょりゅいは、こちらにおいゃたしすればいいんでしゅか?(すいません、この書類はこちらにお出しすればいいんですか?)」

 って回らない口で言っても、通じることは通じるからね! これから繁忙期だし! 人手も足らないし!(2回目)

 とか考えつつ働いていたある日のこと、職場で歩いていたら急に膝から力がカクン、と抜けた。
 あれっ? となった。
 体が棚にぶつかったので倒れるまではいかなかったが、これはショックであった。

 それからちょくちょく、「ちゃんと歩けない」みたいなことになった。膝のあたりがグニョグニョになるのである。
 どの時も苛立ちや腹立ち、イライラや心配事が生じた時、あるいはその後のことである。苛立ちや心配事の軽重は問わないので、時には一日の半分超をグニョグニョで歩くことになる。
 総合すると、体調が終始悪く、単語や文章が口から出てこず、ろれつが回らず、膝はグニョグニョ、そういうことになった。
 こういうのはまったく、はじめてのことであった。

 ……よし、これは無理!!

 そんなわけでその筋の人に診断書をもらう算段をとりつけ、偉い人に相談し(これもまたストレス)、繁忙期の極みみたいな時期はどうにか勤めますがその後にちょっと、こう……申し訳ないんですが……みたいなお願いをし(これもまたストレス)、
 急遽、といった感じでもってココからココまでお休みということとなり、その後は職場の人全員と、

「いやぁもう急にアレなんですが調子がアレなのでお休みを」
「あ~そうですか前からおかしかったですものね」
「いにゃあご迷惑をおかけしみゃすが」
「いやいやゆっくり休んでください」
「いやいや本当にご迷惑を」
「いやいや」
「いやいや」
「まぁまぁ」
「まぁまぁ」

 といった奥ゆかしいやりとりを20回ほど繰り返し(これもまた以下略)、不在中の私の仕事の取扱説明書をスキマ時間などに書きつつ、ムニャムニャのグニョグニョで繁忙期を生きて乗り越えて、無意識の内にマスクの中で口が動いて愚痴が洩れ出たりもしたが生き残り、今、休んでいるわけである。

 ここまで読んできて疑念を持たれる方もおいでだろう。
「こいつメンタルやってんのにメッチャ文章書いてるな?」と。
「しかも文章が軽いし……本当にメンタルの調子悪いの?」と。
 
 これは類似の体験談でよく書かれる/描かれることであるが、「長い休みがもらえても、休み方がわからない」ということがままあるらしい。
 私も休みに入って実は2日目(ただし昨日は用事があり職場へ行き、来たついでなので少し働いた)なのだけどまさに「(長期の)休み方がわからない」状態である。 
「ハーッ、なんか、なんかせにゃ。そうじゃ今の状態を書けば落ち着くだろう……」
 と、謎の焦燥感に駆られてこの文章を書いている。

 つまり先の疑念には、
 「大丈夫です! マジで調子悪いですよ!」
 とお答えしておきたい。

 ここまですっかり書き忘れていたがこの文章、「心を病んだ私の日記」みたいな重いものではない。この文章の軽さからもおわかりだろう。

 加えて書いておくなら

「ブラック企業に潰された私」
「理解のある彼氏」
「理解がないくせに束縛する毒親」
「極悪非道の上司」
「友人に言われた心ない一言」
「救われた親友の言葉」
「どうにかして生きている私のがんばり」
「ストレス社会を生き抜くには? 4つのポイント」

 みたいなものもない。お読みいただいた通りこういモノはなかったし、周囲には恵まれている方である。その代わり劇的に救われたこととかもないわけだが……
 ここから下↓にも、「私のつらかった人生」とか、役に立つようなお話はない。お手軽レシピとかKindleセール情報とかもない。なんにもない。

 世に数多ある、大変にご苦労をなさっている方々の記したモノと比べると、いかにも文章や内容が軽い、と自分でも思う。書いている本人が言うのだから間違いない。
 しかしまぁ、こういう意味の薄い、重さの少ない、まるで役に立たない文章というのが世の中のそらへんにフワフワ浮いてても別にいいのではないかと思ったりもする。
 そういう「無意味ではないけど意味があるってほどでもなく、役には立たないし知的好奇心も刺激されない」みたいなんが最近の世の中にはあんまりなくて、これもまたストレスになってたりしないだろうか? とかふと今思ったりした。ほらサブスク疲れとか言うし……どうなんですかねそらへん……

 なんか面倒な話になりそうなのでそろそろ切り上げてしまおうと思う。無責任に書き終えられるというのもまた役立たずの文章のよいところだ。いやぁ楽だ。楽をしていくぞ俺は。

 簡単にまとめると、

「私は、疲れてるので、休んでいます」

 ということになる。
 だから貴方も休みなさいとか、いや逆に頑張りなさいとか主張するつもりはない。

 私は、疲れているので、休んでいます。

 これはそれだけの文章である。


 ここまで読んでいただいてありがとうございました。






 …………いや、これ以上は本当に何もないですよ?

【おわり】

☆追記

 9月の半ばくらいから復職しているのである。
 2週間くらい経ったけどどうにか、休み休みながらやれている。無理はしないと決めたからである。
 それはそうと私がいない間に職場の人間関係が悪化しており、放置したタニシの水槽を思わせる濁り方になりつつあるが、私には直接は関係がないのでスーーーッと受け流している。
 か、関係ないんだからねっ。そっちの流れに巻き込まないでよねっ。
 勘弁してください。

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