1866〜1925

1866〜1925

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除夜の鐘

「ゆっくりと吸って、吸いきったら吐いてー」誘導に従って呼吸を繰り返す。心地のよい声と雰囲気、フランキンセンスの良い香りがする。 「もう一度吸って、ゆっくりと吐いて」声はイメージするように告げる。新しい時間、場所に存在する自分の肉体を。「準備ができたら目を開けてください」身体がポカポカと暖かい。呼吸をするたびに身体の内側が甘い感じがした。私はゆっくりと重たい瞼を開いた。 気がつくと、金玉が除夜の鐘だった。 2024年0時00分。「あけましておめでとうございます」TV中継は

    • 0824-0826

      0824 大音量で鳴り響くニュルンベルクのマイスタージンガ―を背景にゆっくりとエスカレーターで上昇していくおばさん、おじさん、ベトナム人、中国人、ネパール人、小学生、そして私。エスカレーターの両袖は鏡張りで滑らかに風景の中を動いていく自分と目が合うと不思議な高揚感に包まれる。 このスーパーでは改装してからというものワーグナー以外はかからなくなった。鮮魚コーナーでおさかな天国を聴くこともない。特売の情報だけは店内放送とは別に売り場に置かれたスピーカーから流されるが飽くまで主体

      • 0808

        8月らしい青空、アスファルトの匂い。 空から人が降ってくる。 地面に散らばった肉片をすぐに人間だと認識できない。ただ変な方向に向いた洋服と髪の毛で人なんだと思う。黒く濡れているのが血だ。頭の芯が冷えてくるような感覚。周囲の音が消えて生暖かいような匂いがした気がする。遠くの方から救急車の音がしたから別の通りへ出て駅へ向かう。しばらくして遠くでAEDか何かの音。 時間はお昼ちょっと前、新宿に出て松屋に入った。右足だけ1㎝伸びたらこんな気分がするんじゃないかと思う。なんとなく身体

        • 1011

          友人が壁に取り付けられた機械に向かって何か喋っている。 それはインターホンでそのインターホンは伝言を残すことと伝言を残した人を撮影することができるらしい。「でも、三人までしか残せないんだ」と友人は悲しそうに言った。 世界には困ってる人がたくさんいるのに3人しか選べないなんて、なんて残酷なんだろうというようなことを言っている。それでハッキリと頭がおかしいということが分かったので、あまり関わらないことにしてうんうんと曖昧に頷くことにした。すると、3人という上限がとても重大で悲し

          0619

          「あっ、これ羽田に向かってるけど俺、成田だわ…」 国内線は昔から羽田に決まってる。ところが東京から沖縄間を結ぶジェットスターは成田から出るらしい。今朝家を出るまで、何度もメールを確認した。それでも東京のあとにカッコで閉じられた(成田)は先の先入観から私には羽田に見えていたのだった。 浜松町から羽田に向かうモノレールの中で気がついた。快速急行だからもう降りることもできない。羽田から成田への移動経路を調べたけれど、13:40分成田発の飛行機に間に合う手段は見つからない。「楽し

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