吉田独歩

一応ドイツの大学院生だが、日本の実家に戻ってきているので実質ニート。春から麻酔の研究を…

吉田独歩

一応ドイツの大学院生だが、日本の実家に戻ってきているので実質ニート。春から麻酔の研究をする予定なので、麻酔・鎮痛の話を中心に書きます。

マガジン

  • アドレナリンと麻酔

    アドレナリンと麻酔薬の関係を理系科目が苦手な方向けに説明してみようと書いてみた一連の記事です。最終的な目標はデクスメデトミジンという麻酔薬について何となく理解してもらうことと設定しました。 よかったら改善点等コメントしていただけると嬉しいです。

最近の記事

キンカン塗って居眠り防止?

約10年前、高校生だった私は日中、毎日睡魔と戦っていた。 授業が分からなかったわけではない、夜間の睡眠も7~8時間は取っていて、運動部に所属していたわけでもなかった。くせに、ずっと眠かった。 そのことがとても恥ずかしくて、少しでも眠気が出てきたら授業中に発言して無駄に注目を集めることで、緊張により眠気を覚ましていた。頭はよくないので、発言の数が多いだけで結構間違ったことを言ったりして、毎回授業終わりには変な汗をかいて疲弊した。進学校だったので、内心「あんな低レベルな授業でも一

    • ボツ原稿2024/2/9

      母親に「何のために生きているんだと思う」と聞かれた。 この質問をしてきたのが肉親でなければ、「意味なんてないから寿命まで自分で勝手に見出すんだよ。」と言う回答を用意しているのだが、お腹を痛めて産んだもらった相手に「生きている意味なんて特にない」とは言えない。 非常に回答に困ったので、幼児教育の本で読んだやり方で一旦かわすことにした。 「お母さんはどうしてだと思うの」と私は質問に質問で返した。 母親は「美味しいものを好きに食べれないなら生きてる意味ないんじゃないかなと思う。」と

      • キチガイなすびと恋なすび(前編)

        「Anesthesia(麻酔)」という言葉は、ギリシャ語のAn(No;無)とEsthesia(Feeling;知覚)を組み合わせて作られた言葉で、1世紀の終わりごろのマンダラゲという植物に言及した論文で初めて出てきた。 (※ただし、このときに使われた「Anesthesia」は現在の意味でのAnesthesiaとは若干意味が異なり、医療的な麻酔のこととして定義されたのは1846年のエーテルによる全身麻酔が成功したときからであったらしい。) この人類初の「Anesthesia」が

        • アドレナリンと麻酔 #5

          前回(#4)は、アドレナリン受容体の種類について書いた。 そして、記事の最後に#5ではデクスメデトミジンについて書くことも予告していたので、予告通りに書き進める。 ただ、ほぼ毎回言っている通り、この記事は理系科目が苦手な方でも読めるように書いていくつもりなので、知っている人にはじれったい記事になることをご了承いただきたい。 前回までに説明して今回サラっと使う専門用語について簡単におさらいをすると、「受容体」は特定の物質(これをリガンドと呼んだ)をくっつけるとスイッチが切り替

        キンカン塗って居眠り防止?

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        • アドレナリンと麻酔
          5本

        記事

          ボツ原稿 2024/2/2

          先日、祖母と二人きりで回転寿司を食べに行った。本当は焼肉が良かったし、なんなら外食は苦手なので行きたくはなかったが、祖母が行きたいと誘ってくれたので行った。 2月の下旬から私は実家を出て一人暮らしを再開するが、一人暮らしをする部屋の家賃は祖母に払ってもらうので、祖母の誘いを断るのは気が引けた。 祖母に家賃を払ってもらう部屋での一人暮らしは、一人暮らしと言えない気がして、頭が柔軟な友達には「実家で暮らしている」と言うようにしている。私は自分で家賃を払わない一人暮らしを、子供部屋

          ボツ原稿 2024/2/2

          大腸内視鏡での鎮静剤体験記

          人生で親よりも先に経験するものというのは、(少なくとも私にとっては)珍しい。もちろん、親の方が大体20年先に生きているのだから、大部分の人が経験するようなことは自分より先に経験していることが当たり前だし、自分だけが経験して親は経験しないことも「人生で親よりも先に経験するもの」には含まれないので、厳密にいえば、親が死んでしまうまで「人生で親よりも先に経験するもの」の数は決定しない。 そんな貴重な体験に分類される私の思い出の1つに大腸内視鏡検査がある。7年前に私が初めて胃カメラと

          大腸内視鏡での鎮静剤体験記

          アドレナリンと麻酔 #4

          #3 では受容体とは何かという説明をした。アミノ酸というレゴブロック1ピースをたくさん積み上げた構造物がタンパク質であり、特定のモノ(これを専門用語でリガンドと呼ぶ)をキャッチすることでスイッチが切り替わるタンパク質が受容体であるという説明であったと思う。 理系科目が苦手な方にも読んでいただけるよう書いているつもりなので、色々とまた補足説明という名の脱線をするかもしれないが、今回はいよいよ「アドレナリン受容体」について説明していく。 アドレナリン受容体とは、文字通りアドレナ

          アドレナリンと麻酔 #4

          アドレナリンと麻酔 #3

          #2においては、ノルアドレナリンの話をした。名前がアドレナリンのノル(化学構造が1つ欠けている)であるという、アドレナリンありきの名前でありながら、脳内ではアドレナリンよりもよくその働きが知られていて、中でも睡眠と覚醒に関わる機構におけるノルアドレナリンの役割は、その機構を利用して麻酔をするための薬まで作られる程度にはよく分かっているという話をした(つもりである)。 今回の記事では、それだけ色々な脳の仕組みに関わっているノルアドレナリンの機構の中で、なぜ睡眠と覚醒に関わる機構

          アドレナリンと麻酔 #3

          アドレナリンと麻酔 #2

          #1ではホルモンの話に文字数を使ってしまい、ノルアドレナリンの説明が「アドレナリンより知名度が無い」くらいしか出来ていなかった気がする。 ので、今回はノルアドレナリンについて厚く書いていこうと思う。 まず、ノルアドレナリンのノル(Nor-)の意味は、元となる化学物質から一つ欠けた(大抵メチル基が欠けている)ものを表す接頭辞であるらしい。 実際、アドレナリンが発見されたのは1901年であり、ノルアドレナリンは1946年に見つけられた。アドレナリンを基本として、その化学構造がち

          アドレナリンと麻酔 #2

          ボツ原稿 2024/01/26

          今年、北海道の別海町から直木賞受賞作家が出た。ニートになってから習慣となったテレビ鑑賞でその情報を知った。番組は夕方の北海道ローカルのワイドショーで、地元から受賞者が出たことをお祝いするという文脈で別海町の様子が放送されていた。その内容でひとつ私の中で引っ掛かったことがあった。 ワイドショーのリポーターは直木賞受賞作の人気ぶりを表す文脈で、「図書館でその本を借りようとすると、既に3か月待ちです」ということを嬉しそうに語った。 私は率直に、買えよ、と思った。 応援する気持ちがあ

          ボツ原稿 2024/01/26

          アドレナリンと麻酔 #1

          興奮・緊張の表現として「アドレナリンが出まくって」という言い回しが非医療従事者のお友達の口から出まくったとしても、私は「この人は陰で医学を独学しているんだ」とは考えない。 それくらいには、アドレナリンという言葉はホルモンの中では認知度の高い物質であると思っている。 ただ、2文字足して「ノルアドレナリンが出まくって」という話をしだすお友達がいたら、私は「この人空気読めないんじゃないかな」と考えてしまう。 2文字足しただけでそれぐらい認知度の差があると私は思っている。 今回から

          アドレナリンと麻酔 #1

          ニート、麻酔を学びたい。

          世界で初めて全身麻酔による手術を成功させた人は華岡青洲という日本人である。「通仙散」という華岡青洲考案の薬で麻酔をしたと言われている。通仙散は、チョウセンアサガオやトリカブト(どちらも猛毒の草)を原料に絶妙な配合のもと作られた薬であり、この配合を見つけるために華岡青洲は自分の母親と妻を被験者として治験を繰り返した。 その結果、母親は中毒で死に、妻は盲目になってしまったという。 母親の命と妻の視覚とを引き換えに、華岡青洲は世界で初めて全身麻酔薬を使った手術を成功させ、多くの人の

          ニート、麻酔を学びたい。

          糖尿病と麻酔 #2

          昨日は糖尿病に詳しい内科医の友人と久しぶりに長電話することが出来たので、つい「糖尿病と麻酔」なんて記事を書いてしまったが、持っている本でサッと勉強できる内容で、かつ、麻酔薬も関与してる話は外科手術の際に切られたストレスに応答して出てくる抗インスリンホルモンによって血糖値が上がる(外科的糖尿病)という話に関連するもの以外見つからなかった。 漫画の銀魂に「一時のテンションに身を任せる奴は身を滅ぼすんだよ」という名言があるが、まさにこれの典型例である。 つまり、昨日書いた記事には「

          糖尿病と麻酔 #2

          糖尿病と麻酔 #1

          ニートになってから失ったものは多いが、少しだけ得たものもある。 毎日祖母に代わって面倒を見ているネコの信頼、アラサーニートが世間からどういう眼差しを向けられるのかという学び、そして、友人の詳細な近況報告である。 内科医になった友人はまだ駆け出しだが糖尿病に詳しく、かつて医学部を目指して浪人をしていた私におさがりの参考書を貸してくれた。浪人が決まったと報告した時に優しくしてくれた彼は、アラサーニートになった今の私にも優しかった。ニートの話し相手になってくれる中で、個人情報の漏洩

          糖尿病と麻酔 #1

          緩い応援歌(になる予定のもの)を作成

          今年最初の曲を作った。作ったとは言っても、上の動画(といっても静止画に曲を貼り付けただけ)の段階では未完成で、この状態に歌を付け加えるつもりである。 未完であるにも関わらず曲を投稿するのは、いつも歌付きの曲を作ると、歌を蛇足に感じてしまうことがよくあるからだ。だいたいいつも歌をつけることを前提に曲を作っているはずなのに。 そういう事情で、歌をつける前の段階での曲の背景をこのページに記録しておこうと思う。 この曲のタイトル「忘日」は「ぼうじつ」と読む。私が初めて作った曲「天与

          緩い応援歌(になる予定のもの)を作成

          ウエットティッシュにリドカイン

          ニートの朝は遅い。私は最近いつも午前10時くらいに起床している。 大体、その時間に起きて朝ごはんを用意して(又は用意してもらって)、ご飯を食べながらテレビを見ようとすると、テレビショッピングが放送されている。私が物心ついたころから恐らくほとんど変わってない抑揚の激しいセールストークはある意味「一本調子」で、水戸黄門を見ているときのような予定調和に対しての安心感を覚える。そんなテレビショッピングでお馴染みの健康食品等(サプリメントとかのこと)についての話。 厚生労働省では平成

          ウエットティッシュにリドカイン