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ヴィジュアル系オールタイムベスト音源50選

こんな本が夏のコミックマーケットにて販売されました。


企画自体は知っていましたが、コミケで売るとは思いませんでした。
そして読んでみたところ、これがとても面白くて、年代ごとにバランス良く音源が選ばれていて読み応えがありました。
自分は3歳の頃にLUNA SEAと出会い感銘を受け、5歳でライブに参加し、気づいたら数十年経っていました。
空白期間はあったものの、ヴィジュアル系は自分の中に常に息づいていた音楽でした。
そこで出会った音源の中から50枚を僕もこの企画に触発され選んでみました。1バンド1枚縛りになります。
読んでもらえると嬉しいです。


50.Blu-BiLLioN「SicKs」

10年代のV系で、カラフルにポップで色鮮やかな世界をヴィジュアル面でも楽曲面でも志向してたResister Recordsの面々の中でも、個人的に刺さったのがこのバンド。耳馴染み良く入ってくるメロディと良い意味で軽さを感じる手の広げかたは近年の若手の中でもクオリティ高いですね。あと面白いのは荒井由美「翳りゆく部屋」のカバー。何故これを選んだのか。でもアルバムの流れとしては違和感なく溶け込んでます。この後の作品もヘヴィなサウンドやEDMを意識したサウンドで品を変える感じでしたが、2021年のライブをもって解散。惜しいバンドでした。


49.Dish「闇と葬列と切り裂き雨」

Youtubeで音源を試聴して即買いに行きました。薄暗くジメついたオルタナティブ/シューゲイザーサウンド。ねちっこくありながらも時に擦り切れるかの様に歌うボーカル。完全に日影者の為の音楽ですね。後にリメイクされる「メロウイエロウ」はこちらの方が好みです。現在はバンド名をdishes are schemingと改名をして活動中。


48.Kagrra,「燦〜san〜」

和風のエッセンスを取り入れるバンドは多々ありましたが、その中でも彼らはアートワークやコンセプト、楽曲の世界観も含めて頭ひとつ抜けていた印象があります。このアルバムを選んだのは「皐月」が入っているから。日本人ならではの侘び寂びあるメロディと涼やかなギターサウンドを奏でる名曲です。ライブをいつか観たいと思っていた頃に解散の報があり、その後vo.一志はこの世を去ってしまった。


47.摩天楼オペラ「真実を知っていく物語」

メンバーチェンジを経て新体制となってリリースされた最新作。従来のシンフォニックメタルをベースにしたドラマティックな楽曲展開をさらに突き詰めて、過去最大の濃密具合と聴きやすさを両立した作品だと思います。「終わらぬ涙の海で」の勇猛に突き進む展開は素晴らしい。


46.the god and death stars「it isn't a singles」

ささくれたったオルタナ/グランジサウンドの渋みある楽曲でV系の中でも異物として存在していたdeadman。そのギタリストであるaie率いるこのバンドはその延長線上として相変わらずジメっとした演奏をしております。オープナー「焼失」から悲惨な状況と無情なサウンドが吹き荒れる世界。その中でもお気に入りなのは「真っ赤な雪」。エモーショナルなギターサウンドに乗せて歌われる遣る瀬無い感情は刺さるものがあります。


45.FANATIC◇CRISIS「THE.LOST.INNOCENT」

僕が小さい頃にハマっていたバンドはLUNA SEAと黒夢とこのFANATIC◇CRISISでした。「Rainy merry-go-round」をTVで聴いた時に親にCDをねだりましたから。「火の鳥」「maybe true」などの代表楽曲も良いですが、個人的には「龍宮」や「運命と哀しすぎる予感」などのメロディが立ってる楽曲に惹かれました。FANTASTIC◇CIRCUSとしてメンバーは減ってますが復活。ライブ行きたいですね。


44.D≒SIRE「終末の情景 -La Scéne Du Finale-」

未だに熱狂的なファンや憧憬を持つ人が多い「90年代V系」。このバンドは当時世間を賑やかせたバンド達に比べると知名度は劣るかもしれませんが、V系が好きな人なら間違いなく刺さると思うし、「90年代V系」としてのサウンドを奏でる存在としてD≒SIREの右に出るものはいないと思います。個人的に「90年代V系」の音といえばD≒SIREかROUAGEというイメージです。


43.SOFT BALLET「愛と平和」

L'Arc〜en〜CielやBUCK-TICKをV系かどうかという議論よりも、SOFT BALLETはV系なのか?という話の方が議論を呼びそうだと思うのですが、あまり見かけないような。単体で好きな曲は「WHITE SHAMAN」や「BODY TO BODY」とかなのですが、アルバムとなるとこれ。湾岸戦争当時に作られたアルバムとのことですが、今の世界ともリンクすると思います。特に「VIRTUAL WAR」は今の方がリアルに感じるかもしれません。


42.Alice Nine.「GEMINI」

個人的にこのバンドはずっと楽曲のクオリティに反してメンバーの力量がアンバランスな印象がとてもあったのですが、このアルバムは大化けした印象です。特にラストの表題曲「GEMINI」は3曲構成の組曲。聞き馴染みの良いメロディとプログレ的な構成の組み合わせはかつてのLa'cryma Christiを連想します(実際ラクリマフォロワーの側面はある)。もちろん他の曲も佳作ぞろい。


41.シド「play」

10年代以降のヴィジュアル系でマスに広くアピールできたバンドの一つだと思います。元々のジトジトした歌謡曲モチーフの路線ももちろん好きなのですが、今に繋がるポップ面をアピールする為の足掛かりとなった作品はこれかなと。
特に「シャッタースピード」は曲調もだけど歌詞の内容もヴィジュアル系からかなり程遠くてビックリした。それでもこういうのがサマになるのはこのバンドの強みだなと。


40.kannivalism「helios」

前作「Nu age.」を聴いた時はメロディの良さと軽さを強みとしたバンドなのかな?と思ってましたところでこの2ndフルアルバム。びっくりしました。元々メインコンポーザーである圭がポストロック/シューゲイザー趣向というのもありますが、その趣向が割と強く出てます。baroque時代とはまた違う涼やかな感触または心の内側にある翳りを表現する楽曲群達。そういえばこの辺りからrockin'on japanに載ったり、COUNTDOWN JAPANに出てたりしてましたね。


39.Moran「夜明けを前に」

彼らのラストとなった作品。ジャケットのアートワークや楽曲の統一感を含めると、4曲という収録数ですがこれが彼らの作品の中で一番しっくりくる作品でした。「幸福についての尺度」の透き通る程青を感じるサウンドや、「夜明けを前に」のフィナーレに相応しい雰囲気、そして「the scent of dreams」の白く広がる世界。Hitomi氏のバンドではMoranが一番好きかなと。


38.Develop One's Faculties「INVERSE ЯEVERSE」

V系界隈の中では珍しいギターボーカル(さらにめちゃくちゃ弾き倒すタイプ)で、奏でるサウンドも近年のボカロ系統の情報量のギターロック寄りの音。今回の作品はバンドのアンサンブルだけで聴き手を叩きのめすかの如くなアルバム構成。昨今のV系界隈の流行と真逆をいく形な姿勢は好きです。個人的にはこういうバンドが欲しかったので、もっと売れて欲しかったりします。


37.GLAY「HEAVY GAUGE」

当時、飛ぶ鳥を落とす勢いでの人気を誇ったGLAY。その絶頂期にリリースされた作品は華やかに見える道とは対照的にバンドがヘヴィな状況にあると暗示してるような作品でした。よく考えたらGLAYって生活や置かれてる環境に密着した音楽をずっと描いてきたんですよね。LUNATIC FEST.出場時に1曲目に演奏された「HEAVY GAUGE」がとても印象的でした。


36.DEZERT「black hole」

正直、彼らが最初に出てきた時は昔のグロテスク系V系の焼き回しか?と思って敬遠してたところはありました。しかし彼らは作品を重ねるごとに自身の持つ劣等感を消化し、荒削りながらも外に向けて意識を向け自分達の存在を強く証明をしていく姿に目が離せなくなっていきました。この作品はそんな彼らの広い世界に対しての意志とそれでも尚燻る自身に対しての気持ちが融合して、より大きな存在感を増したことを証明する作品でないかと思います。


35.D'espairsRay「[Coll:set]」

ムックなどのバンドよりも先に海外進出を果たしたバンドですね。ゴスとモダンヘヴィネスの衝動が融合した名盤です。オープナー「infection」の怪しく立ち上がる雰囲気から「Dears」の切り込むかのようなサウンドはテンション上がりますが、ハイライトは「灰と雨」〜「Tainted World」の流れ。個人的にはEvanescenceとかとタメを張れるんじゃないかと思ってます。


34.gibkiy gibkiy gibkiy「in incontinence」

実はMerry go roundがあまりハマらなくて、kazuma氏としっかり向き合えるのだろうかと思った時にこのバンド(もっというと前身のhighfashionparalyze)と出会い、その不安は杞憂となりました。aie氏の奏でる砂漠のようなサウンドと情念の深淵のようなkazuma氏の表現力、絡みつき離れないようなジトジトとした世界が病みつきになります。



33.DIMLIM「MISC.」

結成当初はDIR EN GREYフォロワーとしての側面がだいぶ強かったですが、1stフルアルバムから技巧的なメタルサウンドを多く取り込み、その後のメンバー脱退を得て出されたこの作品ではメタル要素よりもマスロック/エレクトロニカ要素を強く出し革新的な進化を遂げました。その次を強く期待されましたが惜しくも2022年解散。もし彼らがさらに大きく羽ばたいてたらヴィジュアル系の音楽の主流もだいぶ変わったかもしれない。



32.the GazettE「DOGMA」

実はthe GazettEはよくライブ行ったり廃盤音源を集めるくらい好きだったのですが、アルバム単位で好きっていうのがなかなか思い浮かばなかった時にこれ。コンセプトが漆黒とのことで黒々としたラウドロックに統一されて一本の筋がピシッと通ってる作品です。



31.SUGIZO「TRUTH?」

LUNA SEAメンバーのソロの中でも最も音楽的な表現に気を張っていたのはやはりというかこの人ですよね。その中でもこのデビューアルバムは一際異質を放ってると思います。もちろん後々のエレクトロ/ダンスミュージックの路線も好きですが、この頃の神聖な空気が強かった時期がSUGIZOたらしめてる気がします。


30.dummy-xD「[dummy-xD]」

彼らのことはたまたまタワレコの試聴コーナーで見つけた記憶があります。ポストパンク/シューゲイザーの冷たく渇いたギターサウンドにボソボソと目の焦点が不安定なように紡がれる歌声。水の底へ段々と沈んでいくような感覚を覚えます。現在あまり活動の動きが見えないのがとても残念。


29.INORAN「Fragment」

LUNA SEA終幕後に彼が出した作品は空虚感と寂寞とした空気が覆っているような作品でした。「Sprit」の段々と底へ沈んでいくような深さ、「not a serious wound」の心ここに在らずのような空気。そして「I wish I had never met you」の意識が遠いのいてく感覚。現在のオルタナ/グランジ路線も良いのですが、INORANといえばこの空気感と感じる作品。


28.河村隆一「人間失格」

何かとネタにされやすい気がする河村隆一作品の中でも、随一のクオリティを誇る作品だと思います。特に「古の炎」はヴォーカリストとしての表現をまざまざと見せつけられる快曲。ちなみに確かこのアルバムのツアーで河村隆一演じる男性が痴情の絡れで刃物で刺される寸劇が流れてました。やっぱ面白い人ですねこの人。


27.vistlip「THEATER」

個人的に10年代以降のヴィジュアル系音楽の最大公約はvistlipじゃないのかなと思っております。重たくラウドでありながらキツくなりすぎない程度のシンセのエレクトロサウンド、そして聴き馴染みがいいメロディで心の不安定感さと強がりを歌う歌詞。優等生感は強いところが物足りない人もいるというのもわかりますが、ここ近年では入り口に相応しいバンドの一つだと思っております。僕も一時期すごく聴いてた。


26.ギルガメッシュ「MUSIC」

V系とその他の音楽ジャンルとの交流の際によく言われる「ジャンルの壁」。10年代はそこと戦うバンドも出てきたりフェス参加も増えてきた印象がありました。彼らは特にその壁と戦い続けた印象があります。V系外からはイロモノとして見られ、V系内からは冷笑気味に見られていてかなり厳しい環境での戦いを強いられていて見ていて辛いものがありました。そんな彼らが外へ打って出ようとしたきっかけがこのアルバム。戦いの末に彼らは敗れてしまいましたが、その意志を継いでくれる者が出てくれることを願います。


25.X 「BLUE BLOOD」

小さい頃にヴィジュアル系に目覚めたのに何故かXはハマらなかったんですよね。単純に僕にメタルの適性が無かったのか過剰な演出がそこまで好きじゃ無かったのか色々ありそうな気がしますが、なんていうか「音楽」としては確かに素晴らしいけどそれ以外の部分が良くも悪くも強すぎるのかも。それでもこのバンドの凄まじい功績、YOSHIKIの存在感は超えられないものとして存在をしていますし、肌で感じています。


24.hide「PSYENCE」

今なお語り継がれるhideという存在。当人のカリスマ性や死後にさらに強まった存在感というのもあると思いますが、音楽的な面でいうと自分の気になった、好きな音楽を気にせず詰め込み表現するということにここまで長けた人は現在でもいないのではないかと思います。どんなジャンルもポップに仕上げ自己流に昇華する手腕。もし彼が存命ならきっと世界は変わっていたかも。


23.SOPHIA「マテリアル」

フロントマンである松岡充の存在は大きく、その後の彼の遍歴を見るに彼のことをミュージシャンというより俳優で認識してる人は多いと思います。そんなSOPHIAの人気絶頂時にリリースされた作品はイメージとは裏腹に世間や自身を誰よりも俯瞰していました。あまりにも世知辛くしんどいことの方が人生は多いということ、それでも人生は続いていく。空っぽの自分を抱えながら。


22.lynch.「GALLOWS」

先ほどのギルガメッシュの項で「ジャンルの壁」の話がありましたが、彼らと同時期に活動をし、同じように戦い、地位を確立した存在であるlynch.。ラウドロックとヴィジュアル系ならでは耽美さを組み合わせたサウンドの両立は対非V系へのアプローチとしては最適解かもしれません。そんな彼らの魅力がとても詰まったこの一枚は現在のスタンダードの一つかも。


21.amber gris「チャイルド・フォレスト」

10年代以降のヴィジュアル系はメタリックでラウドなサウンドとギラついたシンセに聴き馴染みの良いメロディという力技が多かったイメージですが、そんな中、オルタナ/エモの流れを汲み童話的な世界観を強く打ち出していた彼らのサウンド/スタイルは間違いなく主流からは外れてはいましたが、一際輝いていました。ちなみに僕は初めて行ったワンマンで解散を告げられました。悲しい。


20.deadman「no alternative」

オルタナティブロック/グランジのささくれたったサウンドとヴィジュアル系ならではの暗く陰惨とした世界観の融合。この手のサウンドをメインとするヴィジュアル系は中々いなかったのと、フロントマンである眞呼のカリスマ性により伝説と化していました。特にクローザーである「蟻塚」の息が詰まるような感覚は凄まじい。deadmanを好むV系バンドマンは見かけますがこの音楽性のフォロワーは中々いないのも伝説に拍車をかけてるのかも。


19.陰陽座「臥龍點睛」

個人的にですが、ヴィジュアル系の特徴の一つに「楽曲の世界観を表現するためにメイクや衣装で視覚的にも表現し、世界観を強固なものとする」というのがあると思っていて、その中でいうと陰陽座はまさにヴィジュアル系と言えるでしょう。何よりSHOXXにもよく載ってたし。どの作品も良さがあるのですがこの作品を選んだのは「組曲 義経」の3部作。メタラー達がよく言う慟哭を強く感じました。


18.黒夢「feminism」

黒夢との出会いは当時未就学児だった頃、親にLUNA SEAのCDを買ってもらおうとCD屋に行った時に見た「Miss MOONLIGHT」のジャケ写に惹かれたことでした。これが人生初めてのジャケ買いでした。この作品は黒夢のカタログの中で最も優しい表現がなされていると思いますが、現在の清春に通じる歌手としての源流はここかなと。「至上のゆりかご」は圧巻の一言ですが、実はこのアルバムで一番好きなのは「Happy Birthday」だったりします。


17.cali≠gari「14」

ここまで「変なバンド」という言葉が似合うバンドもいないのではないかと思います。もちろん「実験室」シリーズもとても好きなのですが、やはり彼らは最新が常にかっこいいと思うので、その中でも一番好きなアルバムを選びました。様々なジャンルを雑多に取り込み、cali≠gariという個性でブレンドする姿勢は一貫して変わらず頼もしい姿を見せてくれます。


16.圭「utopia.」

BAROQUE/kannivalismのギタリストによるインストアルバム。従来もっていたポストロック/アンビエント系の作風を中心とした12曲の音による風景描写が素晴らしい。特にオープナー「spirit in heaven.」、終盤の「embrace.」〜「utopia.」のポストクラシカルに近い美しい風景が想起される楽曲は特に素晴らしい。もっと評価されてほしい作品筆頭。



15.MALICE MIZER「merveilles」

語弊を恐れずに言うと、現在までにおけるヴィジュアル系のパブリックイメージの元凶だと思っています。豪華絢爛な衣装やライブパフォーマンス、徹底的に作り込まれた世界観など、「究極のヴィジュアル系」と言われるのも納得します。特にGackt在籍時のこの作品の完成度は他の追随を許さない程のもの。X JAPANとはまた違う領域での誰も到達し得ない高み。



14.9GOATS BLACK OUT「ARCHIVES」

このバンドの魅力が最も詰め込まれた作品はこのベストアルバムだと思っています。北欧ポストロックにも通ずる深淵がある「sink」「Heaven」。マスロック的な素質が垣間見える「missing」。強いアグレッシブさに溢れた楽曲と深くのめり込むような楽曲のバランスが素晴らしい。ジャケットのアートワーク含めて素晴らしい作品です。



13.HYDE「ROENTGEN」

hydeといえば、ソロではラウドロックを前面に打ち出したとてもアグレッシブな楽曲が多い印象があるかもしれませんが、そんな彼がソロで最初に出した作品は、アンビエント的な要素が強くフィーチャーされたものでした。個人的にhydeの声質が一番活きる作風だと思っております。特に「ANGEL'S TALE」のあまりにも儚く触れたら壊れてしまいそうな楽曲は感嘆の一言。彼のカリスマ性の一端に触れる作品。



12.sukekiyo「IMMORTALIS」

DIR EN GREYのフロントマン、京による新バンドのファーストアルバム。ディル本隊はエクストリーム系のメタル要素が強まる中、この頃のデビューしたばかりのsukekiyoは完全に「静」を表すかのような作風でした。「elisabeth addict」「aftermath」「in all weathers」の厳かでありながらとても美しい楽曲に京のクリーンボーカルが合わさった一つの芸術作品。


11.有村竜太朗「デも/demo」

Plastic Treeのフロントマン、有村竜太朗によるソロ作品。バンド本隊が持つオルタナティブロックの要素をさらに純度を上げて、ヴィジュアル系というよりもはやロキノン系の領域ですね。個人的にバンド本隊との差異は歌詞の実存感ではないかと思います。プラではどこか幻想的でここではないどこか感がありますが、ここで描かれるのは現実感が増した孤独と望郷の風景。小林祐介(THE NOVEMBERS)、波多野裕文(People In The Box)といった盟友も参加してるのがさらに拍車をかけてるのかも。



10.La'cryma Christi「Sculpture of Time」

名前は聞いたことあるけど音楽は聴いたことないという人が多い気がするバンド。高い演奏力とオリエンタルな雰囲気にプログレのような楽曲展開が強めでおそらくイメージとはかなり違う印象になると思います。その要素を目一杯楽しみたいなら次々作の「magic theatre」がいいと思いますが、こちらはその要素を組み込みながらも決して聴きづらくなくポップに落とし込んでる化け物作品。「Letters」「偏西風」の展開は何聴いたらこんなの思いつくんでしょうね。



9.baroque「sug life」

ヴィジュアル系の音楽にもやはり30年も歴史があると様々なサブジャンルが生まれるもので、その中でも現在までのスタンダードの一つと化してるのは「オサレ系」と呼ばれるものでしょう。少しチャラけた歌詞にカラフルポップな衣装をアリにしたことで現在のヴィジュアル系の源流の一つとなったイメージです。その中でも元祖と言われた彼らの初のフルレンスはなんとシューゲイザー/ドラムンベース/ドリームポップ/エレクトロニカ/ヒップホップの奇跡的な融合。もはや革命の領域でしたが、流石にこの路線のフォロワーは見かけなかったような。この音楽性をシーンに刻みつけて新たな指針となってたらどうなっていたのだろうとたまに思います。



8.ムック「朽木の灯」

「少年M」という本があります。ムックの軌跡をインディーズからこの4thアルバムまで取り上げたドキュメンタリー本ですが、そこで描かれていたのは地元の同級生の延長線上のメンバー達が音楽の世界に進むにつれ仲がどんどん険悪となり、技術をもはやパワハラの領域で威圧的に要求するリーダーとそれに応えられず自己嫌悪と苦しみに陥るメンバー、いつか状況はきっと良くなると信じるフロントマン、そして人間関係が壊れるまでに発展する出来事など、痛みがひたすら書かれた本でした。その中で、もはやドン底まで落ちていた状況でのこのアルバムはあまりに重い、暗い、鬱々しいとヴィジュアル系どころか邦楽でもなかなか類を見ない、絶望の底のような作品でした。この頃のムックを渇望する声が強いのも納得しますが、バンドが死に瀕している状況だからこそ産み出された作品な気がします。あまりにも痛々しくドス黒い怨念と強い自己嫌悪に包まれた作品。



7.PIERROT「PRIVATE ENEMY」

実は僕がPIERROTをしっかりと聴いたのは解散した直後でした。たまたま図書館で見かけたこの作品を聴いてみたところ、捻くれていながらもとっつきにくさはそれほど無く、マニアックさとポップさを両立させた作品ですぐにハマりました。その勢いは「uv」のPIERROTのコンプリートインタビュー本を買うほど。キリトは自分の理想とする環境を実現するために常に計算しながら活動していたことにとても感銘を覚えた記憶があります。そして誰よりもロックの可能性を信じていたんだと思います。


6.BUCK-TICK「Six/Nine」

とても悩みましたが、全編通して好きな作品となるとこれ。表題と導入の「Loop」というタイトルからしておそらくテーマは輪廻転生だと思うのですが、ここまで息が詰まる輪廻があるのかと思うほどの重厚感。常に「死」という文字が頭をよぎるほどのギトギトとした情念が全編に張り巡らされる。個人的に最も好きなのは「鼓動」。優しくドリーミーに沈んでいくサウンドと生への渇望を歌う歌詞と最後にノイズで全て掻き消されていくような楽曲構成。あまりにも優しい死に様のような曲。もしかしたらリリース時の1995年という空気感もあるのかも。


5.DIR EN GREY「PHALARIS」

敢えて最新作を選びます。何故なら現時点でおそらく最もDIR EN GREYとは?というのに相応しい作品だと思うので。DIR EN GREYのコンセプトとして「痛み」というのがあり、今回も表題が拷問器具ということですが、2022年現在のリアル/SNSでの現状においてあまりにもリンクしすぎている。インタビューで「きっと誰もが考えていること」という旨の発言が京からありましたが、あまりにも苦しい現状に常に選択肢に「死ぬ」という手段がリアル社会にもSNS社会でも増えてきている気配がある現代においてクローザーである「カムイ」の「あと何年ですか?まだ生きるんですか?」という歌詞は、生きる上で誰もが常に隣に暗闇の落とし穴があって、ふとした瞬間にそこへ引き込まれてしまうことを連想しました。それでも彼らはライブで「生きてるのか?」と問いかける。絶望の先にきっと何かがあると。



4.Janne Da Arc「GAIA」

よくDIR EN GREYの影響でヴィジュアル系はヘヴィロック化したという話がありますが、それ以降のサウンドとさらには歌詞面にまで最も強い影響を及ぼしたのは間違いなくJanne Da Arcであり、もっと言うとAcid Black Cherry。つまりyasuだと思います。HR/HMが基盤にあり高い演奏力を誇り、さらに馴染みやすいポップなサウンドはヴィジュアル系のみならず、J-popのフィールドでも大いに通用するものでした。さらにyasuの描く女性目線での報われない恋愛面の歌詞や下ネタ的な歌詞、これがさらに発展して生々しい性的な恋愛を歌うヴィジュアル系が増えた印象があります。ただそれらのフォロワーの追随を許さなかったのは、yasuの世界観はフィクション感がとても強く、どちらかというと想像で書いてるようなオタク的な側面が垣間見えることでしょう。というかyasuの書く歌詞ってドラマ性が強く、恋愛だけじゃなくてファンタジー性も強いので多くの支持を得たり抵抗なく聴ける人が多かったのもそこが要因じゃないかなと。アニソンやゲームミュージックからの影響もあるのでV系が二次元的なオタク音楽みたいになった要因でもあるかもしれない。
どの作品も大好きなのですが、この作品はちょうどヴィジュアル系から離れてた自分を引き戻してくれた作品なのです。彼の不在が現在のシーンの閉塞感に繋がってるのではないかなと思います。早く体調良くして戻ってきておくれ。



3.L'Arc〜en〜Ciel「HEART」

大衆的な音楽とアート的な音楽の両立ということにおいて、L'Arc〜en〜Cielを超えるバンドは国内にはもう出てこないと思います。そう断言してもいいくらい90年代のラルクは完璧すぎました。誰もが一目でかっこいいと思える雰囲気にポップで親しみやすいメロディに耽美的でマニアックさが垣間見える楽曲。彼らが日本を超え世界を股に掛ける活動にまで発展したのも必然でしょう。この作品はそんな人気絶頂時でありながら、初期のUKロック的な作風とJ-popの奇跡的な融合を果たした作品であると思います。そもそも「虹」のような曲をシングルで切って代表曲となるんですよ。もう誰も太刀打ちできない領域でしょう。



2.LUNA SEA「MOTHER」

たまたま兄と観ていたTVで流れた「TRUE BLUE」のMV。それを観た時に衝撃が走り、その後兄が買ってきたシングルを聴き、親にねだって当時出ていたシングルとアルバムを揃え、STYLEツアーで初めてライブ現地参戦。終幕ももちろん現地で見届け、07年、10年の復活ライブももちろん行きました。もはや自分にとって宗教の域のバンドであり人生そのものみたいなバンドです。オープニングを飾る宇宙を連想するが如く壮大な「LOVELESS」。もはやヴィジュアルロックと言えばこれ一曲で充分とまで言える「ROSIER」。ドラマティックな展開でエモーショナルが爆発する「GENESIS OF MIND 〜夢の彼方へ〜」。ポストロックに通ずる深淵を描く「MOTHER」。ヴィジュアル系のみならず多くの国内バンドの礎となった存在でしょう。というか今の国内バンドの影響元を辿るとだいたいどこかしらでLUNA SEAは遭遇する気がします。ちなみに僕が一番好きなアルバムは「EDEN」であり好きな曲は「BELIEVE」なのですが、出会いを考えてこの作品になりました。


1.Plastic Tree「トロイメライ」

LUNA SEAは僕を「音楽を好きにさせてくれた」存在でした。ではPlastic Treeは?と言われると「音楽の趣向を定め、ヴィジュアル系以外の音楽への入り口となり、ルーツとなった洋楽を聴くきっかけであり、音楽を聴く楽しさを教えてくれた」存在で、更には「音楽以外での創作作品の趣向や傾向」まで影響を及ぼした存在でした。そしてそのキッカケは図書館で出会ったこの作品。おそらく名盤と言われる初期の作品群を先に聴いてたらここまでハマらなかったと思います。この作品は僕のヴィジュアル系どころかバンドサウンドを根本を揺るがしました。COALTAR OF THE DEEPERSやNUMBER GIRLの影響を強く感じるオルタナエモ/シューゲイザー的なテクスチャーサウンドと、文学的であり徹底的なまでに「キミ」と「ボク」の世界、「ボクとセカイ」を歌う白昼夢のような有村竜太朗の描く歌詞。この頃は幻想的な雰囲気よりも空想的な青春の一コマのような作風だったのも惹かれた要因でした。現在色々とコンテンツで検証されてる「セカイ系」と言われる作風を強く体現してるバンドの一つでもあるでしょう。この辺りはメンバーも影響を公言してるスピッツやthe pillowsの影響かも。
Plastic Treeが要因となりART-SCHOOLやsyrup16gを好むようになり、ルーツ音楽としてThe CureやNirvana、RideやPortishead、Radioheadを聴き、オルタナやシューゲイザーを好むようになりました。そして様々な音楽を聴くようになって今まで聴いてたヴィジュアル系音楽をさらに深く聴けるようになって今までよりも好きになりました。そういうわけで僕にとってはこの作品が1位です。このバンドがもっといろんな人に波及するのを願います。ちなみにそろそろ結成30周年になりますね。

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