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【SIREN考察】羽生蛇村の呪いの謎を解く鍵『因果の成立』を解説

※ネタバレを多く含みますのでご注意ください。

※この考察は、考察というよりは仮説に仮説を重ねた、もはや妄想です。そのつもりでお読みください。

SIRENとは?

プレイステーション2で販売されたホラーゲーム。2003年11月6日発売。

他人の視界を覗き見る「視界ジャック」という能力を駆使し、屍人と呼ばれる敵から逃れつつ戦うステルスアクション。

2006年2月には続編の『SIREN2』、2008年7月には第3作『SIREN:New Translation』が発売されたほか、2006年にはメディアミックスとして、映画化もされています。

因果の成立

最近私の考察の主流になっている『ループから抜け出すのは因果の成立』という説。

2022年の異界入り時も様々な考察記事や二次創作の小説で取り上げてきましたが、どれも他の説とごちゃ混ぜになっており、説明が冗長になっていると感じたので、ここで改めて解説し直したいと思います。

※この考察記事は、2011年8月11日に『YAHOO! 知恵袋』に投稿された回答に感銘を受けた筆者が自分なりに解説したものです。

羽生蛇村の呪いの本質である『ループ』

『SIREN』の舞台である羽生蛇村の異界に取り込まれた人たちは、本人たちは気がついていないものの、同じ時間を何度も繰り返しています。しかし、それはただ同じ時間の同じ行動を繰り返しているのではなく、繰り返すうちに少しずつ行動が変化しており、やがて、あらかじめ定められた特定の行動をすることで、先の時間へ進めるようになっているのです。

ゲーム上の設定で話をすると、その特定の行動というのは各シナリオに設けられた『終了条件2』です。各登場人物は『終了条件1達成』や『終了条件未達』では先へ進むことはできず、やり直しさせられることになります。『終了条件2達成』でのみ、先へ進むことができるのです。

そして、全ての人物が全ての終了条件2を満たした先にあるのは、『2003年8月5日23時に須田恭也が堕辰子の首を落とす』という結末です。現状、これだけがループから抜け出す条件となっています。

つまり、羽生蛇村の異界に取り込まれた人たちは、『2003年8月5日に恭也が堕辰子の首を落とす』という結末のために、何度も何度もループさせられている、という事になります。

なぜそこまでして堕辰子の首を落とさなければならないのでしょうか? その理由こそが、『因果の成立』ではないかと考えられるのです。

羽生蛇村を支配する『因果律』

『因果律』という言葉があります。これは、『全ての事象には必ず原因があり、原因無しには何も起こりえない』という哲学的考えです。

例えば、とある天才の言葉に『ギョーザを食べたらギョーザクサくなった』というのがあります。これは、典型的な因果律を表している言葉です。この場合は『ギョーザを食べた』が原因で『ギョーザクサくなった』が事象(結果)になります。『ギョーザクサくなった』という事象の前には『ギョーザを食べた』という原因があり、もし『ギョーザを食べた』という原因が無くなれば『ギョーザクサくなった』という事象も無くなる、ということを表しています。

通常、原因は事象(結果)よりも前の時間にあります。先ほどのギョーザの例で言えば、『ギョーザを食べた(原因)』は『ギョーザクサくなった(事象)』よりも前の時間にあります。原因が事象よりも後の時間にあったら、『ギョーザクサくなった』後に『ギョーザを食べた』になり、明らかにおかしなことになってしまいます。


ギョーザを食べた(原因)

ギョーザクサくなった(事象)
(原因は事象よりも前の時間にある)

×
ギョーザクサくなった(事象)

ギョーザを食べた(原因)
(原因が事象よりも後の時間にある)

しかし、この明らかにおかしなことが、羽生蛇村では起こっているのです。

因果律が成り立たない『因果の破れ』

SIRENの主人公である須田恭也が羽生蛇村を訪れるきっかけとなったのは、2003年の7月、インターネット上の掲示板で『××村33人殺し』の都市伝説の書き込みを見て興味を持ったからです。しかし、この『××村33人殺し』の都市伝説が生まれたきっかけは、堕辰子を倒した恭也が異界で屍人たちを虐殺し、その行為を、時空のねじれを通じて誰かが目撃したから、とされています。恭也が村を訪れるきっかけとなった都市伝説話は、実は恭也自身が起こしたものだった、というオチですね。

この場合、『恭也が村を訪れる』という事象には、『恭也が屍人を虐殺し××村33人殺しの都市伝説が生まれる』という原因があるわけですが、時系列的には『恭也が村を訪れる』ことで『恭也が屍人を虐殺し××村33人殺しの都市伝説が生まれる』となっており、原因が事象よりも後の時間にあることになります。


『××村33人殺し』の都市伝説の書き込みを見て
興味を持った恭也が村を訪れる(事象)

恭也が屍人を虐殺し
××村33人殺しの都市伝説が生まれる(原因)

別の例もあります。2003年8月4日早朝、壊されたはずの御神体(堕辰子の首)が八尾比沙子の元に届いたことで、失敗したはずの神迎えの儀式が再開されますが、このとき届いた御神体は8月5日の23時に恭也が落とした堕辰子の首です。『御神体が届く』という事象には『恭也が堕辰子の首を落とす』という原因があるのですが、時系列的には『御神体が届く』ことで堕辰子が復活し『恭也が堕辰子の首を落とす』となっており、これも、原因が事象よりも後の時間にあることになります。

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御神体(堕辰子の首)が届き、堕辰子が復活する(事象)

恭也が堕辰子の首を落とす(原因)

このように、通常『原因があって事象(結果)がある』という因果律が逆転し『事象があって原因がある』というおかしな現象が、羽生蛇村では起こっているのです。

では、すでに事象が発生しているにもかかわらず、その先の時間にある原因が起こらなかった場合、どうなるのでしょう?

恭也の例で言えば、すでに恭也が村を訪れているにもかかわらず、その原因である恭也の屍人虐殺が行われなければ××村33人殺しの都市伝説が生まれないため、恭也が村を訪れるきっかけが無くなってしまいます。因果が成立しなくなるのです。

比沙子の例も同じです。すでに首が届いているにもかかわらず、恭也が首を落とさなければ届けるべき首が無くなってしまうため、これも因果が成立しなくなるのです。

物理学では、これを『因果の破れ』というそうです。『タイムパラドックス』といえば判りやすいかもしれません。

羽生蛇村がループする理由

以上のように、羽生蛇村では『事象があって原因がある』というおかしな現象が起こっており、少しでも行動を誤ると原因が発生せず、因果が成立しなくなってしまいます。因果が成立しないとどうなるのかまでは判りませんが、致命的な矛盾が発生してしまうため、最悪の場合世界が破綻してしまうのかもしれません。

羽生蛇村に呪いをかけた『神よりも上位の者』は、この致命的な矛盾を発生させないために、恭也たちに何度もやり直しをさせていると考えることができるのです。

前述のとおり、全ての終了条件2を満たした先にあるのは『恭也が堕辰子の首を落とす』という結末です。恭也が首を落とすことで比沙子は首を届けることができますし、首を落とした恭也が屍人を虐殺することで××村33人殺しの都市伝説が生まれます。恭也が堕辰子の首を落とすことで、初めて因果が成立するのです。逆に、恭也が堕辰子の首を落とさないと因果が成立しません。なので、恭也が堕辰子の首を落とせなくなる事態になった場合(恭也が死ぬ、美耶子と出会わない・血を分けあわない、宇理炎・焔薙などのアイテムを入手できない、など)、時間が戻ってやり直しとなるのです。

これこそが、羽生蛇村の呪いの正体ではないでしょうか?

関連リンク


『因果の成立』の観点から、神よりも上位の者が羽生蛇村に呪いをかけた最大の理由を考察しています。


『因果の成立』に関する考察記事をマガジンにまとめています。


なぜ羽生蛇村では『事象があって原因がある』という因果の破れが起こるのでしょうか? その考察を小説化したものです。

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