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「ペチュニアの咲く丘に」#3 出会い

 

咲良はこの日、友人が務めるジャスバーに足を運んでいた。


 何人かの歌い手を集めた小規模なライブだった。
 そこで、トップバッターで弾き語りをしていたのが、「真司」との出会いだった。

 彼の歌詞は粗いのだけれども、人間の奥底に秘めた感情を恥ずることなく素直な歌詞にしていた。
 そして、ジャズバーの店内に溶け込むアコースティックギターの奥深いメロディ。
 真司の歌を聴いて、咲良は目の奥がじんわりとした。

 真司が歌い終わると咲良は彼のことを無意識に目で追っていた。

 ライブが終わり、受付対応していた、友人とお茶をする約束をしていた咲良は作業が終わるのを待っていた。
 化粧室でリップを塗り直し、扉を開いた瞬間、そこには真司がいた。
 驚いたが、もう会うことはないだろう真司に率直に歌の感想を伝えた。

「あ、あの、歌詞がとても印象的でした」

 それが真司との初めて交わした会話だった。

 真司は目を丸くして驚いていた。
 それから、彼が歌い始めの自己紹介で話していた落語が好きだと話していたことと、落語に興味のあった咲良は話が弾んだ。
 自然な流れで連絡先を交換してその日は別れた。

「よかったら落語を見に寄席に行きませんか?」

 数日後真司から連絡がきた。
 落語の趣味が合う友達がいなかった咲良は、嬉しくなり、すぐに返事を返した。