見出し画像

コミケで出会った女の話

コミケで色んな人と出会いました。

そりゃ出会うでしょ。あんだけ人いるんだから!と包丁持ってキレるのはやめてください。

出会ったといっても、ロマンチックな要素、0。限りなく、0。ドラマチックな展開なんて絶対に生まれない。新海誠でも無理。新海誠が監督でも無理。誠でも無理なもんは無理。


「お話しませんか?」


コミケ2日目、灼熱の暑さの中並んでいると、隣にいた女が話しかけてきた。

僕が持つ特殊能力、「初対面の女性と話すと今までの恋愛経験が消滅し、限りなく童貞ムーヴになる」がいつも通り発動するかと思いきや、暑さのせいか発動せず。


「え、いっすよ」


瞬時にここまでキモい返答できるのはもはや才能

この妙にスカした感じ、キモすぎる。おそらくネテロ会長でもたどり着けない領域。今考えるとこの「え、いっすよ」に恋人ができない全ての要素が詰まっているような気がする。

そもそもこのクソ暑い時にお話しましょうてなんだよテメェ!どうせとんでもない変な女なんだろ!顔見せやがれ!

僕は、顔を見ていることがバレないようにできるだけ顔を動かさず眼球をギリギリまで右にめり込ませた。

隣にいたのは、ギャルだった。

僕は、ギャルに話しかけられた。金髪だった。化粧が濃ゆかった。ミニ扇風機を入念に顔に向けていた。小さかった。150cmくらい?小さいギャル。小ギャルが俺に話しかけてきた。

ここで新たな特殊能力「突然ギャルに話しかけられると死ぬ」を会得

ギャル「何目的でコミケきたんですか?」

やべー!このギャルいきなり始めやがった。心の準備はまだできてねェ。ギャルの綴りって『GAL』でいいんだっけ?の段階なんだよこっちは。それでも返事をしなくてはならない。なぜならこのギャルはスタートの合図もなしに勝手に会話を始めたのだ。GALは僕の返事を待ってる。

ぼく「あー友達が店出すんで^^」

何...?店出すって何?

脱サラした友達がラーメン屋オープンさせたみたいなノリで俺はコミケにきたらしい。ギャル童貞とは思えない高度でトリッキーな返答をかました。

ギャル「すごいですね!私にも何目的でコミケきたのか聞いてくれます?」


何...コイツ

神が一寸の狂いもなく完璧に作り上げた生物?

人を凌駕した存在、それがギャルってこと?


ぼく「(笑)何目的でコミケきたんですか?」


あえてハードルを上げさせてください。嘘だと思われてもいい。こんな女が存在するとは常識的に考えてありえない。こんな理由でコミケにくる女が存在するはずがない。


私、風俗で働いてるんですけど、オタク系の客が苦手で、しかもすぐ顔に出ちゃうタイプなんです。でもそれだとお客さん取れないし...だからコミケに行ってオタクに慣れようと思ってきたんです!


なんて....

健気な子なんだろうか...

目に宿る「好奇心」と「決意」。コミケ列を焼き尽くす太陽よりもギラギラした眼差しで僕を見るギャル。

この子は本気なんだ...

そっか...

でも...

謝ろっか

まずオタクに謝ろっか

ね?

そして俺にも謝れ

ぼく「で、どう?いっぱいオタクいるけど」

聞けない。俺は対象なのかなんて聞けない。俺はギャルが苦手とするオタクに分類されてるのかなんて聞けるわけがない。もし聞いたとして「はい!話してるだけで蕁麻疹が出ます!」なんて言われてみろ...一生立ち直れない。ショックで一生結婚もできないだろう。

人生の岐路が目の前にある。

このギャルは俺の運命を握っている。捻り潰すことなんて容易いだろ。150cmほどの金髪ギャルが大きく見える。女型の巨人...?

結局僕は聞くことはできなかった。会場に入るまで、「風呂に入っていない身体を舐めて欲しいからずっと風呂にも入らずシャワーも拒んだオタクの話」、「乳首の感覚が無くなるぐらい1時間乳首を責め続けたオタクの話」などを聞きながら時間を潰した。

ギャル、それは異例だよ...

ギャル、君は何も悪くない

オタクはみんながみんなそんなんじゃないよと説得しつつ、インスタのIDを教えてもらい、お店の名刺をしっかり受け取り、

「今度お店きてよ!」

「行かねーよ」

みたいな会話を最後に、ギャルはオタクの渦の中に消えていった

サポートしてくれると記事の更新頻度と、記事のクオリティが5億倍上がります