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うろ覚えの記憶で漫画を探すだけの日


漫画やら小説やらで、何の作品のシーンなのかわからない、タイトルも作者も前後の文脈も全て忘れたが記憶に残り続けているシーンというのがよくある。
思い出せないからこそ気になり続け、脳もいろいろ勝手に補完するので、もはや本当はどんな話だったのかなんてわからない。その記憶を頼りに調べても見つかるわけもない。

私のうろ覚え

私には10年以上頭の片隅に引っかかっているうろ覚えシーンがあった。
まだおぼこかった頃、ブックオフでぱらぱらっとさわりだけを読んだかなりバイオレンスでアダルトな漫画である。なんだかダークな雰囲気に惹かれて手に取ったはいいものの、内容が過激すぎてすぐに棚に戻してしまったのだ。

その記憶を箇条書きにすると
・電撃コミックスだった気がする
・主人公は女の子で信心深いシスター。平和主義だが何かに巻き込まれて酷い目に合う
・主人公と主従のような黒髪クールキャラの女の子がいて、主人公の命令で戦う。
・全体的に百合でエロくてグロい

そしてここからが重要なのだが、
・最初の敵が、自分の男性器に「小熊」と名付けて可愛がっている美少年
・女の子と見紛うような見た目でフェティッシュな格好をしており、男性器の先っぽに鈴を付けている
・主人公の命令により覚醒した黒髪クール美少女にメッタメタにされ命乞いをしながら惨めに絶命

私はこの「小熊くん(仮)」が忘れられなかった。
まずその振り切った変態性・異常性とインパクトがありつつも確実にかわいい見た目。登場した時には「これは後々味方になるパターンでは?」と思わせられてしまうほどかわいいのに、ページを捲るごとに表情のおぞましさが増すギャップ。
そして彼自身も辛い過去があることを匂わせつつも、雑魚キャラとしてあっという間にやっつけられてしまう潔さと不憫さ。
好きな悪役ランキングがあるとしたら10位以内には入るだろう。
とはいえ、うろ覚えである。そしてなかなか調べても出てこない。

出てくるわけない


私の頭の中の小熊くん(仮)は脳内AIが補完に補完を重ね、もはや彼自身ではない。このままうろ覚え小熊くん(仮)を愛でていても良い気はしたが、人生は短い。
見つけ出そう、小熊くん(仮)を。そして漫画を買おう。

小熊くん(仮)をさがせ

実は私の頭の中にはずっとある作品名がチラついていた。


「神無月の巫女」である。有名な百合作品だ。
アニメ化されていて、えっそんな……そんなことまで?!みたいな描写がインターネットで話題になっていたはずだ。
それのスピンオフか何かだった気がするのだ。しかし「神無月の巫女 スピンオフ」で検索して出てきた「姫神の巫女」は冒頭からして違う。
だいたい私の記憶の中にある「シスター」って、「巫女」と合わなくない?
あと、神無月の巫女はエロティックな描写はあれど女の子2人の閉じた世界って感じのイメージを抱いていたため、小熊くん(仮)みたいなド変態を清廉潔白な百合ワールドに投入するか?とも思った。
そういう疑問のもとエログロバトルものに焦点を当てて「東京赤ずきん」なども調べたが違った。
とりあえず埒があかないので、マンガペディアというすごいサイトを利用し「シスター」が出てくる漫画を洗い出す。 

いた!


すると、「神無月の巫女」に「シスター・ミヤコ」なる人物が出てくることが判明。
えっじゃあやっぱり関係あるんじゃね?
ヤケクソで「神無月の巫女 似てる作品」で検索すると、「類似アニメ検索」というサイトが引っかかった。世の中何でもあってありがたい。
そしてこのサイトのおかげで特定に至った。
「神無月の巫女」と同じ介錯先生の「絶対少女聖域アムネシアン」である。
まさかスピンオフ3個目があるとは思わなかったのと、タイトルも「巫女」から離れたものであることが盲点だった。

実際に読んでみる

そうそうこういう装丁だった!
Kindleで全巻を読んだ結果、私のうろ覚えの記憶との差異は以下のとおり。

・電撃コミックスだった気がする→角川コミックス・エース
・主人公は女の子で信心深いシスター。平和主義だが何かに巻き込まれて酷い目に合う→来栖守姫子。正しくはシスター見習い
・主人公と主従のような黒髪クールキャラの女の子がいて、主人公の命令で戦う。→愛宮千歌音。主従じゃないけど姫子にとんでもない執着があるから彼女の言うことしかきかない
・全体的に百合でエロくてグロい→正解正解大正解

次に小熊くん(仮)に関して。まず彼の名前は美鈴くんということが判明したため、これ以降は美鈴くんと呼びます。

・最初の敵が、自分の男性器に「小熊」と名付けて可愛がっている美少年→2番目の敵。他は合ってる
・女の子と見紛うような見た目でフェティッシュな格好をしており、男性器の先っぽに鈴を付けている→メイド服を着ていて眼鏡でボブ。記憶の中よりかわいい
・主人公の命令により覚醒した黒髪クール美少女にメッタメタにされ命乞いをしながら惨めに絶命→味方に口封じのために殺された。死にざまが可哀想だったのは合ってる

美鈴くんについて

当たり前ながら新情報が盛りだくさんだった。

・二つ名が「紫の閃光電撃(バービュア・ゼウス・ゲイザー)」
・技名が「雷斬の刃(ライザンバー)」「皇帝の電光(ヴァスティール)」
鈴音ちゃんという姉がいる
「パパ」という人物に傾倒しており、「パパ」を誘惑する存在である(と思い込んでいる)女性を目の敵にしている認知歪みマン
・「パパ」に虐待されていたと思しき発言があり、壮絶な過去持ちだと思われる
・死後も遺体を弄られてゾンビ状態にされた挙句、人間爆弾として敵地に送り込まれるという隙の無い不憫さ
・終盤に美鈴くん(と鈴音?)の過去シーンが1ページだけあって嬉しい

感想

美鈴くんとの再会のために作品を探してきたが、姫子と千歌音の行く末も見届けることができて嬉良かった。あんなにドロドロしてるのにラストが愛することへの希望にあふれており、キングの長編小説を読み終わった時に似た謎の爽快感があった。伊達だけは許せないけど。
正直、全体的に暴力や性加害描写が山盛り&倫理がほぼほぼ失われているため、万人にお勧めできる話ではない。
そんなヤバそうな空気を感じ取ったからこそ、えげつないホラー漫画ばっかり読んでいた昔の自分は本作を手に取ったのだろうし、美鈴くんをずっと覚えていることになったんだと思う。
10年ぶりに見た美鈴くんはしっかりと序盤にやられる敵の役目を全うしており立派だった。ぼんやりした記憶の中よりずっとかわいくおかしくキショかった。
これからもひっそり、彼を好きな悪役ランキングにランクインさせていきたい。介錯先生ありがとうございました。

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