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ポンド札で商売を

Nottinghill 界隈のフラットをhome away from homeとして、早4年。この辺りは静かで、お店も豊富で、徒歩数分のPortobello Marketに行けば、新鮮な野菜も安価に購入できる。土日しか出店しないチーズ屋さんやパン屋さん、蜂蜜屋さんを目指して、週末はかなりの人出になるが、一本入ってしまえば、喧騒はあっという間に遠ざかる。

馴染みの肉屋と八百屋と酒屋も出来た。わたしのことを覚えてはいないだろうが、彼らがいるだけで、生活の8割の幸せが保証される。ありがたやありがたや。

到着翌日、早速食材を調達しにマーケットに向かった。いつものおばちゃんとお兄ちゃんは、今年もいつもの場所で、屋台の八百屋を広げていた。あれこれ選び、お支払いに10ポンド紙幣を渡したら、さらりと紙幣が戻された。

「これは古いお札だから、受け取れないんだ。」

毎年くるから、と昨年の余りを握りしめ、数日はこれで凌ごうと思っていた全財産(40ポンド)が、到着したら、ただの紙屑になっている!

「銀行で両替してくれるから、大丈夫だよ。」との助言に従い、その場はルームメイトに払って貰って、そばの銀行に向かった。

「旧紙幣を変えて頂きたいんですけど。」

「イギリスに口座はありますか?」

「いえ、ありません。」

「でしたら、手数料が10%かかります。」

ええええええええええええ!!!!!

昨年までは普通に使えていた紙幣が、使えなくなっているどころか、それを新紙幣に両替するために10%取るですと?!資産価値がいきなり1割減?!そんなことがありえるのか。

それはどこの銀行でもそうなのか、と重ねて聞くと、「バンクオブイングランドならば、無料で両替をしてくれる」とのこと。支店は、まだない。おそらくきっと、ずっと無い。

来週半ばに仕事でBank駅付近まで行くので、とりあえず両替は諦めた。

それにしても旧紙幣の両替手数料だけで10%の売り上げが立つなんて、なんつーアコギ(?)な商売だ。憤懣遣る方無い思いで調べてみると、昨年秋に新紙幣の導入が始まったらしい。

それから半年間の移行期間を経て、完全移行が完了したのが数ヶ月前。

偽造がしにくく、目の不自由な人のための点字も打ち込まれており、間違ってお洗濯しても、ただのボロ紙と化さない優れた耐久性をもつという。

ポリマーのバンドが入っているので知っていればすぐ判別できるのだが、知らないものは、分からない。

屋台でのお買い物以外ではほぼなんでもカードが使えるので、不自由は無いのだが、キャッシュが全く無いのも、ちょっぴり心細い。いつもの指輪をつけ忘れたことを外出先で気づいた時の気分に似ている。

この心細さもすぐに慣れて、来週には「今時、キャッシュレスが当たり前っしょ」なんて宣っているかもしれないけれど。

以下、わたしの全財産の旧紙幣とルームメイトから借用した新紙幣。サイズも変わってはいるけれど、知らなければ分から無い… よねえ…


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