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フェムテックがもっと成長するには?

産婦人科医としては大注目のテーマなので、先日あるフェムテック業界リーダー&GSB学生でフェムテックについて語るイベントを開催しました。とても面白い学びがたくさんあったので、議論した内容+リサーチをいくつか加えてシェアしたいと思います。

フェムテックが注目されるまで
Femtechは、有名な月経管理アプリClueのファウンダーIda Tinによって2016年に作られた単語です。数年前まで、femtech = female foundersが立ち上げたスタートアップと誤解している人が多かったというような状況から、徐々に広く知られるようになりました。

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Pulsar "The unmet needs of Women’s health: is ‘Femtech’ the answer?"より

SNSでの出現頻度や検索数も増えていますし、数多くのスタートアップも出現しています。

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Fermata Global Femtech Market Map

というところは皆さんご存知だと思うのでこれくらいで割愛です。少しずつ盛り上がっている一方、まだまだ課題はたくさんあるため、現状の課題+今後できることについて議論したことを以下でご紹介です📝


①女性ファウンダーが資金調達するハードル

Tech Crunch "Female founders are making a buzzing, venture-backed comeback"より


上記グラフのように女性ファウンダーによる資金調達額&件数は増加傾向にあるものの、まだ全VC投資額のうち数%しか届いておらず、いまだに女性ファウンダーにとって資金調達は男性と比較して難しい状況が続いています。実際今回お話しした方は、以前ご自身が資金調達したときは女性だからと真剣に話を聞いてもらえなかったので、白衣を着てピッチするようにしたそうです。白衣を着るだけで真剣に話を聞いてもらえるようになったという話は、私自身も臨床現場ではどんなに暑くても邪魔でも信頼してもらえるように白衣を着て仕事をしていたことを思い出しました。

そして、フェムテックのファウンダーは女性だけではないですがやはり女性が多いです。彼女たち、そして女性に限らず全フェムテックファウンダーの声が届き公平に資金調達ができる環境を整えることが重要です。

②投資家のジェンダーギャップとマインドセット

今回の会話で知ったのですが、十分な資金があるとみなされている女性適格投資家*のうち実際エンジェル投資をしたことがあるのはなんと1%未満とのことです(会話で出てきたのでソース不明ですが)。つまり!資金があるにも関わらず投資をする人はごくわずかということですね。
*適格投資家=accredited investorとは十分な資金があり、かつ十分な金融リテラシーを備えているとみなされる基準を満たし米国の投資家のことです。詳しい基準はこちらなど記事をご参照ください

実際調べてみると、エンジェル投資家のうち女性なのは22.1%、若い世代では30%に上昇しているそうです。

GeekWire "Who are US angel investors? Study shows 78% male, 87% white, 17% in California" より

ベンチャーキャピタリストについても、女性は18%のみです。人種、年齢、学歴等にも偏りがある点にも注目ですね。

statista "Who Are Venture Capitalist?"より


女性の投資家は割合が少ない&投資する経済力があったとしても実際投資する人が少ないという現状は、女性のファウンダーが投資されにくい、そして男女の投資機会の格差という2つの観点において大きな課題です。

女性のファウンダーが活躍できるようになるには、女性が投資家サイドにも増えるようにしなければいけません。フェムテックのスタートアップは女性投資家に共感してもらいやすいというメリットもあるので、まずは女性の投資家が増えることが一歩でしょう。また、投資家についても、自分たちにが身近に感じられる課題を解決することをきっかけに投資を始められるのは良いことだ、という話でも盛り上がりました。

女性の投資家・起業家を増やしていくことと同時に、男性投資家・起業家のallyshipも重要です。男性も"女性ヘルスケアのことはよくわからない”と言わず、たくさんの女性の健康に役立てる&市場規模としても$1T+と大きいフェムテックに目を向けていけたら良いですね。

また、まだ大きなリターンが出るようなexitが少ないという点もフェムテックへの投資のハードルが上がっている要因です。大企業によるフェムテックスタートアップの買収やIPOなどexitの道筋の例が増えていくことで、積極的に投資されるようになるのではないかと思います。

余談ですが、投資家のジェンダーギャップについて面白い記事を見つけたのでご興味ある方はぜひ→Forbes "Investing In VC Funds Enables Women To Wield Power, Make An Impact, And ROI"

③行政側の支援不足

まだまだ成長途中のフェムテック領域では、VCが初期のリサーチやプロダクト開発の段階で出資することへのハードルが高いです。このような段階ではエビデンス作りのために行政の支援が大変重要になるのですが、例えばNIHには27個の研究所がある中で女性ヘルスケアを支援するものはひとつしかありません。

もっともっと、民間の投資のハードルが下がるよう行政としても女性ヘルスケアに関する研究を支援していく体制が必要でしょう。

④フェムテックは月経・妊娠・出産支援に偏っている

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Pulsar "The unmet needs of Women’s health: is ‘Femtech’ the answer?" より

女性の身体に関する話題はタブーのイメージも強く、これまで成功しているフェムテックは月経管理や妊娠・出産支援が多いというのは事実です。上記リサーチでもこれがトップであることがわかります。でも、女性の健康の課題は他にもたくさんあり、これからはそれらの領域に取り組むことがフェムテック全体の成長には不可欠です。今回話題になった領域としては、

・メンタルヘルス/産後うつ
・尿失禁・便失禁
・骨粗しょう症
・月経周期に合わせた栄養管理
・女性の月経周期、年齢、骨密度などに合わせた運動支援
・産婦人科診察器具のイノベーション(産婦人科医としては特にこの点は思うところがたくさんあります・・・!)

このほかにも数多くの取り組める領域があるので、もっと認知度が上がれば良いなと思います。


以上、みんなでフェムテックについて語り大盛り上がりのイベントでした🎉クラスメイトと更にフェムテックについてリサーチする予定なので、また更新できたらと思います。

参考になりましたらorご意見ありましたら、ぜひコメント頂けると嬉しいです!😊



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