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【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

 外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。
 想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経験するはずですが、当初の想定以上の患者さんの病状悪化や、患者本人・ご家族からの結果が良くないことに対する叱責は精神的には非常に堪えます。

 もちろん治療前には様々なリスクを想定し、患者さんやご家族へその説明も行い、十分理解をしてもらってから治療に入るわけですが、それでも治療後の合併症はある一定の割合で起こりますし、予想外の経過となることはあり得えます。

 その現状から目をそらしたり、責任を周りに押しつけたりすることは絶対にしてはいけないと思いつつも、自分の行った治療の結果で起きた状況を受け入れるつらさは、一般の方々にはなかなかご理解いただけないかもしれません(もちろん一番つらいのは患者さんであることは明らかですが)。
 
 一方でその苦しい状況をなんとか乗り切るために同僚・上司・部下・周囲スタッフに助けてもらえる職場環境があれば、苦しさは軽減し、少しだけ心の負担は楽になります。普段からの信頼関係をどれだけ培っているか、理解を得られているかが鍵になるのだと思います。

 どんな外科医でもつらい経験は一度や二度ではないと思います。それでも外科医の多くがこの仕事を続けている理由は、つらい経験を忘れるくらい治療後の元気な患者さんの姿や感謝の言葉によって、この仕事の素晴らしさを感じることが出来るからだと思っています。

 これから外科医を目指す若い人たちに、厳しさやつらさだけでなく、外科医という仕事の素晴らしさを感じていただきたいと思うのは、私自身が歳を取ったから、でしょうかね…


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