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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病…

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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病院で働く意義・病院運営・人事労務について 現場・管理者 両方の立場でわかりやすく説明します。

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  • 「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス

    「病院で働く」こととはどういうことか。 外科医として25年以上を経過し、これから職業人として残された時間にできることはなんだろう、とふと考えました。 そこで、臨床の現場で実際に働いている人間が、どんなことを感じ、なにに楽しさや苦悩を感じ、どのように患者さんとコミュニケーションをとり、病院という組織で周囲と関係を気付きながら、どんなふうに働いているのかを、飾らない言葉で世間に発してみようと思い立ちました。 病院に勤務している医療関係者やこれから医療機関で働くことを目指して勉強している学生さん、病院受診をされる患者様、ただただ興味本位の方まで、「医者って(外科医って)こんなこと考えているんだ」「病院の仕事ってこんな感じか~」「うちの会社とはちがうなあ」なんて思っていただけるような内容にしていければと考えています。 週1回くらいのペースで更新していきます。 是非ご覧いただければ幸いです。

最近の記事

【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

 だれでもつらい時、しんどい時はあります。イライラもするし、むかつきます。でも自分の心の中はどうであれ、それを隠して無理矢理にでも笑顔でいる方が結果的に周りも自分自身も気分が良くなることに気がつきました。  これまで私も「先生の元気そうな笑顔につらいときに救われました」と言われたこともあります(自分としては、結構しんどかった時期もありましたけれど)。  病院を受診される患者さんは、こちらの気分や精神状態なんて全く関係なく診察を受けられているわけで、不機嫌モード・疲労感

    • 【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

       外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。  想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経験するはずですが、当初の想定以上の患者さんの病状悪化や、患者本人・ご家族からの結果が良くないことに対する叱責は精神的には非常に堪えます。  もちろん治療前には様々なリスクを想定し、患者さんやご家族へその説明も行い、十分理解をしてもらってから治療に入るわけですが、それでも治療後の合併症はある一定の割合で起こりますし、予

      • 医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

         医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくことを指し、研究・学位取得などのアカデミックキャリアのことではありません(こちらの話は別の機会にしたいと思います)。  まず医師になって5年間は通常研修医・専攻医として臨床医としての研鑽を積むことになります。ここで大切なことは、とにかくたくさんの症例を経験し、臨床感覚を鋭くしていくこと。特に初期臨床研修医として勤務が

        • 【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

          民間病院にありがちであるが、病床稼働率が下がってくると経営陣がソワソワし始める。経営サイドから現場に向け、「入院患者を増やして」だの、「救急車断るな」などと指令が出ることがある。 現場の言い分としては、ベッド状況に関わらず緊急の患者は受け入れているし、そもそも病床稼働率に合わせて入院の適応基準は変わらないということ。 ベッド稼働率が病院経営に大きなインパクトを与えることは理解するが、空床を目立たなくするため、経過良好な早期退院希望患者にも退院を延期させる、など本末転倒の

        【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

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        • 「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス
          10本

        記事

          「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

          医師は病院内外で、様々な方法・角度から評価を受けます。 患者さんやその家族はもちろん、ともに働くコメディカルスタッフ、雇用主である経営者、同僚・上司(指導医)・部下である医師などからです。 その評価はかならずしも一致するわけではなく、 「あの先生は患者さんの受けはいいのに、看護師には嫌われている」とか、「あの先生は経営者からは高評価なのに、現場スタッフには不人気」などさまざまな形で評価されています。 そもそも人が人を評価すること自体どんな業界でも難しいことですし、その評

          「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

          「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

          病院内で働いていると、どうしても理解できない考えや行動をする人がいます。 なぜそこでそんなことを言う? なぜそういう振る舞いをする?  などなど。 多くはその人の行動が自分の予想・期待通りではないことに起因していると思いますが、やはり理解不能は人との関係はストレスですよね。 その人の置かれた立場や社会的背景やこれまでの言動から、 「まあそういう人なんだろうなあ」 という想像がつけばいいのですが 時には想像を超える理不尽な行動で周囲に悪影響を及ぼす人もいます。

          「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

          なくなっていい病院なんてない。

          病院経営を取り巻く環境はは依然厳しい状況が続いています。各種調査では全国の病院の7割は赤字経営と言われており、地方・公立病院ではその傾向が顕著です。 日本の病院の約7割、診療所では8割が民間(個人・医療法人)であり、経営悪化は即事業停止、すなわち閉院につながります。2021年の医療機関の休廃業・解散・倒産件数は600件に上り、2016年以降も増え続けています(帝国データバンクより)。 医療機関が診療を休止する理由はさまざまですが、少子高齢化や地方での過疎化による診療圏の人口減

          なくなっていい病院なんてない。

          「病院で働くということ」・・・Vol.4:第一印象は大事

          今でも患者さんとの初めての対面は非常に緊張しますし、治療を受けられる患者さんはそれ以上だと思います。 「初めまして。△△科の○○です。よろしくお願いします。」と名札を相手に見えるようにして挨拶をしています。なるべく柔らかい印象で、威圧的にならないように・・・。 以前聞いた話では、宿泊するホテルの印象は到着時のフロントの対応で8-9割は決まる、とのこと。これから治療を受けようかどうしようか、不安を抱えて病院を受診される患者さんやご家族に対して、最初の医師の印象はこれからの信頼関

          「病院で働くということ」・・・Vol.4:第一印象は大事

          病院の理念と方向性

           病院はその規模・設立母体にかかわらずにかかわらず、地域の公共財だと私自身は考えています。質の高い診療を効率よく行い、病院の収益を上げていくことは病院運営において必要なことではありますが、もっとも大切なことはその地域でどのような医療需要があり、病院としてどのようにそれに応えていくのか、を常に考えていくことです。  周囲の医療機関の診療体制を十分に検討した上で、自院の強みを生かして差別化を図り、別の場面では他の医療機関と協調性をもって診療を行っていくことを考えること、そして病

          病院の理念と方向性

          「病院で働くということ」・・・Vol.3:医師の当直業務

           医者になってかれこれ25年以上、月2回以上の当直業務がずっとありました。30歳代の最も多いときで月8-9回、アラフィフと言われるようになった現在でも月に3-4回は当直として病院での業務にあたっています。  医療者以外の方には「病院に仕事で泊まるって大変ですね。」「全然眠れないんですか?」とよく言われますが、もはやルーチンワーク化していて大変かどうかは自分ではよく分かりません。当直によってはほぼ一睡も出来ないこともあるし、4-5時間まとめて眠れることもあります。ただ眠れる

          「病院で働くということ」・・・Vol.3:医師の当直業務

          限られた医療資源の中で

           病院は医療を提供する場ではありますが、すべての医療機関が大規模総合病院のような検査・診療ができるわけではありません。病床数や診療科のみならず設置された地域特性や設立母体によって必要とされる医療や質は変わってきます。  必要なことはその病院が地域で求められていることを正確に把握し、効率的に限られたマンパワーと設備・施設を活用して患者さんにとってその時点で最適な医療を提供することです。その最適な医療は地域によって少しずつ異なっており、また今後の病院を取り巻く状況により変化し

          限られた医療資源の中で

          「病院で働く」ということ・・・ Vol.2:医師の働き方改革

           2024年4月から医師の働き方改革が制度として始まります。これまでも多くの報道などでその問題点が指摘されていますが、そこには立場の違いにより、また伝え方の切り口によりさまざまな意見があり、本質が見えにくい状況でもあります。  今回の働き方改革の本当の目的は、医師の過重労働の抑制により、医師の健康を確保し、医師の疲労蓄積による医療事故を減らすことだと思っています。そのためには時間外労働時間の上限を設定し、強制的に休みを取らせることが第一歩になりますが、その第一歩から地域医

          「病院で働く」ということ・・・ Vol.2:医師の働き方改革

          「病院で働く」ということ・・・Vol.1:病院で働くということ 

          病院で働くということは、どういうことでしょうか。 それは、医師・看護師・検査技師・セラピスト(PT・OT・ST)・管理栄養士・事務職員など、さまざまな職種で構成された多くのスタッフとともに、組織のなかで患者様の診療行為を行うという同じ目的を持って働くということです。 多職種が働く病院という組織は、事業の形態としては「業務集約型」事業といえます。 世の中の多くの企業がコロナ禍でリモートワークを取り入れることになりましたが、医療機関は実際に患者様と接し、医療従事者が密接に関

          「病院で働く」ということ・・・Vol.1:病院で働くということ 

          本ブログを始めるにあたって

          本ブログは、地方で経営再建中の小規模病院に、ひょんなことから元消化器外科医が病院長で赴任し、悪戦苦闘する様子をつらつらと書いていくものです。 投稿者は、開業経験はおろか医師家系出身でもなく、赴任先の病院経営者とは血縁関係はありません。大小様々な規模の病院で25年以上消化器外科医として培った臨床経験と、院内各部署とぶつかりながら鍛えられた調整能力が、病院経営再建の場で管理職として働く際にどこまで通じるのか。新米院長の苦労話を多少脚色しながら発信していきます。 病院で働くというこ

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